LPガスの基礎知識、用語解説
市場に確固たる地歩固める 2000/03/06P.B.N.
■GHP LPガス消費アップの切り札のひとつ、GHP。ヤマハ発動機のGHP撤退という衝撃はあったものの、一方では99冷凍年度で業界全体の販売が初の4万台を突破し、既築物件補助金制度もスタートするなど明るいニュースが続いている。
今年初め、ヤマハがGHP事業から撤退すると表明。同社は家庭用GHPの中心的機種のメーカーであるため、とくに家庭用に力を入れている、または今後入れていこうとしていた販売事業者に衝撃を与えたようだ。が、逆に業界ではこれを反省材料にし、これまでに増して着実に普及していこうという気運も見られる。
99冷凍年度の業界全体の出荷台数は、4万2,187台(前年比7.1%増)でGHP発売以来初めて単年度で4万台を突破した。容量でも137万4,121馬力(39万6,000冷凍トン)と、同じガス空調の吸収式を初めて超えた。空調市場のなかで確固たる地歩を固めつつある。2000冷凍年度第1四半期(99年10〜12月)は1万1,917台(前年同期比22.6%増)と好調だ。
既築中小物件を対象とした補助金制度「既築中建物個別分散LPガス冷房導入促進GHP」が平成11年度にスタートした。業務受託先である日本LPガス協会が昨年10月に受け付けを開始し、1月半ばまでに86件の申請を受け、56件へ交付決定をした。
普及加速、バルク容器も登場 2000/03/06P.B.N.
■新バルク 新バルク供給は、LPガス物流を革新的に効率化する切り札として、平成9年4月施行の改正LPガス法で誕生した。それまでのバルク供給(既存バルク)に比べ、対象を民生用としたうえで、貯蔵量1トン未満の大幅な規制緩和を図ったことが特徴。保安距離は新バルクローリー、バルク貯槽とも第1種に1.5メートル、第2種に1.0メートルとなり、バルク貯槽の再検査周期は20年(以降は5年)となった。
続いて、今年1月施行の改正省令で「バルク容器」が定義されるともに、新バルクローリーなどの第2次規制緩和も行われた。バルク容器利用の供給方式は軒先充填とも呼ばれ、ローリーから充填時の保安距離は1.5メートル。すでに80キログラム型が市販されている。LPガス供給は貯槽、バルク型容器(既存バルク)、バルク貯槽、バルク容器、一般容器の5通りになった。
新バルクの普及は先行投資となるものの、有力各社が営業戦略として推進しているため、市場的にはやや過熱気味。昨年のバルク貯槽の生産数は1万1,900基弱で、前年の5,200基強の2.3倍になった。また、海外生産(中国、韓国)によるバルク貯槽の価格低廉化や、バリエーションの拡大(1,000、500、300、150キログラム)、ローリーについても静粛性の高いLPG仕様車や積載量1.35トンの小型が登場するなど、普及環境の整備が進んでいる。
次の課題は1トン以上の規制緩和で、通産省は12年度から実証試験に入る。他方、普及の進展にともない、消防が注視しはじめたほか、ガス放出防止弁の基準見直し・交換、ローリー特許問題、液回収用ローリーの開発など、課題も浮上している。
自動車用から家庭用まで開発競争 2000/03/06P.B.N.
■燃料電池 水素と酸素の化学反応を利用して発電する燃料電池。LPガス業界にも今、急速に燃料電池熱が高まっている。日本石油ガスと東芝が共同開発してきたリン酸型200キロワット級燃料電池がLPガス仕様として世界で初めて商品化され、昨年6月には両社を中心にLFCコンソーシアム(LPガス燃料電池システム普及研究会)が発足したことからブームに火をつけた。同型は主に工場や病院など大型物件向けだが、いま家庭用にまで商品化の波は広がっている。
政府は今年度と来年度にかけて約100億円の研究開発投資を行う方針で、現在、資源エネルギー庁で検討が進む2030年までの長期LPガス技術戦略でも重要な位置づけとなる見通しだ。
燃料電池はダイムラークライスラー社とバラードパワーシステムズ社とが共同で取り組む自動車用が世界をリードしている。
冷蔵庫ほどの大きさを持つ出力1、2キロワットなど数キロワット級の家庭用(小型)燃料電池の開発競争もかまびすしい。国内では通産省の外郭機関NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が1992年度からPEFC(固体高分子型燃料電池)をベースに家庭用の開発プロジェクトに取り組む。都市ガス業界は同プロジェクトの一環で、日本ガス協会が99年11月に燃料電池プロジェクト部を発足し、東京ガス+松下電器産業、大阪ガス+三洋電機、東邦ガス+松下電工の組み合わせで、1月から1キロワット級3台の燃料電池の本格運転試験を開始した。NEDOプロジェクトには三菱電機、東芝も参画し、海外製品との商品化競争がすでに始まっている。
実用化へ内外各社が開発に力 2000/03/06P.B.N.
■マイクロコージェネ コージェネは、発電と排熱を同時に供給・利用するシステムだが、うち発電能力が10キロワット以下のものを一般に「マイクロコージェネ」と呼ぶ。海外では5キロワット以下をマイクロコージェネ、5キロワット以上200キロワット以下をミニコージェネと呼ぶ場合もある。マイクロコージェネには、発電方式によりガスエンジン、ガスタービン、燃料電池型などがあり、自動車メーカーを含めた内外各社が開発にしのぎをけずっている。家庭用(1〜3キロワット)は2003〜2005年に相次いで商品化されそうだ。
わが国では先の電気事業法の改正で、10キロワット以下は電気主任技術者資格が不要となった。LPガス利用タイプとしてはまず、ヤンマーが昨春から「Eコンビ」名で発売。出光興産も同商品をヤンマーとのダブルブランドによる「Eco−W」名で発売、マイクロコージェネによる発電分野への参入が始まった。本体(参考価格300万円)、マルチ切替器(100万円)、150〜300リットルの貯湯槽の3点セットで、レストランや銭湯、病院向けに普及努力中。発電は9.8キロワット、温水は13号相当で、総合効率は発電24%、温水58%の約80%。
一方、東京ガスは昨秋、75キロワット、25キロワットの海外製マイクロガスタービンを搭載した各テスト機の運転を開始。また、日本ガス協会は今年1月から、1キロワット燃料電池を搭載したマイクロコージェネの試験を始めた。試験機は三洋電機、松下電器、松下電工製の各1台。ホンダは1.8キロワットタイプを開発、松下電器はまた、高分子型燃料電池を利用した家庭用のマイクロコージェネ(1.5キロワット)を開発したと発表。2004年の実用化を目指している(価格は50万円以下が目標)。
環境を前面に続々と発売 2000/03/06P.B.N.
■高効率ガス機器 省エネ大賞通産大臣賞を業界で初めて受賞した高効率ガス給湯機をはじめ、「環境にやさしい」をキーワードに高効率タイプのガス機器が続々開発、発売されている。
いま話題になっているのは、省エネ大賞通産大臣賞を受賞したガス給湯機だろう。開発・発売したリンナイ(RUXC−K2000W)、東京ガス(KG−S520RFW−L)は2月16日にENEX展と同会場・東京ビッグサイトで行われた平成11年度省エネルギー月間表彰式で表彰を受けた。熱効率は約95%(従来品は約80%)と高い。1・排気中の水蒸気を凝縮(コンデンシング)させて潜熱を回収 2・通常の熱交換器のほかに、排気中の潜熱を回収する副熱交換器を搭載している。さらに、NOx値約30ppm以下のセラミックバーナーを搭載した。
コンロでは高木産業のエコ・ベストバーナー、ハーマンのエコジェットシリーズ、前年度の省エネ大賞エネ庁長官賞を受賞したパロマの水なしグリル・こんがり亭などが挙げられる。
空調ではGHP。電気などに比べるともともと効率や能力には定評があるが、さらにCOPを向上させたものをメーカーと販売業界で協力して開発する動きにある。吸収式も高効率性、環境性などが特徴。
ガスの優位性高く需要増に活躍 2000/03/06P.B.N.
■床暖房 ガス熱源機(給湯機)でつくったお湯をまわして床を暖め、輻射熱で人体や部屋を暖める温水式床暖房。東京ガスあたりがPRと普及の火つけ役だが、LPガス消費者にもジワジワと認知度が高まっている。特徴は1・裸火や送風がないのでクリーン、安全・安心2・輻射熱による快適性、健康性3・電気式床暖房に比べるとランニングコストや立ち上がり、ぬくもりの柔らかさなどの点で優位・・・など。
LPガス業界にとっては単位消費量アップに貢献する商品だ。「LPガス料金が下がっても利益の出る体質とするために消費量を拡大しなければならない。床暖房はその戦略商品のひとつ」と位置づけている事業者もある。
この数年でメーカーの開発が進み、施工性が大きく向上したのもLPガス事業者にとってうれしいところ。ノーリツの「はるとホット」などのように、既築住宅のフローリング上に直接敷設できるものも出ている。1日程度の工事で比較的簡便にできるうえ、工事コストも従来に比べて下がるため、事業者にもユーザーにも採用しやすい。技術力や工程管理などに不安のある事業者でも従来品に比べると安心して取り組めるし、どうしても自社でできない場合はメーカーの販売・工事支援も期待できるようだ。
また、高木産業は業務用給湯機の技術を応用した大規模床暖房を発売しており、幼稚園・保育園や高齢者施設などさまざまなところで普及が進んでいる。
迅速な顧客サービスに即対応 2000/03/06P.B.N.
■LPG販売・保安管理システム 21世紀のビジネスシーンに勝ち残るキーワードは「消費者優先主義」だと言われる。大手事業者ではすでに導入していた顧客情報のコンピューター(オフコン)管理を、中小規模の小売販売店でも取り入れるケースがここ数年急増している。日常業務の効率化、保安管理の合理化、そして消費者サービスの迅速化などを目指しての導入だ。
パソコン機能の目ざましい向上によって「オフコンでは重すぎる」としていた小売販売店でも、気軽にコンピューターと向き合えるようになったことが背景にある。システムメーカーではこのような潮流を敏感に察知し、LPガス販売業界に特化したソフトの開発に力を入れ始めた。潜在的なニーズの掘り起こしにアンテナを張りめぐらせ、業界の意向を探るマーケティングも兼ねたシステム説明会や展示会等が全国各地で頻繁に開催されている。
集中監視システムとの連動によって、顧客データを有効活用する「後方支援」タイプから、現在では、独自に顧客サービスが実現できる多彩なオプション機能を持ったシステムが続々登場している。また、携帯電話やPHSの普及を踏まえて、配送や営業などの業務効率化が図れるiモードタイプの携帯電話を組み込んだシステムも登場。これは、配送マンや営業マンが外部からiモードの操作だけで顧客情報をセンターから得ることができる他、その日の活動で収集した新しい情報を逆にセンターに即時入力することができる。世はスピード時代。コンピューター利用による迅速な顧客サービスは、今後ますますLPガス販売業界の柱となっていくだろう。
環境追い風に人気高まる 2000/03/06P.B.N.
■LPG車 地球温暖化防止の一環から、最も重視されているのが自動車排ガス対策だ。それがハイブリッド車、天然ガス自動車、電気自動車、メタノール自動車のいわゆる低公害車の普及を後押ししている。こうした自動車の普及がNOx(窒素酸化物)やCO2(二酸化炭素)など温室効果ガスの低減に寄与することが期待されている。いわゆる低公害車とはクリーンエネルギー自動車とともに行政用語であり、民間ではエコカーと一般的に呼んでいる。
こうしたジャンルにLPG車も入る。ただし、ディーゼル代替の条件がついたり、助成制度が天然ガス自動車など新参の自動車に比べて手薄で、「縦割り行政の弊害」とか「差別的待遇」と行政への辛い評価をしつつも、関係業界はロビー活動を必死に展開し、LPG車の復権に力を尽くしている。
低公害車などエコカー分野は地球環境問題とともに、規制緩和の影響を多方面に与えている。LPG車も例外ではない。LPG車分野では高圧ガス保安法の規制緩和によって、加圧直噴式エンジンと新型の自動車用高圧容器を搭載した先進型LPG車の普及が可能となったことから、LPガス元売業界、オートガス業界ばかりか、卸売・小売業界、それにトヨタ自動車や日産ディーゼルなどの自動車メーカー、さらにはLPG車の導入を草の根で推し進める生協グループやヤマト運輸、日本通運などの大手運送業者も加わって、LPG車普及活動に一層熱が入ってきた。またトラックやバスにも搭載できる中大型エンジンの開発もスタート。LPガス燃料電池自動車の開発の動きも出てきており、LPガスの需要開拓面から自動車分野から目を離すことができない。
普及は新しい通信技術対策で 2000/03/06P.B.N.
■集中監視システム 一般電話回線を利用して、LPガス消費世帯の「安全」を文字通り集中的に監視するシステム。専用の伝送装置(NCU)を介在した端末機器とセンター設備間で通信を行い、保安情報管理のみならず自動検針などを行うのが基本的な構成だ。情報通信技術の目ざましい発展にともなって、PHSを利用したシステムなども開発されている。
しかし、LPガスの消費世帯を2,600万世帯だとすると、現在までの普及率は15〜17%程度と見られている。需要家戸数にすれば400〜450万世帯だ。改正LPガス法によって制定された認定販売事業者制度の評価基準は、集中監視システムの普及率がその大部分を占めている。全国的に取得事業者の数が頭打ちになっている現状は、集中監視システムの普及率が伸び悩んでいることとイコールとなる。
ここ数年来の、通信技術部門の進展は目を見張るばかりだ。インターネットの普及による電話回線のデジタル化、携帯電話やPHSユーザーの急速な増加にともなう電話レス世帯の出現など、集中監視システムを取り巻く環境は大きく変化している。高圧ガス保安協会(KHK)では、業界全体の課題をクリアするために、デジタル対応NCUや無線化システムの研究開発に取り組んでいる。昨年あたりから、メーカー個々でもこれらの対応製品・設備も相次いで発表されてきた。通信技術は光ファイバーや電子通信、超音波通信など続々と新技術の登場が目されている。業界としても、将来を見据えた迅速なシステム開発が今後、必要となる。
B級事故撲滅が急務 2000/03/06P.B.N.
■CO・埋設管事故対策 安全器具の普及によって、LPガス事故はピーク時の10分の1にまで減少しているが、燃焼器具の不完全燃焼等によって発生するCO(一酸化炭素)中毒事故と、腐食や老朽化によってガス漏洩を引き起こす埋設管事故が占める相対的な割合は逆に増加傾向にある。CO事故も埋設管事故も、ひとたび発生すると死者をともなうB級事故に発展する可能性が極めて高いだけに、この2つの要因を根絶することが、LPガス事故撲滅に向けた究極の対策といえる。平成9年10月から昨年9月までCO一斉点検が行われた。
通産省ではさらに、これまで保安高度化目標として掲げてきた(1)2000年末までにB級以上の事故撲滅(2)2000年末までに一般消費者が安心してLPガスを利用できるシステムを構築する を踏まえた上で、今後の目標達成のアクションプランとして「CO事故防止と埋設管事故防止」対策を最優先課題として取り組む必要があることを強調している。
CO対策として燃焼器具に組み込む安全装置に、立ち消え安全装置(熱電対方式、フレームロッド方式)、不完全燃焼防止装置(熱電対方式、COセンサー方式)、過熱防止装置(バイメタル方式、温度ヒューズ方式)、空だき安全装置(圧力スイッチ方式、バイメタル方式)などがある。埋設管等の漏洩検知装置としては、マイコンメーターT、U、B、C、Lの流量検知式装置、ガス漏れ警報遮断装置の圧力検知装置などがあるが、高圧ガス保安協会(KHK)では現在、集中監視システムとの接続も念頭に入れた「簡易型自動警報システム」の開発に取り組んでいる。
国際市場のキャスチングボード握る 2000/03/06P.B.N.
■サウジCP サウジアラビアCP(Contract Price=通告価格)はサウジアラビア国営石油会社(サウジアラムコ)が94年10月から導入したLPガスの政府公式販売価格。サウジは世界最大の産ガス国・輸出国だけに国際マーケットのキャスチングボードを握っている。サウジは毎月のCP決定にあたって(1)テンダー価格(毎月3回の公開入札価格水準)(2)国際市況の分析(東京、シンガポール、ロンドン、ニューヨークの海外4事務所の情報収集)(3)日本など国際市場の輸入国・需要家の意見(4)季節要因(気象状況)の4要素を加味するとするが、資源を持つサウジのワンサイド的価格通知の色合いになる。
CPスタート以来、実際の需給バランス以外の要素によってプレミアム(上乗せ価格)市場となることが多い。例えば、通年では夏場不需要期には下落傾向となるが、昨年99年は様相を異にして過去に例を見ない夏場急上昇の展開となった。OPEC(石油輸出国機構)の協調減産継続と原油価格の上昇、中国・インド等アジア勢のLPガス利用シフトによる輸入量増大、欧米トレーダー勢の投機的相場づくりやファンドマネーなどの要因が複雑・微妙に作用して高騰した。この大きく振れる上下振幅は国内原料事情を直撃し、その都度流通段階での対応を迫られる。価格は需給関係、市場原理に左右されるとの生きたサンプルでもある。CPは2004年には導入10年目を迎えるが、同時期にはアフリカ勢や中央アジア・南米などの新興輸出国への台頭もあり、CP制度に変化が生まれる可能性もある。
バランスの構造的変貎のとき 2000/03/06P.B.N.
■国際LPガス需給 2000年の世界LPガス需要量推定は約1億8,000万トン。地域別では米国5,000万トン、アジア4,500万トン、欧州2,600万トン、中南米2,600万トン、旧ソ連1,000万トン、中東1,200万トン、アフリカ800万トン、オセアニア300万トン。
3年後の2002年時点の国際LPガスフロー予測(国際貿易)はどうか。中国やインドの需要は大幅に増加。日本や韓国など従来からLPガスを輸入してきた消費・需要国はほとんど変化がない。他の東南アジア地域でも生活水準の上昇とともにLPガス使用にシフトする。増大する需要に対して、供給が伴わない地域は日本は無論のこと、中国やインド、東南アジアを抱えるスエズ以東の地域。全世界的な需給バランスを考察すると、増産の地域はアジアではなく、アフリカや欧米地域のスエズ以西で、増産LPガスの一部はアジアに振り向けられることもあろう。しかし、大部分は南米を含むスエズ以西の欧米諸国の需要増加で吸収されるため、オーストラリアやマレーシア地区の若干の増産はあるものの、需要増大のアジア地区の供給タイト化は続行する。2000年は国際マーケットにとって、スエズを境とした東西需給バランスが大きく変貌するターニングポイントのとき。サウジCPは基軸燃料である原油価格に対して熱量等価換算比で常に独歩高を続けており、今後も特にタイト感の強いアジア地域で一層高値圏を維持していく傾向にあるとみておくべきだろう。
第1号は長崎・福島基地に建設 2000/03/06P.B.N.
■LPガス国家備蓄 民間備蓄(50日分)に加えて、資源小国で輸入大国日本だけにいざという国際間の有事発生に備えて、石油と同様にエネルギーセキュリティ(安全保障体制)の一環でスタートしているのがLPガス国家備蓄プロジェクト。国家備蓄計画は90年の湾岸戦争を教訓に、通産省の肝入りとLPガス業界の要請で進展してきた。石油審議会は92年6月に国の直接コントロールが可能なLPガス国備制度の創設を提言(2010年度までに輸入量の1カ月分に相当する国備150万トン体制実現)、日本LPガス備蓄会社(本社・東京)も設立されている。国備基地は5カ所程度の計画で、総事業費は2,000億円の予定。
国備第1号は福島基地(長崎県松浦郡福島町)で九州液化瓦斯福島輸入基地の隣接地。地元長崎県・福島町は町おこしの地域振興策もあって国備基地の誘致に熱心で、98年10月に正式決定し、99年8月に着工。地上低温タンク方式で、プロパン5万トン3基・ブタン5万トン1基の合計貯蔵能力20万トン規模。2001年度に冷凍タンク本体工事に着手、2003年度中の完成を目指す。
第2号は石川・七尾市での建設(地上方式)が決定しているほか、愛媛・波方町、岡山・倉敷市での建設(いずれも地下方式)の方向にある。
施行フォローアップ策も急加速 2000/03/06P.B.N.
■改正LPガス法 4月1日から改正LPガス法が完全施行となる(公布は8年3月)。規制緩和の流れを受けてスタートした改正法は販売と保安を分離し、競争原理を導入したものとして注目された。しかし、一部では競争原理を曲解し顧客争奪や、消費者を巻き込んだトラブル、訴訟等まで発展する事例も多い。こうしたことから、販売業界の行動憲章ともいえる公正取引指針や顧客切り替えに関する基本ルールを策定するケースも目立つ。
改正法の大きなポイントは販売事業者の許可制から登録制に改正されたこと。また、保安業務実施者が認定保安機関に格上げされ、さらに、保安に積極的な事業者を認定販売事業者とする制度も創設した。
改正法のフォローアップでは、流通面では、交付書面の内容について充実を図るとともに、交付への担保措置(行政命令、罰則)を導入するなどの改正が行われたところ。当該書面の交付期限は3月末とされていることから、今後、交付書面の交付状況の調査(書面による調査、立ち入り調査)を行う。さらに、書面交付を怠っている者への対応も要すれば今後検討することにしている。
また、保安面、とくに認定保安機関の関連では、保安業務実施体制の未整備事業者に対し、全国の通産局と都道府県担当課長に「保安業務実施体制の整備等」について通知し、強力な指導と立ち入り検査を要請するとともに、改正法の経過措置期間終了(3月末)後も未整備のままの場合に対する法的措置のあり方(業務停止命令・登録取り消し)も示した。
より開かれたエネルギー市場へ 2000/03/06P.B.N.
■電気・ガス事業法改正 政府の規制緩和政策の一環で、昨年5月に改正電気事業法と改正ガス事業法が公布された。大口部門への参入規制の緩和、料金引き下げ時の届出制の導入など公益事業の自由化分野の拡大が目的の法律改正となった。
「より開かれたガス市場」を目指して昨年11月19日に施行された改正ガス事業法。これを受けて、12月10日には東京ガスが料金届出制を利用して都市ガス業界では初めて平均2%の値下げを発表、2月17日には大阪ガス、翌18日には東京ガスが相次いで託送料金水準をそれぞれ発表するなど、改正法に沿った料金値下げ戦略を大手が実行している。東京ガスの料金値下げは2回に分け、2000年度中に現行料金比で4〜5%安の水準にすることを合わせて表明している。それが実施されれば、都市部のLPガス市場にも少なからず影響を及ぼすと予想されている。
大手都市ガスの料金値下げ戦略は、一口には3月21日付で施行される改正電気事業法も睨んで、電気との競争に打ち勝つことと見られるが、エネルギー市場が規制緩和(自由化)の進展にともない、新旧入り乱れた競争が現実化するなかで、ガスエネルギーが優位な国土の実現を目指すための前哨戦との見方ができる。
さらに同戦略は天然ガス自動車、燃料電池、大型ガスコージェネレーションシステムなどの新技術の投入に当たって欠かすことができなくなる天然ガスパイプライン網の延長と天然ガス利用インフラの整備によって実現するであろう、長期ガスエネルギー市場の成長の絵姿を具体化する突破口とも言える。
都市ガス業界は、それを実現するため、当面、需要家から都市ガスがいかに利用しやすく安全で経済的なエネルギーであるのかの国民的な評価や信頼を早急に獲得するための前倒し投資を短期的に実施していると指摘できる。しかし、地方都市ガス会社にとって天然ガス関連の莫大な投資が重い負担であることも事実で、大手と中小の力の差が料金値下げの動きに反映されていると言えそうだ。
LPガス4大物流連合が出現 2000/03/06P.B.N.
■元売再編 世界的な石油需要の低迷と国内での規制緩和によって、経営の苦境に陥ったのが石油業界だ。とくに元売業界の再編はスピードを早めて、昨年4月には国内最大手の日石三菱が誕生し、同社は川崎製油所の閉鎖や出資会社の興亜石油の株式を公開買いつけ(TOB)によってカルテックスから購入するなどの措置に出て、業界再編をリードしている。日石三菱は昨年11月1日から、コスモ石油と仕入れ・精製・物流の3部門についての全面業務提携をスタートさせたことから、日石三菱・コスモ石油グループが国内の最大物流連合として完成した格好だ。
これと並行し、LPガス元売では7月1日、日本石油ガス、三菱液化ガスが三菱商事も加わる形で「LPガス物流業務協力に関する基本合意書」を締結し、実質、LPガス版日石三菱グループが誕生。これに興亜石油ガス、後にコスモ石油ガスが参画する形で、日石三菱・コスモ石油ガスグループによるLPガス物流大連合が形成されることになった。同グループによるLPガス生産・輸入・2次基地の貯蔵能力に見たシェアは42.3%と圧倒的な数値だ。
これに対抗するのが、10月5日に共同配送(物流)の新会社設立構想を発表し、10月23日に精製部門の共同事業化計画の検討開始を発表した昭和シェル石油とジャパンエナジーのグループで、LPガス貯蔵能力のシェアは20.3%、それに現状では独立系と見られる出光興産(貯蔵能力シェア10.9%)の2大グループだ。これにようやく12月2日に発足した世界最大のエネルギーメジャー・エクソンモービル、さらに6月1日に発足する同グループの日本法人であるエッソ石油、ゼネラル石油、モービル石油、東燃の4社によるMSA(サービス相互提供契約)に基づく国内販売・サービス新会社の発足、さらには1月22日に明らかになったゼネ石と東燃の7月1日合併に至って、同グループの日本戦略が明確となったことから、国内の石油・LPガス元売業界は4大物流連合による市場形成が明確になった。
アクションプラン策定へ 2000/03/06P.B.N.
■取引適正化・料金透明化 資源エネルギー庁LPガス産業室は10月25日、日本LPガス連合会と全国LPガス卸売協会に、取引の適正化・料金透明化に向けたガイドラインを示すとともに、具体的な内容を明記したアクションプランを自主的に作成するように要請した。取引の競争環境を整備することで、販売業界の健全な発展につなげていくのが狙い。
取引の適正化では▽消費者とのトラブル防止▽消費配管の所有権の適正化▽適正な契約内容 などを明確化するため、無償配管の慣行を撤廃するよう要請。料金の透明化では▽料金情報の積極的な提供▽料金問題検討会の設置▽LPガス価格動向の内容充実(石油情報センターへの委託調査)などを求めた。
アクションプラン策定にあたっては、3月までをメドに300社を対象に無償配管などを中心にした取り組み状況をヒアリングする▽LPガス料金問題検討会の設置では2月23日に初会合を開き、3月中にも中間報告書をとりまとめ、その後、各団体の議論を経て、6〜7月をメドに最終報告書をとりまとめる予定。
料金問題検討会のメンバーは小売事業団体2人、卸売事業団体2人、元売事業団体2人、学識経験者(学者・弁護士)2人、消費者団体2人、公正取引委員会、LPガス産業室など十数人程度で構成する予定。事務局は資源エネルギー庁LPガス産業室とLPガス振興センター。報告書骨子イメージは全体テーマを4項目に分類。▽LPガス料金の基本的考え方と指摘される問題点▽料金表・料金体系▽料金情報の提供▽LPガス料金をめぐるLPガス業界の課題 で構成する予定。
未対応業者には業務停止命令も 2000/03/06P.B.N.
■認定保安機関 改正LPガス法で誕生した認定保安機関が、いよいよ最終段階を迎えている。通産省LPガス保安対策室では、保安業務実施体制の未整備事業者に対し、全国の通産局と都道府県担当課長に「保安業務実施体制の整備等」について通知し、強力な指導と立ち入り検査を要請するとともに、改正法の経過措置期間終了(3月末)後も未整備のままの場合に対する法的措置のあり方(業務停止命令・登録取り消し)を示した。
保安対策室が要請したのは、経過措置期間内の対応として(1)未整備事業者に対する強力な指導と立ち入り検査(2)整備予定事業者に対する指導徹底。そのうえで、経過措置期間終了後も整備されていない事業者への法的措置を、本省所管事業者に対する措置内容をモデルとして示した。法的措置を取る理由については「3年余りの経過措置期間があったものであり、適切な法の発動が必要」と説明。
業務停止命令については、(1)迅速な対応が必要なので、発動時期は4月下旬ごろが想定される(2)業務停止期間は3カ月間程度が想定できる(3)手続き中に保安業務実施体制が整備された場合は発動を中止する(4)業務停止命令期間中に保安業実施体制を整備することなく業務を行った場合には、改めてLPガス法第27条違反として登録取り消しに入る、などとしている。
登録取り消しについては(1)業務停止命令期間の終了後、保安業務実施体制を整備することなく販売事業を再開したものは、法第27条違反として登録取り消し手続きに入る(2)販売事業を再開していないものは休止状態と同様に扱う、としている。また、「連絡の取れない事業者は、法第25条(登録の取り消し)などを発動することになる」(向山室長)模様。 12月末現在では登録販売事業者の93%で取得していた(保安対策室調べ)。
特定ガス大口供給等で転換期 2000/03/06P.B.N.
■簡易ガス 簡易ガス事業が飛躍するには「規制緩和と制度改革が進展しつつあるなかで、需要家の要望に的確に対応するとともに、自主保安体制の確立、ガスの安定供給や適正料金の維持に努力することが大事」(日本簡易ガス協会・石橋幸弘会長)。
エネルギー業界は競争を促進し、需要家の選択機会の拡大と利益の増進を図るための規制緩和と制度改革が進展しつつある。ガス事業に関しても一昨年秋から「総合エネルギー調査会・都市熱エネルギー部会」や「ガス政策小委員会」で審議されていた改正ガス事業法が昨年5月に公布され、11月19日に施行になった。簡易ガス事業が誕生して以来初めての大きな改正であった。3年後にはもう一段のガス体エネルギーの構造改革を図る予定。
この改正ガス事業法の中で「地方ガス事業調整協議会」の廃止にともなう一般ガス事業区域内における簡易ガス事業許可の基準の明確化、標準係数の改正、定例的な見直し期間の提言など、簡易ガス事業に関し何点か大きな改正があった。また、特定ガス大口供給の新設など個々の自主性に基づく事業運営の幅が広げられ、これまで以上に需要家の要望に的確に対応できることになった。例えば、標準係数の見直しでは道路占用料と感震遮断装置の係数を新設した。新規地点群が11月19日から適用になったが、既存地点群は事業年度に合わせるため、12年度から使用する。
一方、安全規制も「通産省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律案」が昨年8月に公布、今年10月に施行される。これも国による使用前検査、ガス用品検定の廃止、技術基準の性能規定化等公的規制の下での経営から、自主性と自己責任に基づいた経営への転換を図り、事業者間の競争促進による需要家機会の拡大と利益の増進を目指したものとなっている。
施行3年で16機関が誕生 2000/03/06P.B.N.
■プラント指定検査機関 1997年4月に「高圧ガス取締法」から「高圧ガス保安法」へと改正施行された事によって、高圧ガス設備に関する様々な規制が緩和された。なかでも、それまでは都道府県知事や高圧ガス保安協会(KHK)、または、公益法人の指定検査機関だけに限られていたLPガスプラントの完成検査や定期的な保安検査については、各種検査を的確に行える一定レベルの能力を持っている場合は、民間の検査機関であっても「指定保安検査機関」の指定が受けられるようになった。自己責任原則に基づく「自主保安時代」の到来を象徴する制度とも言える。
新法施行から約3年が経過しつつある中で、指定検査機関は2000年2月末現在で16機関が誕生している。通産大臣指定で伊丹産業検査(指定年月日98年3月26日)、西日本高圧瓦斯(同98年3月30日)、茨城高圧検査サービス(同99年2月1日/※98年1月13日に茨城県知事指定を先行取得)、川重検査サービス(同99年3月17日)、エヌエスエンジニアリング(同99年7月6日)、三愛プラント工業(同99年7月22日)、岩谷瓦斯(同99年11月24日)の7社。都道府県知事指定ではガス檢(同98年10月6日東京都知事)、北海道大同ほくさんエンジニアリング(同2000年2月9日北海道知事)、鹿児島県高圧ガス保安検査・指導センター(同98年11日24日鹿児島県知事)、三保産業(同99年3月10日京都府知事)、広島ガスサービス(同99年3月10日中国通産局長)をはじめ旧法指定の4団体を含めた10社(茨城高圧ガスサービス含む)で、合計16事業者となっている。
※記事は2000(平成12)年3月6日発行 プロパン・ブタンニュースより