(2002/06/03 プロパン・ブタンニュース)
愛知県LPガス協会会長
オーテック社長
 彦坂 守氏
丸太で豊川を下り東三協創る
  株式会社オーテックの彦坂守社長を豊橋市神野新田の同本社ビルに訪ねた。彦坂さんは愛知県LPガス協会会長である。この会見の前日(5月23日)、愛知県協会は今年度の定時総会を開いた。総会で彦坂協会長はおおむね次のようなスピーチをした。
 [スピーチの要約]1.総会に出席した会員が例年に比べて多い。これは「ガス市場整備研」で業界の将来像が検討されているので、これを真剣に受け止めているためだと思う 2.13年度、協会は専門部会を設置、支部を五支部に統合するなど大幅に組織を見直して会員の声に直ちに対応するようにした。これによって財政面でも余剰基金ができ、健全化が図られた 3.13年度に埋設管、燃焼器具の交換率の高さで経済産業省・LPガス安全委員会の賞を受けた。13年度の事故件数は1件だけだった 4.東海地震対策を強く訴える。愛知県下45市町村が東海地震の防災区域に指定されていることでもあり、「自主防衛、自主対策」を呼びかける 5.環境問題も忘れてはらない。クリーンエネルギーLPGのPRに努める 6.LPG料金は透明性のある適正化が重要だが、消費者がLPGを選ぶ基準が、「料金」か「安全」か「安定供給」かで違ってくる。どの分野でも、消費者からLPGが選ばれるように努めなければならない。
 総会での協会長スピーチを長くなるのをいとわずここに引いたのは、このスピーチに彦坂さんの思想が端的に示されているからである。
 LPGコストの引き下げ
 ベルリンの壁が崩壊して世界市場の垣根が無くなり、いわゆるグローバリゼーションが始まった。日本は経済大国として高賃金の拡大主義では立ち行かなくなった。バブルの終焉である。経済産業省は規制緩和によって市場経済原理を導入し競争原理がはたらき易くして、すべからくコストを引き下げろという。これが行政に課せられた使命となっている。消費者が自由に選べる自由価格、それは業者よりも消費者の利益を優先する価格決定のあり方である。取引の適正化、透明性が強調されている。だが、都市ガスもLPGも同じガス体エネルギーとして一体と見なし、両者のガス料金の全国一本化をいうに至っては机上の空論である。
 総会での協会長スピーチの要約6.はその事情を述べたものである。
 東三液化瓦斯協組
 LPG販売事業の集約は販売店の買収だけではない。彦坂さんは昭和38年に「東三液化瓦斯協組」を創って、LPGの共同仕入れ、供給機器の共同購入、LPGの貯蔵・充填工場の運営管理、共同配達業務、消費設備の保安調査業務、さらに容器検査工場の建設等の事業を実現した。
 初代理事長には彦坂さんが就いたが、理事長は全組合員の交代制で1期2年、2期以上の留任はない。組合は仕入れ価額+運営コスト+キロ当たり5円の分積み(経営基盤の確立費)とした。これは一般市況の卸相場より安く、組合員は個々の商店の個性を保持しながらコスト削減になった。
 かくて現在、東三組合はアーガスの荒尾竜彦理事長のもとに18社の組合員が常に平等の原則のもとに結集して、そのLPG取扱量は1万1千トン(うちバルク千トン)、消費者3万軒、売り上げ15億円の実績をあげている。
 日連の保険事業に貢献
 日本LPガス連合会の常任理事でもある彦坂さんは、日連のLPガス賠償責任保険の再構築に貢献した。大口に付保した業者の返戻金をめぐってこれらの業者が日連の保険事業から脱退しようとする動きが生じたとき、関係者と相計り1.返戻金は付保した会員に戻すべきで、一括して県協会に戻す誤りをただした2.大口付保と小口では返戻金の差があるのは当然として、県協が事業遂行上資金が必要ならば保険の返戻金を充てるべきではなく、別途予算措置を講じて徴収すべきとした3.そのような観点から、かけ捨て制度を提案して日連事業団の保険制度の優位性を強調した。これによって透明性が著しく前進して大口付保の会社の、他の保険会社への移行を阻止した。この時の彦坂さんと全卸協の石川晴善専務理事との連携プレーや大口付保会社との精力的な折衝は非凡なるものがあった。
 自然流で成功
 豊橋市を流れる豊川の上流に鳳来町がある。ここが彦坂さんの郷里である。湯の谷温泉があり、鳳来山には東照宮が祀られている。また、武田勝ョと織田信長が戦った「長篠の戦い」の古戦場である。
 彦坂さんは農家の10人兄弟の末弟である。西瓜も二番生り、三番生りは烏も突っつくが、十番目では烏も横を向くと言って笑う。
 そういう彦坂さんは24歳で丸太に乗って豊川を下って豊橋に来てプロパンを知った。そして小さな業者がプロパンを売っているのでは駄目だと考えて協同組合による業務の集約を考えた。ここに彦坂さんの原点がある。
 彦坂さんのオーテックはこの5月期決算で年商44億円、エネルギー事業本部21億円(うちLPGは8億円)、建設事業本部23億円である。
 烏にも横を向かれた青年実業家は大をなしたものである。それはこの人の自然に逆らわぬ考え方が功を奏したのであろう。彦坂さんと話していると安堵感がわく。人徳であろう。

 プロパン・ブタンニュース2002/6/3 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


最初のページに戻る