(2002/05/06 プロパン・ブタンニュース)
カナジュウ・コーポレーション社長 牧野修三氏
ITで飛躍する販売店
株式会社カナジュウ・コーポレーション(牧野修三社長)は、神奈川県横浜市瀬谷区の本社だけを拠点として県内2万3千軒の顧客に「CITY GAS」のブランド名でLPガスを直売している会社である。神奈川県内の顧客数の業界平均は1社当たり1100軒である。その20倍近くの顧客を50人余の従業員で本社一拠点だけで守備し、開拓営業ではこの10年間で3割以上もユーザーを増やした。
神奈川県はプロパンのユーザーの奪い合いが激化してユーザーが他社に切り替わる離反率が高い県だが、カナジュウ・コーポレーションは0.38%と低い。これは顧客満足度が高いことを物語るものだ。かくて同社の年商18億円、売り上げ構成の80%はガス代金である。このように効率がよく、特色のある経営はどのようにして行われているかを聞くべく牧野社長を訪ねた。
アウトソーシングのすすめ
「配送は配送センター、保安は保安センター、検針はパート、集金は自振……」。これではLPガス会社は何もしないではないか。そんな批判が根強くある。しかし効率経営をするためには外注化は不可欠で、むしろ積極的に推進すべきである。また、「作業」は専門集団に任せた方が効率も質もよくコストダウンが図れる。外注化は顧客満足の実現につながる。
ただし外注するべきは「作業」の部分で、「管理」は社内で行わなければならない。「作業」を外注化した後に残る「管理」の仕事、それこそがLPガス販売店の本来の仕事である。
「発生業務」と「計画業務」
作業別集計表の作成によって仕事量の把握をしなければならない。仕事には会社の意思で計画し制御できる「計画業務」と制御できない「発生業務」がある。「発生業務」を「計画業務」に取り込んでいくことで、仕事をしやすくし、LPガス販売を伸ばしていくことになるのである。
これができていない旧スタイルの店は、ラーメン店が注文を受けてから料理を作り、届けるようなもので、電話が来るまでどんな仕事をどれだけやればよいか分からない。前の日に翌日の仕事をつかんでいないから、すべての仕事を発生主義で対処することになる。お客さんからの依頼、修理やクレームにその都度対処するわけだからメーター交換や2年に1度の調査といった「計画業務」は暇なときにやるという考え方にならざるを得ない。結果として「発生業務」に追われて「計画業務」ができなくなる。
「DyneCS」(ダイネックス)
カナジュウ・コーポレーションのIT営業の基幹となっているのが、自社開発した「DyneCS」(ダイネックス)というコンピューターシステムである。「各種顧客情報の蓄積」「担当者への業務の振り分け」「作業日報」「作業の分類集計」等を行う。その大まかな流れを、保守サービス営業を例に見ると、担当者は訪問計画に沿ってユーザーを訪問し検針やガス器具等の点検作業を行う。これを携帯電話のボタンでユーザー名、作業内容、終了時間をコンピューターに送る。上司はこれを自分のパソコン画面で確認して、担当者の作業負荷などから全体の効率性を判断し「サービス・シート」という作業指示書を担当者に発行する。また、開拓営業で「デジタル日報」というものに訪問履歴や新規ユーザーの紹介などを担当者が各自のパソコンから入力してくる。
このデータを工務店別、担当者別に並べかえることで、工務店がどれほどユーザーを紹介してくれたか、また担当者がどれくらいの頻度でアプローチをかけたかがパソコンの画面上で瞬時に一覧できる。このシステムは他社への販売をもしている自信作である。
タイムレコーダーもパソコンで
社員は朝出勤すると、まず端末に電源を入れ、メニューにある「勤怠表データベース」を開き、出勤をクリックする。休暇の申請、残業や早退の届けも画面で登録する。上長はこれを認めれば承認をクリックする。勤務時間のデータは月末に集計され、給与計算ソフトとも連動する。
「コールサービス」が好評
コールサービス業務は、本社1階の電話対応ブース6席で実施している。平日は4〜5人、土、日も2人が常駐する。これらの女性スタッフは、顧客からかかって来る電話に対して取り次ぎを経由せず、終始1人で用件をこなす。各ブースに備え付けのパソコン端末に相手の氏名か電話番号を打ち込めば、その顧客の情報一覧が瞬時に画面に写し出される。現場を知らなくても状況を想定して対話ができ成果をあげている。これに反して屡々遭遇する担当の誰それはいまだ出社していない。あるいは外出している、という取り次ぎはまことに無様である。
牧野社長の所説には正直、カルチャーショックをうけた。カナジュウ・コーポレーションのどの側面を捉えてもITの思想が一貫している。
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