(2003/12/08プロパン・ブタンニュース)

SATOKO
(ピアニスト・本名=岡山聡子)
 クリスマスの記憶

 もうすぐクリスマス。先日、ふと思い立って子供の頃イブの晩に必ず部屋に流れていたレコード“バーバパパのクリスマス”を棚から取り出した。表紙こそ色あせているものの大好きなバーバパパが変わらずそこにいた。だが、中を開いてみて声の出演者の欄に声優さんの名がしっかり書いてあるのに驚いた。何をいまさらと思うだろうが、子供の時にはバーバパパを他の誰かが演技しているなんて、思いもしなかったのだから仕方がない。見たのをちょっぴり後悔した。
 子供の頃の私にとってクリスマスはサンタクロースが年に一度だけ家に来てくれる特別な日だった。その日だけはまるで、夜空にピンクやホワイトのラメがちりばめられているようなイメージ。冬、風邪で学校を休むと私はお気に入りのサンタの絵本を何度もくり返し読み、イブの晩にはレコードを聴きながらサンタさんを待った。サンタさんがプレゼントを届けに来てくれた時、ちょっと食べられる様にとヨーグルトをテーブルの上に必ず用意して。そして、ベッドに入って眠る前のワクワクした気持ち。そうすると次の日にはちゃんとプレゼントが置いてあった。
 今思うと私はきっと幸せな魔法にかかっていたのだと思う。大人のかけられる魔法の一つに。それはある日、クラスの男の子が言った「サンタはお父さんとお母さんなんだって」の一言で解けてしまった。だが、夢を見る喜びを知ってしまった私は、今では少し大人の方法を使って夢の世界に行けるようになった。飛行機に乗って降りた先は、まるで中世のヨーロッパそのものの街並みだし、映画館やコンサートに行けば一瞬にして色々な世界にタイムスリップすることができる。だから私は真っ白でピュアな心を持つすべての子供たちに楽しい夢をたくさん見てほしい。そうすればきっと、その子供は永遠にキラキラした目を持ち続けることができるから。あなたも今年のクリスマスは大切な人に本と音楽を贈ってみてはいかが?