ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/12/1プロパン・ブタンニュース)

矢崎総業副社長
松崎謙蔵氏
ネットワーク+人のLPガス事業

 矢崎総業の副社長・松崎謙蔵さんは、同社のエネルギー機器本部長である。現在のガス事業、わけてもLPガス事業をどう見ているか、これに対してガス供給機器のトップメーカーを標榜している矢崎総業はどのように対応するかを聞いた。
 ここで矢崎のエネルギー機器は、どのようなものがあるかを紹介しておこう。[ガス機器]=ガスメーター、LPガス警報機(アロッ子)、都市ガス警報器、遮断・伝送用コントローラー、圧力調整器、高圧・低圧ホース、ガス栓、バルブ、高圧パイプ、遮断弁、十年セット機器、支柱ユニット、容器収納庫、LPガス強制気化装置(アロライザー)、バルク貯槽及び関連機器、LPガスマルチセキュリティーシステム〈ブルドック〉。[空調機器]=二重効用吸収冷温水機〈アロエース〉、温水焚吸収冷温水機、ファンコイルユニット、太陽光・太陽熱発熱発電機〈ハイブリッドソーラー〉、太陽熱集熱器〈ブルーパネル〉、太陽熱温水器ゆワイター〈ゆ太郎〉、住宅用ソーラー〈あつ太郎、あっちっち、スーパーあっちっち〉、金型冷温調機〈アロサーモ〉等々である。
 LPガス業界の自由化は 道半ば
 今日のテーマはエネルギー機器だが、矢崎総業の事業範囲は広く、ワイヤーハーネスや自動車用メーターなど自動車用機器の製造・販売では国内はもとより世界の自動車メーカーに採用され、ワイヤーハーネスのシェアは世界の四〇%以上、世界の車の二・五台に一台が矢崎のワイヤーハーネスで走っている。その他に電線部門もある。これらの分野、とくに自動車工業では国際化、自由化が進み、わが社はこれに即応してきた。
 自由化の波はエネルギー事業にもひしひしと押し寄せてきた。エネルギー資源を海外に求めるわが国の場合、資源を海外から輸入するLPガスの元売段階では自由化の国際的動向に対応しているが、輸入LPガスを国内の客に販売する仕事ではいまだしの感を免れない。換言すれば、資本の自由化は進んでも事業の国際化が同時に進むかは疑問だ。LPガスの自由化も、道半ばといったところである。
 安全のコストはかさむ
 LPガスも都市ガスも、電気も垣根がとれた。これらエネルギーの客との繋がり方は、LPガスは人で、都市ガスはパイプで、電力は電線で繋がっている。そこでLPガスが激化するエネルギー間の競争に打ち勝ち、自分の事業を守るためにまず考えなければならぬことは安全性の確保である。保安台帳の整備など行政の立ち入りも厳しくなろう。保安のための設備投資も大きくなる。このような状況に供給機器メーカーは使い易く品質のよい器具を提供しなければならない。
 タイミングよい機器の開発
 何のための自由化か。消費者がどのエネルギーを択べば一番有利か、その選択の幅を広げるために“垣根のトッパライ”が行われるのである。別の言い方をすればコージェネレーション・システムによって昼間の高い料金帯の電力は使わずに安い料金帯の深夜電力を利用するなどエネルギーのベストミックスを図ることができる。そのような中でガス空調機に発電機をのせてコージェネを行う。最近は十`h以下のマイクロコージェネも出現して燃料電池に行きつくまでのブリッジとしての役割を担わせようとしている。
 このような利用を促進するには利用機器のハードとソフトを確立しなければならない。それはメーカーがなすべき課題である。それがなければエネルギーのベストミックスは、話ばかりで事態は一向に進まない。
 消費者の囲い込みと 他のビジネスの構築
 エネルギーを通して消費者を囲い込んでいるのだから、このネットワークを広げて家庭の中に他のビジネスを構築することが大切である。囲い込みの方法は千差万別だが、ネットの上にハードを置くのである。供給機器を単体で売る時代ではない。
 ガスメーターの使われ方を考えてみよう。ガス消費量の計量だけではなく、保安を主軸にした家庭の中の情報盤、ホームセキュリティーの情報盤としてのメーターを考えるべきである。メーターと情報盤をドッキングさせるのである。ホームセキュリティーや介護の問題をネットワークにリンケージさせるのである。このように見てくると、ガスメーターの機能が変わってきたことが分かる。
 むすび
 自由化・規制緩和をキーワードにLPガス事業の新たな展開を熱っぽく説いた松崎副社長は、LPガス事業はネットワーク+人によって客との繋がりをもつ事業である。地域に密着した事業であるから地域の特性を尊重せねばならない。今後とも総合力を生かし、多様な提案をしていきたいと述べた。


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