住商液化ガスの渡部憲三社長は語る。ＬＮＧをもってプロパンのシェアを食い尽くすことはありえない。道路になぞらえるなら都市ガスは高速道路、一般道はプロパンである。都市ガスは天然ガスになろうが、都市の周辺の市道や町道は無くならないし、これはプロパンの領域である。むしろ怖いのは電気だ。だが、電気にも弱点がある。蓄電できない電気は盛夏に甲子園の高校野球のころの電力最大需要量が日々更新される時期が鬼門だ。これに対してプロパンはＧＨＰによる空調、ガスタービンによるコージェネレーション、燃料電池などの分散電源で寄与できる。住友商事の四国支店長（平成１０〜１３年）の時、住友共同電力（住友化学の子会社）の電力を１０００ｋｗ単位でスーパーの冷凍用や電力多消費工場に電力小売をしたものだ。このように住友グループのエネルギー事業は多岐にわたっているからそれぞれが自分のテリトリーを広げていくと自ずからグループの中で連携できる。最近は規制緩和が進みエネルギー間の垣根が低くなっているのでその組み合わせがた易く行える。
販売店と共に歩み、共に栄える
昨年４月、住商九液ガスと合併して主な営業地域を本州、四国、九州と広げてＬＰガス年間販売量＝５０万９００トン、うち家庭業務用＝３５万２００トン（卸売含む）、工業用＝１３万７６００トン、自動車用＝１万１千１００トン、その他２０００トン、直売消費者戸数＝１０万戸。販売店数＝１２００軒（共納を含む）である。
販売店をゆさぶって直売を増やしていくやり方は採らない。資金的あるいは経営者の老齢化等で営業権の譲渡には応じて結果的に直売が自然に増えている。販売店と共に歩み、共に栄えるは、わが社のモットーである。
よいガス器具をもっと安価に
東芝、日立、松下などの家電メーカーがこぞってＩＨヒーターや電気の給湯器を作って鳴り物入りで宣伝している。住宅展示場ではオール電化住宅が幅をきかしている。われわれもガス器具をもっと売らねばならない。器具を売らなければガスの消費は伸びない。これは古くて新しい原則である。リンナイの山崎善郎社長もこの点で危機感を募らしていたが、私は見かけのいいガステーブルをもっと安価に提供して欲しいと頼んでおいた。またガス器具を売るために都市ガス会社とＬＰガスの共同戦線を組んだらいい。炎が見えないＩＨヒーターは安全性に欠け、危険である。
住商ガス会の研修会
住商ガス会は販売店で組織され、全国に２０のガス会がある。そして販売店の営業活動をサポートしている。とくにその研修会は実際的で販売店間で評価がよい。
平成８年から同１３年まで本社の企画開発部長としてこの研修会を担当した白川さんは次のような諸テーマで研修会をしたと書いている。１４条書面の書き方、所有権と償金請求権（これは無断撤去をめぐる問題）、消費者契約法、切り替え業者対策、無断撤去禁止の法制化、オール電化対策、燃料電池、品質確保法、新エネルギーＤＭＥ、地震について等、年間５０回５五年で２００回超を行ったとある。
その内容は実際的で分かり易い。販売店はこれによって知恵と力を授かったに違いない。その実例を１４条書面の書き方に見てみよう。
「ガス配管についての覚書」
平素は私共◯◯◯◯◯のプロパンガスを御使用賜り感謝申し上げております。さて、貴方様がお住いの家屋の配管（ＬＰガスメーター出口から末端閉止弁までの消費設備）は、弊社がその設備及び工事代金を現在負担しておりますが、貴方様がご都合により他のガス供給業者に変更される際は、別途交付申し上げております「ＬＰガスご利用のお知らせ」（１４条書面）に記載の「ＬＰガス設備確認書」の精算方法に基づき、経過年数に応じた残存価額を私共にお支払い戴きますので予めご了承方お願い申し上げます。なお機器類についても同様に精算させて頂きます。
年 月 日
上記、了承致しました。お客さま署名印
上記、確認させて戴きました。弊社印
といった具合である。
ＩＨこんろについても、Ｑ「ＩＨこんろって本当に安全なの？」Ａ「ＩＨこんろのトッププレートは使用後三十分経っても温度が八十度Ｃあることがあり、触れるとやけどすることがあります」とある。このような説明に販売店は納得して自信を持って対処している。
ただ強いばかりではない
昭和４４年、一橋大学を卒業して住友商事に入社した渡部社長は、初め鉄鋼販売に携わり、後に燃料本部に転じ、海外勤務はパリ駐在やクウェート事務所長をした。平成８年、本社燃料本部原油・製品貿易部長の時には市況の変動が激しいナフサの輸入にナフサ船を所有して対処し、成功した。平成１０年に四国支店長に就き、平成１４年に住商液化ガス社長に就任した。
剣道五段、ドライバーは３００ヤードを飛ばす剛の者だが、ただ強いばかりではなさそうだ。
プロパン・ブタンニュース２００３／４／７ ナリケンがゆく ウェーブ・風 話題と肖像画
