(プロパン・ブタンニュース 2001/12/10)
日本石油ガス販売部理事 後藤忠夫氏
LPG車 評価される提案セールスを
日本石油ガスの販売部理事・後藤忠夫さんは、いまなぜLPG車かと前置きし、わが国のLPG車は、昭和37、8年にハイヤー、タクシーを主軸に利用技術と普及体制を切り開き大きく発展した。ここ数年は環境対策に即効性、実用性があるとしてLPG車が注目されている。かつてのブームがタクシーを中心にプロを対象としたのに対し、今回は一般のユーザーが相手である。それだけにお客さまがLPG車を買ってよかった。2台目もこれにしよう。友人や知己にも推薦しようというようにシンパシーが客の間に生まれて来るようにしなければならない。それがためには単に目立ちたがりでなく、技術に裏打ちされ、経済性にも優れていることを説得できねばならない。卸売協会の調査によればLPガス業界には10万台の自動車が稼働、うちLPG車は2万台である。この数字はLPガス業界がLPG車の普及に、持てる力の2割しか使っていないと言えるのではないか、と手厳しい。今、LPガス輸入元売会社はエネルギー・コストを下げて供給することに憂き身をやつしているが、一味違うもう一つの問題は提案セールス、マーケッテングに徹することだ。特約店も販売店も一緒になって世間から評価される提案セールスをLPG車で行いたい。
グリーン購入法は環境省と国土交通省の合作の法律で、官公庁が採用する低公害車を特定品目として指定している。指定されたのは天然ガス自動車、メタノール自動車、電気自動車、ハイブリッド車の四兄弟で、LPG車は指定されていない。
グリーン購入法の特定品目に
後藤さんは「LPガス自動車普及促進協議会」を拠り所にLPG車をグリーン購入法の指定品目にすることに傾注している。だからといって4兄弟の後塵を拝して5番目の弟にして下さいと「懇願」しているのではない。資源エネルギー庁の2010年を目標とした低公害車普及計画ではLPG車は現行の29万台の実績をベースに新規増加分22万台を積み上げて51万台と想定している。
これに対してメタノール車は22万台、CNG車は100万台、ハイブリッド車100万台、電気自動車41万台が目標である。LPG車を除いてこれらの普及目標は現在の普及実績から見て過大と言わざるを得ない。これと対比してLPG車は、LPガス普及促進協議会が業界版提言として2010年にはLPG車は62万〜100万台以上の普及が可能としている。
かくて後藤さんはグリーン購入法については、来年2月までには暫定かも知れないが、LPG車は指定品目に入るだろうと言う。さらに言葉をついでこうした問題は政治決着を望む声もあるが、政治力を否定するものではないものの、ことを運ぶに一つひとつ論理的に積み上げていくことが大切だという。
ブタン過剰現象に対処せよ
IGF21(インテグレーテッド ガス ファミリー21)、これは2010年に13Aの配管網が全国的に完了するというプロジェクト名である。これをLPガスの分野から見ると、工業用ブタンの多くが13Aに替わることを意味し、LPガス業界にとってはゆゆしき問題である。ブタン過剰現象が起きてプロパンの安定供給ができなくなるからである。
そこでLPG車にブタンをと考えてオランダのヴィアーレ社のLPi車に着目したと言う。LPi車は自動車用としてブタンを直接燃やすシステムである。ブタンは圧力が弱いのでポンプが必要だ。これを地上で行うと法律で製造行為とされているが、運転している自動車上ならば製造行為とならない。ここに着目してLPi車を積極的に推進した。車が安全なら地上でもよいはずだと後藤さんは言う。そして自動車用にとどまらずGHPのエンジンも個別分散電源のタービンや小型燃料電池にもブタンをもっていくことができ、プロパンの安定供給を可能にすることができると話は末広がりである。
■LPガス自動車の事始
後藤さんの話を聞きながら昭和30年、日石ガスが発足したばかりのころ、同社顧問として在籍した佐藤信輝さんの風貌と氏が語ったことを思い出した。わが国で初めてプロパンを製造したのは昭和6年、日本石油の台湾・錦水油田でだった。当時、日本石油の現地所長は佐藤信輝氏だった。氏はこの新製品は台湾島内で都市ガスの代用として病院や料理屋で使われたほか自動車燃料にも用いたと当時を回顧した。後藤さんは日石のこの伝統を引き継いでいるのだと思った。そして後藤さんの所説にLPガスの新しいウエーブ、風を感じた。
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