ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/8/4 プロパン・ブタンニュース)

ミツウロコ社長
田島 直氏
お家芸「環境適応」の企業観

  ミツウロコは全国の三千店に卸し、直売三十一万軒におよぶ企業集団である。
 さきごろ開かれた全国ミツウロコ会総会で田島直社長は二十一世紀に勝ち残るために@LPガスのコストダウンと直売強化A家庭用コージェネレーション等の分散型電源の普及B生活サービス業への脱皮−を強調した。対談ではガスコージェネだけではなく、太陽光発電や風力発電事業等の積極的な取り組みも語られた。
分散型電源・家庭用コージェネの普及
 十`h以下のガスエンジン・コージェネレーション・システムが開発された。九・八`h、五`h(ヤンマー)、八`h(三洋)、六`h(アイシン)、一`h(本田技研)。そして大きなものでは二百`h以上の三菱重工がある。これらエンジンコージェネはGHPの派生商品で完成度が高い。信頼性、メンテナンス性はGHPと同等、系統連系が容易で手続きも簡単、施工性、設置性がよく、主任技術者はいらない。
 ミツウロコは家庭用コージェネレーションを業界のパイオニアとして推進する。これまでにタクマ二十八`hのマイクロガスタービン・コージェネを埼玉県行田市のスーパー銭湯に、ヤンマー二十二`hを工場に、アイシン六`hをホテル等に設置したが、これらの経験を集約して今後は家庭用一`hエンジンコージェネの販売をグループ全体で推進する。発電機付きエンジン給湯器といった考え方で臨みたい。
太陽光発電や風力発電事業にも意欲
 川崎市のゼネックス(田中駿一社長)はLPガス直売の子会社だが、シャープの代理店として太陽光発電を積極的に販売している。三`h発電で屋根七坪にパネル二十四枚が必要である。設備費は工事費込みで二百万円程度である。一`h当たり九万円の補助金がある。仕入れ資金は十五年ローンで借り入れる。一般の家庭で最近はパソコンの使用も多く、電気代は毎月二万円として年二十四万円。系統連系をして売電と買電がツーペイだから二百万円÷二十四万円=八・三年で償却できる。これを都市ガス供給地域に近いところで販売する。自分のプロパン需要を食わぬためである。
 お話を聞きながら最近よく言われる言葉「エネルギー間の垣根が低くなって競争が激化する」を思い出した。日ごろ耳にタコができるほど聞かされているこの概念的表現をミツウロコでは新エネルギーの太陽光発電の普及によってプロパンの領域を守り、電力会社のオール電化攻勢に防壁を作る試みを広げようとしている。面白いことに売電メーターと買電メーターを常に見比べている主婦の節電意識が向上したことである。因みにわが国の太陽光発電の導入量は、平成六年に政府の助成制度が創設されて以来急速に拡大して今や世界一の水準にある。二〇一〇(平成二十二)年の太陽光発電の設置目標は四百八十二万`hである。
北海道と千葉県で風力発電
 平成十三年十月、北海道天塩町でミツウロコとしては初の風力発電を竣工した。ドイツのノルディックス製単機の定格出力八百`h×三基で総発電出力二千四百`hである。年間総発電量は約六百三十一万`h時である。年間約千三百世帯分の電気使用量を賄える。千葉県飯岡町の風力発電所は、平成十四年六月に竣工、デンマークのヴェスタス製の単機定格出力八百五十`h×五基=総発電出力四千二百五十`h、年間総発電量は九百三十万`h時である。天塩の全発電量は北海道電力が、飯岡は東京電力がキロワット当たり十一円で買い取る。十七年契約である。建設費は一基二億円程度だが、建設費の三分の一は補助金がでる。そして一基で九百九十平方b(三百坪)ほどの用地がいる。このような条件だから収支計画は建て易い。しかしながら風況調査、人家がないこと、送電線が近くを通っている、工事がし易い、渡り鳥の飛来コースでない等の条件を満たせる所はそう多くはない。現在、全国に二十カ所、五十万`hくらいしかなく、陣取り合戦の様相を呈している。ミツウロコはその一〇%五万`hほどを実現したいと望んでいる。
富士山のパナジウム天然水の販売
 水道水に抵抗感をもつ人は、ある調査によると六六%という。水を全く買わぬ人はない。スーパーでは水の特売日をもうけて一g百二十五円の六本入りケースで売っている。生活サービス業を標榜するミツウロコがこれに着目して、糖尿病によいという富士山のパナジウム天然水の販売に踏み切った。一箱二十g二千五百円で月二回、五千円を各家庭にはサーバーを配置して配送販売する。
 ミツウロコ三十一万軒の直売顧客のうち当面五万軒くらいから始めるという。これによってLPガスと変わらぬ売り上げが継続的に期待できる。天然水の販売だけが生活サービス業への脱皮ではない。アパートの大家さん向けのセミナーの開催、税務対策やリフォームがその内容である。また、三千店の卸先の中には一定のリベートを受け取って業務を委託するものも増えている。こうしてミツウロコはLPガス料金のコストダウンと直売の強化を着々と進めている。

 プロパン・ブタンニュース2003/8/4 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む