(2002/05/20 プロパン・ブタンニュース)
冨士鉱油社長 園木章夫氏
守成に徹した二代目の挑戦
  冨士鉱油株式会社の園木章夫社長は2代目社長である。平成5年に創業者社長である父、謙彦氏の跡取りとして社長に就任して9年が経つ。章夫社長は2代目社長の役割を一言で「守成」と表現した。
 念のために「守成」という語を漢和辞典で調べてみた。――創業の対、既にでき上がった事業などを衰退させないように保持していくこと――とあった。
 冨士鉱油は会社が設立されてから40年になる。そして章夫社長はお父さんが創業した冨士鉱油に入って22年を経た。その間、よその会社が目覚しい勢いで成長しているのを見るにつけ、自分の会社はなぜできないのかと悩んだ。そんな悩みの中からひとつの悟りをひらいた。一代目ができることと二代目のすることは自ずから違う。自分は創業者にはなれないが、守成が自分の役割である。これに徹して人生を終えたいと覚悟を決めた、と言う。
 O・V・S(ワン・ボイス・システム)
 現在は産業革命に匹敵する変革期である。父の前社長が掲げた理想に向かって父と共に歩もうとしたが、現実との間にギャップがあった。
 ITによる情報化を導入せねばといろいろ試みるが、思うようには進まない。このままで生き残れるか。危機感とあせりに苛まれる日々があった。そんな時に朝日監査法人理事長の森田松太郎さんから教えを受け、さらに渡米して監査法人のアーサー・アンダーセンで教えを乞うた。
 それはナレッジマネジメントという知識の共通化による企業活性化の手法である。企業は人によって成り立ち、企業の知識には2種類ある。社員個々人の知識=暗黙智と組織としての知識=形式智(マニュアル)である。
 個々人の知識を形式智に変えねばならない。知見の共有化によってどの社員も会社がもつノウハウを共有できる。これをITで支援すれば瞬時にして複数の人が情報を共有できる。社内のコミュニケーションは格段によくなる。これによってお客に対してはどの社員が応答しても一定の品質の応えになる。
 これをわが社では、O・V・S(ワン・ボイス・システム)と呼び、コーポレーテッド・スローガンとしている。
 Get the C
 スローガン「Get the C」は、時代の変化に対応して自己変革(Change)、生存をかけての会社運営の合理化、企業理念の深化に対する挑戦(Challenge)のCで、その決意表明に他ならない。Change、Challengeばかりではなく、顧客との関係性(Customer Relation)、コミュニケーションの道具(Communication Item)、顧客満足(Customer Satisfaction)そして価値の創出(Creation)などのCをも意味し、これらのCをナレッジマネジメントで実現しようというものである。
 N・G・P=提案営業利益
 「Get the C」を徹底するとビジネススタイルが変る。すなわち始めに商品があり、それを「売る」従来型ではなく、始めに顧客があり、顧客が望む商品を提供する会社になろうというの意味である。
 N・G・P(Non Gas Profit)は、今や業界で共通用語になったが、この用語を最初に言ったのは冨士鉱油である。直訳すれば「ガス外利益」となるが、「始めに顧客あり」の考え方でお客の購買代理者としてお客が必要な商品やサービスを提供する生活総合サービス・ネットを構築することが「N・G・P」である。そしてこれを今年度の重点施策の一つとしている。これを「ガス外利益」と呼ぶのは妥当ではない。提案営業利益がよい。
 「もろ共に、よりよく」
 冨士鉱油は神奈川、千葉、長野の3県を主な市場として2万6千軒余の消費者を擁し、今期末には3万軒に達するとみている。LPガス販売量は冨士鉱油グループ全体で年間10万トン、売上高は年間100億円、社員は160人である。
 章夫社長のお父さん、創業者の園木謙彦さんは昨年他界されたが、章夫社長が「お客を大切に、企業は人材、企業の正道を歩む」を標榜して2代目の役割に徹し、次の世代に渡すのが自分の役目としていることに満足されるに違いない。また、章夫社長は千葉と神奈川で配送の合理化のために昭石ガス、三愛石油と共同してFSN(フレンドリーサービスネット)を組んだ。それは父・謙彦社長がとなえていたことの実現である。
 筆者は創業者の園木謙彦さんと同年配だし、冨士鉱油創業以前からのお付き合いであっただけに、2代目章夫社長の心掛けとそのビヘイビアにあっ晴れの賞賛を惜しまない。


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