ウェーブ・風 話題と肖像画 ナリケンが行く
(2002/11/11 プロパン・ブタンニュース)
大丸エナウィン 社長 | |
伊藤吉朝氏 | |
鯛を釣るには鯛の餌で |
大丸エナウィンの社長伊藤吉朝さんは昨年6月に前社長の中輝男さん(現会長)からバトンを受け五代目社長に就任して二年目を迎えている。
伊藤社長は創業者社長の伊藤吉雄さんの子息だが、社長就任の辞はこうであった。
当社は創業者の子供だから社長になるといった会社ではない。規制緩和のただ中で電気、ガスの垣根のない厳しい競合エネルギー時代に突入した。LPガス、都市ガス、電気が三つ巴の闘いを演じ、LPガス業界の内部でも元売、卸、小売の垣根も低くなりつつある。いつ激震が起きるか分からない。このときハンドルをどう切るか、どう運転するか経営者は判断を誤ることは許されない。4期連続最高益を更新した会社を創立50周年という節目の年に引き受けて、今年4月には社名を「大丸エナウィン」に変更した。「エナウィン」は21世紀のエネルギー大競争時代に勝ち抜く(Win)の意をこめての新社名である。
運のいい会社
平成12年10月12日、東証第2部に新規上場した。関西の企業から全国の企業になったのである。この上場が東証2部で2000年の2000番目の上場に当たり取引所に居合わせた多くの人々からおめでとうの握手攻めにあった。1000年の1000番も3000年の3000番もお目にかかれぬめぐり合わせである。思えば平成2年の大証2部上場のときも湾岸戦争に遭遇して審査に手間取ったが、結果的には上場の翌日が「40周年記念祝典」で二重の慶びとなった。
おめでたい話をもう一つ付け加えておこう。伊藤社長にお名前をどう読むのかと訊ねた。吉朝(よしとも)だが、会社では(きっちょう)で通っている。古いお付き合いの方々から元日にあなたが来ないと正月が来ないと言われるそうだ。誠に運のいい会社である。
データベースで囲い込み
家庭用LPガス販売の競争が激化して料金が下がり、利幅が圧迫されている。バブル崩壊後は地価も下落して人々の住居が都心部に回帰して家族構成がこれまで以上に核化している。空家率も増えている。これでは一家庭当たりのガス消費量が減少する。ガス器具も省エネになってガスの消費はますます減少する。これは正しくアゲンストの風である。然しそれをフォローの風に変えねばならない。これまで通りの経営の延長では如何ともし難い。縦の利幅が下がったのだから横に広げたらよい。世間では横の拡大に「お客を囲い込む」のにいろいろな手法がとられている。カードで囲い込む、インターネットで囲い込む等々。伊藤さんは顧客のデータベースによる囲い込みがよいと言う。コード番号で戸建てか集合住宅か、分譲か借家か、家族構成なども一目瞭然だ。これを魚釣りになぞらえて、鯛を釣りたければ鯛が好む餌を用意せねばならぬ。鯛を釣るのに鯖の餌では釣れるわけがない。このようにすればアゲンストをフォローに変え、会社が標榜する新中期経営計画「1616プラン」=年間3千件以上の直売を獲得して、平成16年には経常16億円を実現するだろう。
レンタル事業は新しい芽
インフラで囲い込んだ顧客にLPガスだけを売っていればよいか。これらの顧客から毎月1000円でも1500円でも集金ができるレンタル事業は新しい芽として育てたいと考えている。緒についたばかりだがと言って、浄水器と給湯器のレンタル事業について次にように述べた。
浄水器のレンタル料1500円/月、1年目と2年目にカートリッジ交換、3年目には本体を新品に交換する。浄水器の価額は買い取りで3万円、カートリッジ交換は1万2千円と高かった。在宅率50%だからレンタルではカートリッジの交換は説明書付きで送り付けて顧客に取り付けさせる。かくして浄水器レンタルを4軒とればLPガスの顧客1軒に相当する。浄水器レンタルを1000軒とればLPガスの顧客250軒に匹敵するわけだ。昨年10月から「POPOガス給湯器」と銘打って給湯器のレンタルも始めている。POPOガス(ぽっぽガス)は大丸エナウィン取り扱いガスの愛称で、給湯器はパロマのOEM製品である。レンタルするのは4機種で、契約期間はいずれも7年。メンテナンス料込みの月額レンタル料金は、給湯専用タイプ屋外壁掛型20号が1000円、同24号タイプが1500円、追いだき機能付きセミオート屋外壁掛20号2500円、同24号3000円。そしてLPガス料金をかまして普及を図っている。
ぽっぽセールは2ケタ成長
昭和55年10月、創立30周年記念式典に併設された展示会の評判が上々だったので、この経験から期間セールキャンペーンの「どんどんセール」、それを盛り上げるイベントの「どんどん市」を毎年恒例の行事として成功裡に行われた。それが今年から「ぽっぽセール」になった。新しい社名、そして「ぽっぽガス」のブランドに因んでの命名である。「ぽっぽセール」参加店の売り上げは、昨年実績を11.2%上回る2ケタ成長を達成した。近頃、まれにみる勢いのある元気な会社である。
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