ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2002/12/16 プロパン・ブタンニュース)


日本LPガス協会 専務理事
葉梨益弘氏
CPは透明性流動性を

   日本LPガス協会の専務理事・葉梨益弘さんは、わが国のLPGを末広がりの扇にたとえるならその要(かなめ)に当たるところに居る人である。葉梨さんはご自分を資源屋と言い、経済産業省で第一次オイルショックを経験した後、昭和55年には石油代替エネルギー法を手がけた。石油の使い勝手のよさから過度の消費を戒め、太陽光発電など分散型エネに予算をつけるなど法律的に促進したのである。56、7年には長期的対策として大手ユーザーの電力が石炭のガス化をやると言って注目を集めた。そのころNEDOの総合主任研究官として石炭の液化を、役所に戻ってからは研究開発官として石炭のガス化に携わった。世界に普遍的に賦存する石炭の液化は石油を補完するエネルギーのノーブルユースである。昭和57年から60年にかけて米国ヒューストンに駐在したが、そこではメジャーの石油会社の政策を、またその新エネルギー政策を見ることができた。
 LPGを石油におし込めてはいけない
 こんな葉梨さんがエネルギー問題を考える上にCOP3の京都議定書―2010年に国中のCO2排出量を90年のマイナス6%にする―の批准は大きなインパクトを与えた。これによって石炭の位置づけは厳しいものとなった。COP3の開催時に葉梨さんは、京都の地球環境産業技術研究機構(RITE)に出向して茅陽一先生の下で働いた。COP3によってエネルギー問題に環境のファクターが大きく作用するようになった。
 石炭よりもガス体エネルギーをたよりにせざるをえなくなった。エネルギー政策もそのようにカジをきることになった。LPGは石油と一体になっていたが、石油の中にしまい込んでおいてよいのか。RITEは、LCA(ライフ サイクル アセスメント)からみてもLPGは液体エネルギーとしてLNGと同格、ガス体エネルギーとして取り出して地球環境に十分貢献できるとした。LPGを石油の中において政策として消費を減らしていくエネルギーにするのは愚策である。LPGは大いに使われねばならない。いわば幼稚園児のような新エネルギーを鉦太鼓で騒ぎ立て、大学生のLPGを石油の中にしまいこんでおいてよいものか。ここで自動車用LPGに一言しておこう。今やディーゼルの問題は深刻である。一刻も早く改善したい。それにはLPG車は極めて有効である。LPG車はインフラの問題を考えるとき歴史的にも実績でも全国に1900カ所のスタンドがあって困る要素はない。LPガス自動車普及促進協がやっているが、今こそ笛、太鼓で盛りあげる時である。政策誘導の仕方としては、CNG車は技術、経済性を高めるような金の使い方が必要で、LPG車は導入促進の助成が効果的である。
 葉梨さんのシンガポール講演
 葉梨さんは今年6月にシンガポールで行われたアジア地域諸国のLPG会議に出席して日本のLPG事情について講演した。そこにはサウジをはじめ中東の産油国の関係者も出席した。葉梨スピーチは、アジア地域で2007〜8年にかけて1000万トンの需要量増が見込まれる。それは主として中国市場の拡大による。同時期の供給余力は1700万トンの潜在可能性があると指摘した。供給はこの範囲で需要に応じて開発が追いつく余力がある。サウジは目下のところLPGを石化原料に使っているが、数年後にはLPGに戻るだろう。このような需給状況を前提にして、供給の安定性には問題はないとした。
 問題は価格である。日本では規制緩和の中でエネルギー間の競争が激しい。LPGが競争燃料に勝つには価格が問題である。価格が高けれ販売量が減るのは当然である。販売量が減れば輸入量が減る。産油国が日本の市場をキープしたいならば価格に対して適切な配慮を望むとして、国別に2000年度と2001年度のわが国の輸入量を比較して、サウジの場合631万トン(42.5%)が465万3000トン(32.4%)に減少した。そしてスポット比率を上げ、アービトラージ(裁停取引)、CPにかわる取引等を例証した。これらは中東に対する依存度、友好関係を否定するものではなく、中東を評価した上で価格決定のプロセスの透明性、流動性を確保する必要性を強調したものである。
 LPGは分散型、LNGはネット型
 日本LPガス協会の中原晟助会長は常々言っているが、LPGは分散型、LNGはネット型エネルギーである。それぞれの役割を果たせばよいのであって政策的にどちらが優秀、偉いのではない。CO2削減には共によい役割を果たすのだからいずれも正当に評価さるべきである。
 この「ウエーブ・風」と題してのインタービュー記事は、今年の年初から始めて葉梨さんの50人目で年末になった。編集部は来年も1年続けて100人集にすると言う。そうだと葉梨さんは折り返しである。そして一年の悼尾(とうび)を飾って下さった。


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