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(2002/08/12 プロパン・ブタンニュース)


西部ツバメプロパン会長
寺田光一氏
バブルに浮かれぬ経営者根性

  7月26日、西部ツバメプロパンの寺田光一会長を福岡市の同本社にお訪ねした。寺田会長は相光石油の会長でもある。相光石油は西部ツバメプロパンより四年早いスタートで昭和25年8月に寺田会長の父上の光次氏が創立した。だから今年、相光石油は53期、ツバメプロパンは49期である。
 相光石油と西部ツバメプロパンが創業した頃のわが国の石油やLPGはどのような事情だったか、石油年表を見てみよう。昭和24年7月―太平洋岸製油所再開が許可さる、昭和26年四月―GHQは石油行政権を日本政府に移譲、昭和27年四月―太平洋岸製油所原油処理制限撤廃。かくて石油精製各社は近代的FCC装置を競って建設した。再び石油年表の昭和30年からいくつかの項目を抜き書きしよう。昭和30年2月―日本石油ガス創立、特約店6社を決定、昭和30年3月―丸善石油下津製油所FCC装置完成、LPG初出荷、昭和30年5月―西部ツバメプロパン、大日本プロパン、西日本ガス等が中心に福岡県プロパン事業協会発足。
 これを見ても分かるように相光石油も西部ツバメプロパンも戦後の経済発展が始まるまさにその時にいち早く産声をあげて石炭から石油へのエネルギー革命を推進したのである。そして半世紀、常に業界の先達として着実な歩み続けている。
 ガソリン販売の厳しい環境
 相光石油は直営のガソリンスタンドが56カ所と販売店のスタンド149カ所がある。最近の決算では276億円の売上高で経常利益3億7千万円。西部ツバメプロパンの年間LPG販売量は20万トン強、うち直売、卸、簡易ガスの3部門で7万四千トン、残り10数万トンは福岡第一工場などから他社に融通される。その売上高は125億円、経常利益約3億2千万円である。
 石油販売は大変厳しい状況下にある。この四、5、6月に元会社のガソリンの仕切り値は毎月キロリットル当たり2千円ずつ高騰した。3カ月でリッター6円の値上げを販売価額に3円しか転化できないでいる。全国にガソリンスタンドは5万2千軒ある。うち3%がセルフスタンドだが、このセルフスタンドがガソリンの販売量では10%を占めている。九州でもスタンド業者はお客との触れ合いよりも隣のスタンドはいくらで売っているかが関心事のようだ。隣のスタンドよりも安値販売に腐心している。そしてお客さんの方を向かないで元会社の方ばかりを見ている。こんな風だと9月ころには赤字倒産のスタンドが出るのではないかと心配している。これが九州石油業界の実情である。
 ボルボの販売に乗らなかった
 高度経済成長の時期に財界人の会合で、うちは自動車の販売を始めた、うちはコンピューターをやります、わが輩はホテルを出した、あなたの所の多角化は何かと問われる度に小さくなっていた。うちはガソリンスタンドとLPGの卸と直売をやっています、では答えにならなかった。あのころ私は自動車のボルボを売れとしきりに勧誘をうけた。私は<長短借り入れは売り上げの10%以内、内部保留を厚く>を信条として自らに課していた。お金を使うのを惜しむのではない。投資はするが、歯止めをかけて内部保留を取り崩さないようにしたのである。あのときボルボの販売をやっていたら経営はかなり困却したと思う。ボルボの販売に私は乗らなかったが、岩田屋さんがやった。それだけが理由ではないが、昭和11年に九州で初めてのターミナルデパートとして開店した老舗の岩田屋だが、経営不振に陥り、伊勢丹との提携で最近再スタートしたことは周知の通りである。
 系列を超えた共同充填工場
 下関市で西部ツバメ、伊藤忠燃料(現伊藤忠エネクス)、岩谷産業で始めた「エルピーガス下関」は、平成11年に開始した共同充填から共同配送の完全実施までに1年半を要した。その経験があったから大分市での西部ツバメ、江藤産業、新出光、光伸ガス、出光興産等5社による物流提携「(株)ガスエネルギー大分」は13年6月に設立して翌14四年3月には充填、配送、保安、工事が一斉にスタートした。参加各社は大分市内の自社保有の充填基地を廃棄した。下関や大分のような共同化を北九州、長崎、宮崎、鹿児島等でもよい仲間と組んで配送や車両減のメリットを追求したい。これに加えて西部ツバメは一昨年、福岡市荒津の臨海の第一工場(海上受け入れ基地)に隣接して第二工場を建設した。同工場は交通の便がよく、最良の立地条件を備えており、十二連式全自動回転充填機(現在10基が稼働中)を備え、月間1200トンの出荷能力がある。信頼できるパートナーに門戸を開放して操業率を高めたい。
 LPGと器具販売は車の両輪
 電気の攻勢が強いと聞くが、LPGの良さをお客さんに十分に知らせていない。高機能の給湯器の効用を説明して、浴室乾燥機、床暖、そしてGHPとオールガス化住宅を実現した話を聞くにつけ、まず足許からやって行くことだ。
 インタビューを終えてお話の内容を反芻すれば、経営者の真髄に触れえた思いで興奮を禁じ得なかった。

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