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(2004/7/19プロパン・ブタンニュース)

岡谷酸素社長
野口行敏氏
バルクローリーの最適配送システム

 岡谷酸素の野口行敏社長は、自社のLPガス供給システムを説明して工業ガス専門商社だからできたと前提して、まず月間十万円以上の顧客をリストアップせよ。そしてその客を医療用液酸のユーザーの感じで扱って配送効率を上げよと指示した。
 民生用プロパンから出発した会社のバルク供給は、供給面積の密度を濃くして効率を上げる。岡谷酸素の場合は、同社保有のCE(液体酸素・窒素)の監視システムを応用し、東洋計器(通信手段)や長野計器(センサー内蔵液面計)の応援を得て低コストでバルク監視システムを完成した。これによって全供給拠点のバルクローリーに毎日、効率配車を可能にした。
 岡谷酸素の一般高圧ガスとLPガスの販売額は、ほぼ折半、LPガスは、工業用、業務用これにGHP用を加えると、一般家庭用とがほぼ折半している。GHPの販売では、事務所やSSVやアルペン等のスーパーもあるが、もともと工場向けと思ってやってきた。工場では電力消費がかさみ高価なキュービクルを入れなければならなくなり、GHPのコスト高を承知で導入するというケースが多かった。かくてGHPは累積二千五百台、三万馬力に達している。
 当地のセイコーエプソンでは六千`h級の高効率コージェネレーションを環境対策と瞬間停電に備えて導入した。精密工業では百分の一秒の瞬間停電でも一ライン一億円の損害を被る。電気は原発の電気を買えばよいでは収まらなくなった。いかに高効率のエネルギーを使うかが問題の時代である。中部電力などもかねてはコージェネレーション計画を潰しにかかっていたが、四、五年前から方針を転換して大手企業の導入を認めている。工業用ガス屋だから言うのではないが、長野県内でLPガスと他のエネルギーとのベストミックスを、もっとやって行かねばと思う。今の商売の密度を上げることが大事であり、新規事業に手を染めようとは思わない。
「バルク貯槽」1330基
 今年三月末のバルク貯槽設置は、直売分で九百六十五基、県内外の事業者からの受託を含めると千三百三十基に達した。ローリー保有台数は九台、長野県内に八カ所ある充填基地から県内各地に供給する体制を整えている。
 前段で述べたバルク監視システムは、双方向通信で監視先のバルク貯槽の残量をリアルタイムに把握でき、次に充填する日取りを指定してくれるので効率的配車スケジュールが組める。岡谷酸素のバルク物件は、大半が工業用・業務用施設で、GHP物件も多く、急稼働で消費量が激変するケースもあるが、この監視システムは、そのような状況にも十分に対応できる。戸建て住宅も二百カ所ほどある。
 今年度は一般家庭にさらに広げるためにバルク貯槽を三百基増設、ローリーも二台増車して供給体制を拡充する。その中にはコストを度外視して雪どけまでもたせる越冬用バルクもある。冬の配送は容易ではない。また、販売店からの委託の中には小規模のアパート等への供給で、企業防衛上の措置と見られるものもある。
配送コスト・1キログラム当たり8円台
 バルク輸送コストは、年間平均で一`c当たり八円台を達成した。今年一月のローリー運行状況は、一カ月間のバルク供給量が千三百六十三dで、一台当たりの輸送量は百五十一dだった。
 岡谷酸素は、「ガス切れ」が絶対にあってはならない病院向けの医療用酸素のローリー配送に昭和六十三年ごろから取り組み、独自の自社ソフトを運用してきた。これを基礎に上述のLPガスのバルク監視システムとバルクローリーの効率的配送システムを構築した。
 経済産業省の平成十五年度石油ガス流通合理化対策事業(石油ガス販売事業者構造改善支援事業)で岡谷酸素のこの「最適配送システム」の実態調査・分析がなされ、大きなコストをかけることなしに最大の効果が得られることを検証した。この調査は、今後新たにバルク供給システムに取り組もうと考えている者に、またバルク供給システムをすでに導入したが、コストメリットに確信が持てない者にも一つの実践事例として経営効果を公開したものである。
 ちなみに書き添えておくが、岡谷酸素が東洋計器と長野計器との共同開発で構築したこのシステムは、平成十二年から販売され、これまでに全国の二十社に納入して効果を上げている。


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