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(2003/11/3プロパン・ブタンニュース)

アイシン精機専務
千賀哲郎氏
アイシンL&E本部の国際感覚

 アイシン精機の専務・千賀哲郎さんは現在、同社L&E営業本部を指揮している。同営業本部は、アイシン精機が手がけている自動車部品以外の商品のセールス・マーケティング・センターである。どんな商品を取り扱っているかというと、扱い高の大きい方から@GHP、コージェネレーションなどエネルギーシステム機器AシャワートイレBベッドCサッシ、電動シャッターDリフォーム事業E介護機器F家庭用ミシン、刺繍機器G人工心臓やバルーンカテーテルなど医療機器H半導体の製造に使われるドライポンプIペルチェ、そしてJTSS(トータル・ソリューション・システム)による経営コンサルティング業務などである。
 千賀さんは、この部署に就くまで英国に九年、ロサンゼルスに八年、シカゴに五年勤務した。それだけにその発言の一つひとつに国際感覚が鮮明である。
 今日、エネルギー問題は国際問題である。千賀さんは、米国ニューヨークの停電騒ぎは、ニューヨークだけではなく、地方の諸都市でも電力インフラの老朽化もあって需要家は発電機を買って停電に備える現象が生じている。目を欧州に転じればロシアから天然ガスのパイプが張りめぐらされて、フランスなどでも原発だけでは駄目で、ガスの冷暖房の必要が出てきた。中国では電気の需要が旺盛になり、とくに中国北部では冬季の需要が多いので、夏、冬の需要の格差が大きい。そこでGHPによる冷房が注目されだしている。また、天津市では環境の観点からモデル都市としてGHPの導入が検討されている。このような世界の動きのなかで、わが国で「オール電化」が喧伝されるのは時代に合いませんねと言う。
GHPのOEM供給
 最近わが国の空調市場でEHPメーカーがGHPを無視できなくなっている。EHPメーカーの特約店には需要家からGHPの引き合いが多い。換言すればエネルギーのベストミックスがそれほど進んだということだ。これは大きな変化である。EHPメーカーの求めに応じてアイシンはOEM生産をしている。OEMのOは独創的(オリジナル)、Eは設備(エクイップメンツ)、Mは製造者(マニュファクチャラー)である。直訳すれば、独創的な設備の製造者である。アイシン精機の正式文書では「相手先ブランドによる生産」とあるが、筆者の直訳もOEMの本質を捉えているような気がする。アイシン精機なればこそできることだと思う。
韓国サムスングループとの販売提携
 アイシン精機の韓国でのGHP販売は、二〇〇一年度からサムスングループの母体企業であるサムスン物産と販売提携を結んで、主に民間物件向けにアイシンブランドのGHP販売を行ってきた。今年八月さらに韓国の電気式エアコン(EHP)でトップシェアを持つサムスン電子とGHPの販売契約を結びOEM供給をすることになった。既に十六馬力と二十馬力のGHPの納入が開始された。そしてこのOEM機の室内機はサムスン電子製である。これは大変よいことで、何でも一人でやればよいというものではない。値段さえあえば日本から延々と船で運ばなくともよいと千賀さんは言う。従って韓国にはサムスン物産を通じてアイシンブランドのGHPとサムスン電子ブランドのGHPが流通することになる。これによってこれまで年間約千五百台が販売されていたが、二〇〇五年度には約五千台の販売目標が見込まれている。そしてアイシン精機は韓国を起点にアジア地域への販売強化を図るとしている。
TSSのコンサルティング
 取引銀行から銀行員が出向して経営改善を図ることがあるが、アイシン精機がTSS(ト ータル・ソリューション・システム)でこれを行う場合、現場に入って@ラインに五人ついているのを三人にしたり、Aリードタイムを短縮したり、B工程内在庫を少なくしたり、C多能工すなわち一人であの機械もこの機械も扱えるように改善する。これによって生産性が向上して何千万円も収益が上がれば、その何%をいただく。オーナーが息子さんに代替わりしたときに息子さんに体感してもらうためにTSSを導入した例もある。またTSSを十年も続けている会社もある。安全靴のみどり安全、御幸毛織、シンガポ ールファッション等がある。百貨店、スーパー等の売れ筋商品の小ロット切り替えによって不良在庫を無くする等TSS導入会社は千社を超えている。TSSを始めると必ず抵抗勢力に遭遇する。それらの人はアイシン精機の工場で体験させて肌で感じさせてシンパを作ると言う。
 千賀さんは、英国のイートン校の卒業生は戦争があると死亡率が最も高い。それは率先して国民の模範たらんの精神がそうさせるのだと、指導者たるものはかくあるべきと結んだ。

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