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(2003/3/10 プロパン・ブタンニュース)

桂精機製作所社長
丸茂 桂氏
需要開発に効くカツラの機器

 桂精機製作所の丸茂社長のプロパンとの出会いは昭和28年の秋だった。
 わが国で初めてプロパンガスの十キロボンベ(だるま)が大和金属工業(遠藤潔社長)によって作られたのが昭和28年6月である。大和金属でその掌に当たったのは西根常次郎氏だった。西根さんはプロパンの将来性に着目して同年秋、東京・赤羽に溶接容器の製造工場・旭製作所を設立した。そして米国のLPガス事情視察に出かけた。アメリカのプロパンの普及ぶりを見てますます自信を深めて帰国した西根さんは容器製造に励むと同時に溶接容器工業会の会長にも就任した。西根さんはアメリカ視察からレーゴーの容器バルブとフィッシャーの調整器を持ち帰った。
 東京・蒲田で工作機械を持って町工場を経営していた丸茂さんと宮入製作所の宮入敏さんに西根さんはアメリカから持ち帰ったバルブと調整器を示してその製作をすすめた。丸茂さんは調整器をとり、宮入さんはバルブの製造をすることになった。容器バルブは真鍮製で材料費が高くつきそうなので調整器をとったと、丸茂さんは当時を述懐する。
 それ以来今日まで50年、桂精機は、ガスエネルギー利用の様々な分野で無くてはならない機器やパーツ、ガス利用のシステムを開発して世に問うてきた。家庭用ガス供給機器・安全機器・工業用燃焼機器・熱風乾燥炉・営農用温室暖房機・炭酸ガス発生装置・バルク貯槽の販売とそのシステムの設計施工と業務内容は幅広い。欧米の先進企業との技術提携も行い、その販路は内需はもとより北京、上海に現地法人の合弁企業を創設して中国にまで広げている。
工業用燃焼機と取り組む
 プロパンの直圧式のハンドトーチバーナーを開発して特許をとったのは昭和31年だった。このトーチバーナーはボンベと直結だから高圧ホースが必要だった。高圧ホースは集合装置の集合管に応用され新たな販路を開いた。このころコック(閉止弁)のシールの部分は金属のすり合わせが主流だったが、これに代えてゴムパッキンを使った。今はこれが普通になった。
 ハンドトーチバーナーの経験は、これができるなら工業用バーナーもできるはずだというお客さんからの要望があり、昭和34、5年ころから工業用途の開発に取り組んだ。昭和48年、米国バーナーシステムインターナショナルのジェットチューブバーナーの製法特許を取得、また米国パイロニックス社と工業用燃焼機器の製造販売の技術提携契約を締結して工業用ガスバーナーの技術を確立した。
 これら外国企業との技術提携契約に際して丸茂さんは、商社などを通さずに単独自分で乗り込んで自家談判をして契約をした。このやり方は一貫していて後に平成12年、バルク先進国メキシコのトリニティー社からバルク貯槽の輸入契約でも初年度千本の輸入を即決して帰った。社長の自分だからできたのであって、これが担当部長ではそうはいかなかっただろうと言う。
ガスの特性を生かした熱風乾燥、そして遠赤へ
 ガスの特性を生かした工業用途として直火で熱風を発生させて乾燥用とするのは最適である。塗装の乾燥では200度C近辺の熱風が必要だが、ガスの熱風発生装置なら容易にできるが、オイルでは好ましくない燃焼ガスが発生するから熱交換機を使わねばならない。熱効率は50%以下に落ちる。乾燥用は自動車、金属、繊維、薬品等あらゆる産業分野にわたり、塗装乾燥では全国的に95%がガス化している。ガスの乾燥用熱風発生装置は全国に1万台以上を納入して稼働させている。そのガス消費量は1機当たり平均1時間に30万キロカロリーである。
 桂精機は昭和37年にLPガス熱風発生装置の特許を取得した。「かつら直接熱風式発生装置」がそれである。この分野はガスの特性が十分に生きて普及が早かった。最近は遠赤外線バーナーが採用されて更に効率をあげている。一例をあげるならばLPガス50キロ容器の塗装乾燥で熱風発生装置で30〜40分を要するものを遠赤バーナーだと8〜10分で仕上がる。よって新設の装置は皆これに代わっている。日本ペイント、関西ペイント等も遠赤である。桂精機は昭和64年、フランスのガスインダストリー社と遠赤外線燃焼器の製造販売について独占契約を結んだ。
宝の山は目の前に
 「LPガス需要拡大に効く! カツラの機器」というタイトルで本紙はかつて10回ほどの連載企画をして好評を博した。その連載記事の最終回に丸茂社長が登場して言っている。
 宝の山は目の前に広がっている。続けてこうも言う。
 徳島県のプロパン販売店が当社の温室加温機を120台販売して、年600トンのLPガス需要を創出した。全国の作付け面積からすれば、まだまだ需要は広がる。これは一例に過ぎない。桂精機はこれらの事業で増収増益を続けている。


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