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(2002/12/2 プロパン・ブタンニュース)


東邦LPG&コーク社長
多湖作之氏
「おののき」の心を持とう

   東邦LPG&コークの社長・多湖作之さんは、都市ガス事業は「導管による供給」でスケール・メリットを追求しつつ競争力を高めていく事業である。これに対しLPガス事業は導管のように顧客を直接結びつけるものがなく、「供給を人と車両に依存」しているので、あくまで顧客とのフェース・ツー・フェースを重んじる地域密着型の事業でなくてはならない。したがって同社では顧客との関係強化を常に意識して、顧客サービスの水準をたかめることで事業拡大を図っていきたいと述べた。
 この多湖社長の話は、親会社の東邦ガスが知多緑浜工場の創業によって都市ガスの広域供給体制が整ったことを機に、来年4月に合同ガス、岐阜ガス、岡崎ガスを吸収合併すると発表したことに伴い、関係LPG会社も都市ガス同様に合併するのかという質問に答えたものである。
 多湖社長はご病気をなさって仏の道を見てきたと仰るが、お元気でインタビューを通し様々な側面からLPG事業の来し方、行く末を説いた。そのすべてを書くには与えられた紙面に制限がある。特に印象が深かったものとして、同社の事業拡大に大きく貢献した、(1)供給基盤の核となる「名港LPG基地(二次基地)の役割(2)グループの配送会社「東液供給センター」の役割(3)アルミ容器の導入を始めとする「配送合理化への取り組み」に限って紹介しよう。
 名港LPG基地(二次基地)の役割
 名港LPG基地は名古屋港9号地の4万2千488平方メートル敷地に、3千トン級のコースタル・タンカーが着桟可能な受け入れ桟橋と、球形タンク1200トン4基・2千トン1基、ストレージタンク80トン3基と合わせて7040トンの受け入れ貯槽を持つわが国最大規模のLPG二次基地である。ローリー払い出しヤードを10基、小型容器の充填設備として回転式自動充填機(十連式)を2基、他に大型容器の出荷設備も備えている。同基地の平成13年度の稼働状況は、タンカー受け入れ船数212隻、ローリー払い出し車数2万2千台(16万9千トン)に達した。同基地は旧丸善石油と旧大協石油の合併にあわせ取得し、昭和62年11月に稼働した。これを契機に計画的に充填所等の供給基盤と配送ネットワークを充実させ、販売量を大きく伸ばした。同62年度の販売量は14万1千691トンだったが、平成13年度は30万4千909トンと伸張した。船で運びこめる二次基地に高圧ガスベースのタンクを持つことは、LPGの物流上で大きな意味がある。輸入基地やリファイナリーにも少ない高圧タンク容量を補うことができるし、沖縄や韓国からガスを引くこともでき、オイルショック時の経験からの自己防衛、危機管理でもある。加えて国備基地の計画に見るように輸入基地が需要地から遠ざかるにつれ、二次基地の重要性がますます高まるものと予想される。多湖社長のLPG二次基地流通論は、いま各地で行われている物流共同化にもましてLPG市場の構造的問題だと思った。
 東液供給センターの役割(配送と保安の一本化)
 名港LPG基地と共に販売量拡大に貢献したのが、同社グループの顧客に対する配送業務を一手に担う「東液供給センター」の存在である。その配送エリアは愛知、三重、岐阜一帯で、平成13年度末の配送受託件数は他社からの委託を含め15万3900件に及ぶ。この供給センターは従業員215人の別会社であるが、社員全体が配送作業を顧客との大切な接点と認識して、配送作業時のあいさつや身分証の提示の徹底など、顧客に対するサービスの向上に努めている。
 また、配送と保安は一体という考えで、保安事業も同センターが受託しているのも特徴的である。
  LPガスのコスト・ダウンは最重要課題である。「配送効率とは、1キロあたりの費用がいくらになるか」で積極的に取組んでいる。配送の効率アップの具体的な手段としては、容器設置場所の変更による配送作業の改善やアルミ容器の導入、新型バルクの有効活用等が挙げられる。こうした手段を画一的に適用・拡大するのではなく、それぞれを効果的に組み合わせることである。
 例えばアルミ容器の設置は別表の基準によって運用している。これは作業員の腰痛防止に20kg容器のアルミ化を進めているもので、作業環境や作業効率の改善に寄与している。新型バルクも同様で、物件ごとに安全性や設置条件を検討して容器設置より優れている場合に導入している。とくに名港基地は、その立地条件、二次基地としての優位性もあり、バルクセンターとして最適だと多湖社長は言う。

アルミ容器設置基準
配送合理化の取り組み
1.設置先の状況に関する基準
@5段以上の階段(3段以上でも10m以上配送)
A手押車が利用できず10m以上配送
B手押車が利用できるが坂道等で20m以上配送
C屋内を担ぐか抱えるかして配送
Dフェンス等障害物を越えて配送
E奥側ボンベ取り替え困難
F通路幅が極めて狭い
G高い所(70cm)への設置
H出窓、植木などがあり、腰をかがめて配送
2.その他の基準
@取り替え本数が常時2本以上で、担いで配送
 (手押車利用不能)
A配送サイクルがピーク時に5日以内でかつ転がし
 て配送できない
B事業所責任者が配送困難と判断した所


 ガス料金は市場の競争裡で決まる
 インタビューの終わりに多湖社長は、近ごろLPガス業者が顧客や世間さまをおそれる心が欠けているのではないかと指摘した。
 お客さんが理解していて当たり前というのではなく、理解していただきたいという気持ちが顧客に対する「おののき」の心を生む。新型バルクによる充填作業は、初めから公道での作業や騒音が社会的に認知されていたわけではなく、容器配送車と同様に長い時間をかけて世間の理解を得る努力をしなければならない。また、料金もその決め方が世間の常識から乖離(かいり)してはいないかと常に疑問をいだかなくてはならない。料金は市場での競争の中で決まっていくものであることを認識する必要があると結んだ。


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