(2002/04/15 プロパン・ブタンニュース)
i n gコーポレーション社長 竹澤裕信氏
「21世紀へのパスポート」

  i n gGROUPの代表の竹澤裕信さんを埼玉県の鴻巣市、鴻巣駅に程近い同本社に訪ねた。暫く振りの訪問に会社のたたずまいが見違えるばかりに瀟洒(しょうしゃ)に変ぼうしているのに驚いた。昨年10月、CI(コーポレイテッド アイデンティティー)を導入して、社名も半世紀走り続けた竹澤興産からingコーポレーションに変った。それは社会のシステムや人々の価値観が大きく変ろうとしている時代に対応しての挑戦である。かくて社会とより好い関係を維持し続けようという絶え間ないing(進行形)の意味である。
 予定より早く着いたのでingコーポレーション本館前の「白雲清水亭」に立ち寄って時間調整をした。ここは先代社長の竹澤一さんが来客の接待や会議に使った建物で、和室と洋室がある。先代は筆者と同年生まれだったからご存命ならば八十歳だ。そして竹澤一社長は、この会社を継ぐ前は、東京高等師範卒の都立西高の数学の教師だったことなどを考えながら白雲清水亭の玄関に掲げてある「ingGROUPはOnly One Companyをめざします!」のパネルを読んだ。曰く「ナンバー・ワンの後ろには、ナンバー・ツー、スリーの足音が迫っている。だからナンバー・ワンの地位を維持するために努力する。これはあたり前のこと。でも、よく考えてみると、ナンバー・ワンというのは何を基準にしてナンバー・ワンというのだろうか− という素朴な疑問が生まれてくる。客観的な眼をもった第三者が、他と比較して非常に勝れているという理由でナンバー・ワンと評価するのだろうが、その第三者にしたところで価値観やものの見方は百人百様ではないか。もちろん、ナンバー・ワンをめざすことはとても大切なことだけど、何か曖昧だ。だから私たちは、誰にも真似することのできないもの、他と並ぶもののない唯一無二のものを創りだす―Only Oneを目指したい。Only Oneが具体的なカタチになったとき、誰からも認められるナンバー・ワンになれるのだから−」。長い引用になったが、含蓄に富むので敢えて全文を引いた。白雲清水亭の管理をしているおばさんが、先代はここに佇んで植木をよくご覧になっていました、と言った。
私たちの会社に「わたし」がいる
 平成7年にお父さんの跡を継いで社長に就任した裕信社長がその後の7年間最も力を注いだことは社員教育だった。人材教育は種まきを終えいま若芽が吹き出したところだという。ウィンドウズ95が発売されるや全社員にパソコンを買い与えた。また、デジカメも皆が持つようにした。社内でフォト・コンテストを年2回行って金、銀、銅賞や社長賞があり、これらの写真を用いて会社のカレンダーが作られている。ことごと左様に私たちの会社に「わたし」がいる、といった具合である。
 いま業界には切り替えと称して他業者の顧客に売り込みをかける商行為があるが、取られぬためには自分のお客さんは自分で守るしかない。それには社員一人ひとりの資質がものをいう。その意味で300人の社員全員の旅行に一人に5万円、都合1500万円かけた方が、同額で150軒の需要家を買収するより余程よい。
 ingGROUPはingコーポレーション(旧社名、竹沢興産)、ingジー・エー(エスシーエス)、ingホームエナジー(竹沢住設)、ingヨーケン(埼玉容器検査所)、ingホームエナジー・越谷(竹沢住設・越谷)、ingリューツー(竹沢LPガス流通センター)、ingホームガス(安全ガス)の7社に改名して新世紀のチャレンジを開始したのである。これに若干の解説を加えるならば、ingGROUP全体でLPガス年間取り扱い量四万トン、傘下販売店250店、直売1万3千件(別会社分を加えると3万件)、年商100億円。他の卸売り会社が直売化に向かう中にあって卸売り業を拡充強化して、お客さん、販売店と自分たちとが三位一体となって信頼を得たいとしている。
地域社会に親しまれる企業に
 裕信社長は学生時代からオーディオ、カメラそして車が大好き、これらには何か共通するものがあるようだ。社長の特技では、さらにコンピューターがある。SEとしてもタレントである。集中監視システムに地図システムを付加したり、ガス機器のネット通販システムを構築したり、並々ならぬ腕前である。さらに環境国際規格のISO14001やプライバシー保護マークの取得など環境にやさしく、かつ地域社会に親しまれる企業作りを志向している。これらは21世紀のパスポートだ。
 ingコーポレーションのあちこちを案内されたが、実によく整頓されていて、ガス屋の事務所ではないみたいだ。映写室も完備されて、世界の名画を鑑賞できる。ingコーポレーション製作のビデオ「2分だけPR」のでき栄えには感心していたが、こんな環境の中で創られたのだと納得がいった。

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