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(2003/9/15プロパン・ブタンニュース)

ノーリツ社長
竹下克彦氏
「安いが一番」ではリフォーム客は掴めない

 ノーリツの竹下克彦社長は、応接室の壁に懸かっているSB(システム・バス)「ユパティオSUAグラシオ」が平成十年に日経産業新聞から贈られた優秀製品賞の賞状を指して、この製品開発の裏話から始めた。
 「企画の手がかりは現場にある」の鉄則にしたがって、企画室の担当者は東京ガスのサービスショップに二カ月張り付いた。かくて消費者の視点で新しいSBのアイデアを得たのである。
 多くのお客の声はお風呂のリフォームをすると狭くなる。もっと広くしたいというものだった。そこでベンチ形状の浴槽で基礎をかわし、出窓の形で外部に広げることで建築基準法に触れずに〇・七五坪の浴室を一坪に、一坪を一・二五坪に広げることに成功したのである。浴槽が四十a拡がれば、これまで脚を縮めて入浴したが、ゆったり脚を伸ばして入浴できるようになった。
 この春から発売した寝浴のできる浴槽も顧客の視点から生まれた。寝浴は心臓を圧迫せず、心からリラックスできて、温泉好きの日本人には最適である。グラシオの方法は浴室ばかりではなくキッチンゾーンでも応用できる。
 平成十四年の売上高(連結)千七百一億円、経常利益七十八億円の会社の社長さんだからわが国経済の現状は、だとか国際情勢はなどから始まるのではないかと考えていたが、いきなり「グラシオ」から始まったのでこの社長さんは、本音で話してくれるなと直感した。そして風呂用機器を中心に温水機器、システムバス、システムキッチン、洗面化粧台のメーカーとして今、何をなすべきかを熱っぽく説いた。
統計に見る温水機器の需要動向
 竹下社長はノーリツの主力製品である温水機器の需要動向を次のように解析した。この機器の燃料は、都市ガス、LPガス、石油、電気などがある。そして以下の数字は、ノーリツだけの数字ではなくすべての燃料による温水機器の総需要の統計である。需要のピーク一九九七年と昨年二〇〇二年を比較して、九七年=四百十万三千台、〇二年=三百八十四万台、九七年比九四%、二万六千三百台減。電気は、九七年=二十一万二千台、〇二年=二十五万台、九七年比一一八%、三万八千台増である。新築住宅件数の比較は、九七年=百四十八万五千件、〇二年=百十六万六千件、七九%で、三十一万九千件減った。温水機器の需要台数の既築の構成比は、九七年=二百四十二万台(六三・八%)、〇二年=二百四十六万台(六九・六%)である。これによって減ったのは新築需要で、取り替え需要は減っていないことが分かる。温水機器の需要を金額ベースで比較すると九七年二千七百五十六億円に対して〇二年は二千四億円、七百五十二億円減(七三%)である。台数で六%減が金額では二三%減とその差が著しい。
機器販売はLPガス事業者の基幹ビジネス
 〇・七三(金額)÷〇・九四(台数)=〇・七七。この式は一件当たりの売り上げ単価が〇・七七に下落したことを示すものである。何故こうなったか。
 九〇年代までは浴室から操作できるリモコン全自動給湯器など生活改善のための製品開発を行って来たが、九〇年代に入ってからは価格競争になってしまった。また、都市ガスやLPガス事業者は、機器の収益性や事業性にこだわりが少なかった。ガスで企業を成長させようとする余り機器の代金はガス代にのせて回収すればよいという考え方が生じた。然し最近は大手都市ガス会社でもガスで、機器で、アフタで、リフォーム等の生活産業で顧客密着を図って収益をあげねばならないとしている。LPガス会社にとっても機器販売は基幹ビジネスである。
リフォーム需要の掘り起こし
 温水機器は自動車のセルシオやシーマとは違う。一見して単なる四角の箱である。客に訴えるのにこの箱は二十三万円、この箱は二十八万円と値段だけではセールス・プロモーションにならない。全自動給湯器で生活がどれだけ変わるか、あなたを癒し、寛ぎをこの箱の中の関連機器が構成していることを説明しなければならない。安いが一番でやっていれば、九七年の七七%の需要金額はさらに低下するだろう。
 然し既築のリフォーム需要は二百四十六万台と減っていない。既築のリフォーム需要は、痛んだから取り替えるではなく、癒し効果など新しい機能を備えた機器への向上意欲が顕著である。温水機器は既築のリフォーム需要をどう掘り起こすかにかかっている。
エンドユーザーの言葉で
 竹下社長はノーリツのホームページを開いてグラシオをクリックした。そしてわが家で家内や娘に「温水器の箱」の話をしてもお父さんの話は分からないと言う。そこで視聴覚に訴えたこのホームページを見せたらよく分かった。業界言葉ではなくエンドユーザーの言葉でプロモーションをしなければと結んだ。

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