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(2003/3/17 プロパン・ブタンニュース)

伊藤工機社長
内海二郎氏
バルク貯層 生産拠点を韓国に

 LPガス供給機器メーカーの伊藤工機は昨年11月に創立50周年を迎えた。昭和63年に5代目社長に就任した内海二郎氏は、社長就任時には売上高35億8850万円の会社だったが、年々売り上げ記録を更新して昨14年度は76億2600円に達した。このように堅実な成長を遂げたのは同社が多年培ったガス供給技術と供給機器の開発力、そしてメンテナンスまでをシステム化して顧客の満足を得たからである。また、内海社長は業界をよく歩く。
 筆者も取材のために現場によく出かけるが、内海さんとはしばしば鉢合わせする。内海さんがお客に自社の製品やシステムを説明する様を見ていると、売らんかなではない。お客の立場に立ってなぜこのシステムが必要か、この器具が有効かを説いている。社内ではシステムの標準化と機器製造コストの低廉化を追求してやまない。新バルク供給システム時代の到来とみるや韓国に着目して、釜山のポスコ社(旧浦項総合製鉄)から材料の鉄板を調達、また同じく韓国の貯槽メーカー・ダイムポーラー特装に出資して新工場を作るなどバルク貯槽の低廉化を図って意欲的である。
バルクシステム時代の到来
 昭和52年以来バルク供給調査団は供給機器工業会の榎本欽一氏等を中心に数次にわたって欧米、カナダ、オーストラリア、ハワイ等に派遣された。調査団には参加して各国のバルク供給の実態を把握していたが、最近にいたって規制緩和が進み、平成10年には富士工器のバルク貯槽専門工場である上海富士工器ができてバルクシステムがにわかに活気づいた。そして今や完全にバルク時代になった。
 このように急激にバルク時代が来るとは予想しなかったと内海さんは言う。初めは既存の設備には手をつけず新設から始められたが、最近は既設の供給設備もバルク化が進んでいる。スタートの頃は500キロや980キロ貯槽だったが、300キロ、150キロの小型貯槽も出て利用し易くなった。伊藤工機のバルクシステムの販売は、平成12年度からだが、その実績は12年度が1300台、13年度が1900台、14年度が3000台、今日まで累計6000台を超した。バルクローリー車(2.9トン車)1台を稼働させるには80〜100カ所にバルク貯槽を配置して月に200トンのLPGを配送せねばならない。この経営計算を成立させるためにLPG販売会社のバルク貯槽の設置に拍車がかかる。伊藤工機の得意分野である自動切り替え方式の集合装置がバルクに変わっていくのであるから自動切り替え、高圧ホース、G庫(ガス容器収納庫)の販売に影響がでる。そこでバルクに調整器を付けての販売に力が入った。
バルク・マイレージキャンペーン
 伊藤工機のバルク戦略は、バルクに調整器を付けて販売する。さらにベーパーライザーを乗せる。バルク用漏えい検知ユニットや耐震遮断装置等も合わせて販売するシステム化である。これはプラントエンジニアリングをやっていたからできたのである。これらのシステム機器は自社製の貯槽以外にも販路を広げた。
 さらに今年度から税制が改正され、これまで10万円までの少額減価償却資産枠が増額され、バルク供給設備もこの対象に組み入れ易くなる。これはLPG業者のバルク化への投資意欲を促進するに違いない。これを機に「バルク・マイレージキャンペーン」(15年3月〜8月31日)を始めた。バルク貯槽、バルクシステム機器の購入を点数化して100点、150点、200点、300点に達すると景品が当たるもので、300点の景品は韓国研修旅行(2泊3日)、あるいは商品券10万円である。同キャンペーンの案内状に「提携先の韓国・ダイムポーラー特装株式会社に資本投資をして新工場を建設、より高品質の製品をこの3月から開始した」と並々ならぬ意欲を示している。
韓国・ダイムポーラー特装に投資
 韓国製のアルミ容器を輸入販売していた内海社長は、平成11年ころには同アルミ容器を年間2万本ほど販売していた。そんな関係で内海さんは韓国によく出張した。釜山にある鉄鋼会社ポスコ(旧・浦項総合製鉄)が日本のJIS規格を取得していることを知り、かつバルク貯槽の材料の鉄板を安く調達できることを知った。バルク貯槽の製造販売を考えていた内海さんは、ポスコの鉄板で韓国での生産を決意して韓国内の製作工場選びをした。京畿道華城市にあるダイムポーラー特装がLPGのローリー車やアルミやステンレスの特装車をつくっていて溶接技術の信頼性も高いことが分かり、提携を決めた。最近、より高品質の生産のためにダイムポーラーに資本投資をして塗装にいたるまで一貫生産体制を整えた。内海社長は韓国・安養市に韓国ITO株式会社を持ち、日本語も上手な取締役鄭敦泳氏がいてアジアのビジネス情報にも注意を怠らない。かくて伊藤工機は売り上げ100億円に向けて着実な歩みを続けている。

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