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(2003/6/30 プロパン・ブタンニュース)

日本LPガス協会会長 出光ガスアンドライフ社長
長尾哲哉氏
日団協、「会長サミット」開く

  出光ガスアンドライフ(iGL)の長尾哲哉社長は、十七日に行われた日本LPガス協会の平成十五年度定時総会で同協会会長に就任した。この対談記事はまことにタイミングよく総会の翌日にiGL本社をお訪ねしてお話を聞いたものである。前日、総会後の記者発表で会長として十五年度の日協事業計画を述べられた。また、長尾社長は一昨年十月にiGLがスタートしてから折にふれ会社のビジョンを説明して来た。今ここでその繰り返しをやろうというものではない。なぜそうせねばならないかをお訊ねしたのである。さらに、長尾さんのお人柄にせまれればよいと思った。
 長尾さんは昭和二十二年生まれ五十六歳、京都の人である。四十五年名古屋工業大学工学部卒、同年出光興産入社。六十一年広島支店潤滑油課長、六十三年潤滑油部潤滑技術二課長、平成六年釧路支店長、八年潤滑油部次長、十一年ホームエネルギー部次長、十二年六月参与ホームエネルギー部長、十三年十月出光ガスアンドライフ社長。この経歴でも分かるようにLPGの新時代を切り開くに相応しい若い社長であり、協会長である。ホームエネルギーにたずさわって僅々五年と謙遜されるが、LPG事業をとりまく条件を見る眼は厳しく、その対応は論理的で説得力がある。
LPガス需要想定
 今年三月、資源エネルギー庁は、平成十五年から十九年までのLPガス分野別需要想定をした。それによると平成十五年度は千八百三十五万一千dで、対前年比〇・九%減少、平成十九年度は千八百八十九万六千dと年率(十四〜十九年度)〇・四%増加である。この需要想定が厳しいものになっている背景にはサウジアラビアのLPガス輸出価格制度CP制が乱高下し、最近は高値で推移して特に産業用でLPGの競争力が低下していることを見ねばなるまい。原油ベースでカロリー対比LNGの一・六〜一・七倍である。イラク情勢からこの三月のCPはプロパン三百八十五jと高値を更新した。また、都市ガス事業は現在、年間契約ガス使用量百万立方b以上の需要家まで自由化されているが、天然ガス利用促進の見地から年間契約ガス使用量五十万立方bまで自由化範囲の拡大が平成十六年を目途に進められている。さらに同使用量十万立方b以上の需要家まで自由化拡大が平成十九年を目途に目論まれている。年間使用量百万立方bは、LPG換算月間九十dに当たる。これが十万立方bになればLPGはますます売り難くなる。さらにIHクッキングヒーターやエコキュートをもってする厨房や給湯分野に電気の攻勢もある。
マイクロ・コージェネはFCへの掛け橋
 LPGの需要拡大対策として大いに期待できるものにマイクロコージェネレーション・システムがある。一`hのLPG仕様のハードをこの秋口までに出すとメーカー筋は言っている。これは熱と電気を取りだし、効率八〇%と完成度が高い。系統連系も容易で手続は簡単である。施工性も楽で、設置性もよい。第二種電気工事士の資格さえあれば主任技術者はいらない。官庁関係は消防設置届け出だけでよい。長尾さんはさらに次のように付け加えた。
 現在、給湯器まで使っている家庭のLPガス年間消費量は平均三百`c弱である。これがマイクロ・コージェネを設置すれば九百`cになる。出光ホームガスセンター(IHC)を中核に全国各地に構築した四十万軒におよぶ二十四時間モニタリング組織にのせて普及を図る。エンジン系は熱出力が大きいから浴室乾燥、床暖房などお湯の利用が大切である。そして出光興産グループは松下電工が開発中の一`h級燃料電池(LPガス仕様)に協力・支援体制をとっており平成十七年に商品化を予定している。このガスエンジンによるマイクロ・コージェネは燃料電池への掛け橋だと言う。
業界はワン・ボイスで
 日協の会長が必ずしも日団協(日本LPガス団体協議会)の会長でなくてもいいと思うが、会長になったらいろいろな役に就けられた。日団協会長もその一つだ。LPガス業界の流通三団体の日協、全卸協、日連とスタンド協会の四つの団体職員は合わせて五十一人である。それぞれの団体が管理部門、広報、保安など同じような仕事を重複してやっている。上手に整理すれば半分か三分の一になるかも知れない。組織に持ち帰って論議してでは時間的ロスも大きい。五十一人が多すぎるというのではない。日本ガス協会の職員は八十一人である。電事連はもっと多い。五十一人を有効活用してワン・ボイスで闘う組織にせねばならない。
 その意味で日団協「会長サミット」を行う。その第一回会議が七月九日に開かれる。卸協会長の牧野明次さんは日協のメンバーでもあるし、日連会長の高須國廣さんは名うての論客、スタンド協会長の米田正幸さんも貫禄十分の経営者。業界のシングルボイスを形成したい。
再投資可能な収益レベルを
 平成十三年度に元売十八社は管理費を前年比で合計百四十七億円削減した。それでも営業利益は十八社合計で四十七億円、前年比九億円減だった。五万d冷凍タンクの建設費は貯槽だけでも三十五億円は掛かる。付帯設備など運用までとなれば百十億円くらいが必要である。これだけでも元売に再投資可能な収益レベルをというのは妥当な言い分だろうとインタビューを結んだ。

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