ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2002/10/21 プロパン・ブタンニュース)


全国LPガススタンド協会 専務理事
内田 賢氏
大仏もほほえむ奈良の空気

   全国LPガススタンド協会の専務理事・内田賢さんにわが国のLPG自動車は現在、何台ほど走っているかと聞いた。今年6月末の統計で28万7786台だという。タクシー=23万6千台、自家用車=2万7千6百台、貨物車=1万5千台、その他特殊車(冷凍車、高所作業車等)、霊柩車も2台あるそうだ。内田さんはご自分の葬式にはこれに乗りたいと言って笑った。この統計には軽自動車とフォークリフトは含まれていない。これも2〜3万台はあるから優に30万台のLPG車が稼働している。
 わが国全体の自動車台数7千5百万台中のたかが30万台だが、低公害車の中の30万台は凄いと思う。インフラにして見てもCNG車のスタンドは、国の手厚い補助を得ながらも全国に170カ所だが、LPGスタンドは6月の統計では全国に1861カ所と断然多い。経済産業省の計量行政室調べでは2千数カ所と集計している。このようにLPG車は業界の自助努力で低公害車として実績を積み上げてきたのである。
 横綱あつかいのLPG車
 平成3年から5年にかけて環境問題からディーゼル車の排気ガスが問題視され社会的に注目を浴びた。そして低公害車への転換が提起された。この時、電気自動車、メタノール車、CNG車、ハイブリッド車のいわゆる低公害車四兄弟が国の補助育成を受けることになったが、LPG車はこのころ既に30万台の普及を見ており国の補助育成の対象に非ずとされた。LPG車は競馬にたとえるならばハンディキャップレースのようなもので、スタートから重いハンデを背負わされたのである。それは強者の証しであり、横綱あつかいである。
 内田さんたちはLPG車が四兄弟に対して強者であるが故のハンディキャップが低公害車として実力の低さではないことを強調し続けてきた。それを役所はLPG車も補助金が欲しいのかと言った。そうではない。低公害車としての位置づけが欲しいのだと言った。四兄弟にLPG車をも加えて五兄弟にせよと主張したのである。最近に至って環境省のグリーン購入法の政府調達品目にLPG車も指定されて漸く低公害車としてその性能が高いことが評価された。この機会にLPG車は攻めに転じなければならない。
 地方自治体が評価
 地方自治体による低公害車としてLPG車の採用が各地で盛んになっている。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、横浜市、川崎市、千葉市等7都県市、大阪府、京都府、兵庫県、大阪市、京都市、神戸市等6府県市、札幌市、名古屋市、山梨県でも地方自治体独自の指定低公害車としてLPG車が指定されて注目されている。また、松本市は全公用車のLPG化を企画したと先週、新聞が伝えていた。これらの地方自治体では清掃車(ごみ収集車)のLPG車化が目立つ。横浜市の22台のLPG清掃車などはその好例である。
 このように地方自治体がLPG車の採用に積極化しているのは、LPGのスタンドが近くにあること、それに燃費効率がよいことが分かってきたためである。このように今やLPG車は地方自治体から中央に攻め上る動きが顕著に見られるようになった。これをもっと中央に反映させねばならない。
 奈良市議会でLPG車問答
 奈良市市議会議員の松石聖一さんは9月10日の本会議で、奈良市が現有するディーゼル車200台を順次、LPG車やハイブリッド車に変えるべきだと思うが、市長の所見を問うと質問して、市長はごみ収集車などの更新時に漸次LPG車の導入をはかると答弁した。因みに同市ではLPG車を18台導入している。
 松石議員の内田さんへの手紙には東大寺の門前にある国宝の青銅製の灯篭が酸性雨のために腐食しているのを見てディーゼル車のLPG車への転換を急がねばと痛感したとある。ディーゼル車のDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)は高価で、現在40万〜150万円もするが、数年後には安いものが出るとも言われているのでディーゼル車のオーナーが低公害車への転換を躊躇しているむきもある。しかし、来年から東京都の規制が始まるからLPG車への転換には今がチャンスと言える。
 自動車用LPG消費上昇に転ず
 ピーク時のLPG車の年間LPG消費量は185万トンだった。現在は160万トン弱である。ピーク時にはタクシーは1日330kmも走ったが、今は280kmしか走らない。なお当時はリッター当たり4km程度の走行だったが、今は5.7kmである。自家用車が減ったこともその要因である。自家用LPG車のピークは昭和59年11月に6万8千651台を記録したが、現在は2万7千670台である。然しながら上述のようにLPG車への転換の勢いが再び強まり、生協やヤマト運輸等がLPGにシフトして自動車用LPGの消費が上昇に転じている。

 プロパン・ブタンニュース2002/10/21 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む