(2004/5/24 プロパン・ブタンニュース)

波多野素子
(はたの・もとこ=シナネン経営企画部広報室 社内報『えんゆう』編集長)

雨の旅を楽しませる

 不況などによりバスガイドや添乗員も淘汰され、最近は優秀な人が多いと聞くが、ゴールデンウィークのバスツアーで、その腕前のすごさを実感した。
 飛騨高山から白川郷、飛騨古川、上高地と二泊三日をかけてゆったりと巡るツアーに参加した。上高地の素晴らしい山並みの景観を楽しみにしていたが、一週間前の天気予報で雨もようだと聞いて、残念に思った。当日はやはり雨だった。
 ツアーバスは、長野県の上田駅から始まった。連休中のバスの運行は遅れがちなものだが、出発直後さっそく渋滞情報を受けて路線を変更した。車内は瞬時に重い雰囲気に包まれてしまった。乗客の不安をよそに、旅の案内役を務めるガイドさんが、明るく手馴れた調子で話し始めた。
 いまは高速道路が整備されたためツアーには組み込まれなくなってしまった旧道だが、日本海側と太平洋側の分水嶺に位置する信州の歴史が刻まれていた。私は「塩尻」が塩を両方から運んできた終着点だからつけられた地名であると知った。木曽弁のやさしい声に耳を傾けているうちに気分は晴れてきた。その時から予定通りにいかない旅もいいもんだと思い始めた。
 いよいよ最終日。逆にバスは順調に行きすぎた。曇りときどき雨の悪天候のためか車は少なく、その結果、帰りの電車まで四時間も余ってしまった。
 添乗員さんは、急きょ行程に、その前日に終わった六年に一度の「木落とし」行事で使われたおんばしらが立つ諏訪大社のお参りや、信州味噌の工場見学を加え、時間調整をした。予定外の展開がうれしい反面、添乗員やガイドも大変な仕事だと思わずにはいられなかった。
 憂鬱になると予想された雨の旅だったが、ガイドさんや添乗員さんのどんな条件でも楽しませるプロの手腕で、充実した最高の旅になった。帰りの電車の中で、ツアーの参加者はぐっすり眠っていた。どの顔も満足そうだった。幸せな気分で家路についた。