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(2004/7/12プロパン・ブタンニュース)

東洋ガスメーター社長
水越二郎氏
水越流メーターづくり中国でも開花

 東洋ガスメーターの水越二郎社長は、同社がガスメーターの製作をどのように始めたか、から話してくれた。昭和三十年ころ富山県新湊に天然ガスが噴出した。日産四千立方bほどだったが、これを富山市の日本海ガスに導管で送った。水越二郎社長のお父さんの孝二郎氏はこの天然ガス事業に取り組んで日本海ガスと関係ができ、ガスメーターの必要を痛感した。そこでガスメーターの研究・製作のために社長の兄の現会長である水越孝氏と二郎氏が父親のもとでガスメーターの研究・製作に携わることになった。二人は元々技術系で孝会長は大成建設で機械の仕事を、二郎社長は岡山のクラレでプラントの設備・設計の仕事に従事していた。兄弟二人でお父さんの名前を半分ずつもらっているのも面白い。
 会社沿革の冒頭部分を抜書きしてみよう。昭和三十三年四月、日本初のロータリーバルブ方式M型高性能ガスメーターの開発・生産。昭和三十七年八月、東洋ガスメーター株式会社設立、東邦ガス向け小型都市ガスメーター生産開始、生産工場拡大。昭和四十年LPガスメーターの生産開始。昭和四十五年二月、国内唯一の温度補正装置付ガスメーターの開発・生産。
 会社沿革の冒頭のたった三行の抜粋だが、東洋ガスメーターの技術的伝統とガス計量器メーカーとしてのこだわりが如実に語られている。
ロータリーバルブと温度換算装置付メーター
 昭和三十三年にガスメーターの研究を始めたころのメーターはいわゆるB型メーターで、濃いグリーン色の大きなものだった。これをコンパクトにするには内部機構を簡単にしなければならない。東洋ガスメーターのロータリーバルブの開発は、構造をシンプルにし、性能も安定させた。今日では殆どのLPガスメーターメーカーがこれを採用している。
 「温度換算装置付メーター」は、数あるガスメーター・メーカーの中で東洋ガスメーターだけが行っている技術である。しぼんだボールを暖めるとふくらむ。それはボールの中の空気が暖められて膨張するからである。LPガスも温度によって膨張したり収縮したりする。ガスメーターは、温度によって変化したLPガスの「みかけの体積」を計り、使用量としてカウンターに表す。温度換算装置付メーターは、その「みかけの体積」を「真の体積」に換算して表示するメーターである。物理のボイルシャールの法則は温度が一度C下がると、零度CでのLPガスの体積は二七三分の一だけ小さくなる。これを絶えず一五度Cでの体積に換算する。これによってLPガス事業者は消費者に推定値の体積ではなく、真のガス消費量の体積を示すことができる。このような温度換算装置付メーターを東洋ガスメーターは昭和四十五年に開発・生産した。
 さらに、新技術によって時間帯別使用量の分別計量などメーターを通してLPガス利用の拡大を図ったり、集中監視ではIT技術と通信手段を駆使した監視センターを設置してLPガス事業者から委託業務も行っている。また、LPガス業者の自社専用センター方式には集中監視システム(トヨテックス)を設置して保安業務を充足できるようにしている。加えて、将来の技術を目指して、超音波メーターの開発も進行中である。東洋ガスメーターの経営理念「3C」=チャレンジ(挑戦)・コンビニエンス(利便性)・コンプリート(完全な品質)、経営目標の基本としている「イノベーション」と「顧客の創造」は、水越社長の話の隅々にまで貫徹している印象を強くした。
中国・丹東ガスメーター工場
 中国遼寧省丹東市に丹東岩谷東洋燃気表有限公司というガスメーター製作会社がある。この会社の略称は「DIT」である。Dはダントン(丹東)、Iは(岩谷産業)、Tは(東洋ガスメーター)である。出資比率は、東洋ガスメーター三五%、岩谷産業一五%、柳忠安(現地のガスメーター工場主)五〇%である。
 九年前に北京で行われたLPガス展示会で柳忠安さんに会った水越社長は、この人柄なら一緒に仕事ができると確信したと言う。爾来いく度となく互いに丹東、富山を往復して水越、柳は親交を深めた。この間、岩谷産業のあっせんも少なくなかったと言う。
 こんなこともあったと水越社長は述懐した。柳さんは腎臓結石の持病があり、富山に来たときその発作で苦しんだ。結石を破砕する機械がある病院は少なく、探し回って五軒目の病院でやっと柳さんの苦痛を救った。かくてDITの契りは一層確固たるものになった。
 現在、水越社長はDITの董事長(社長)である。東洋ガスメーターは、DITの生産技術、開発面全ての技術指導を行っている。そしてDITは、年間十五万台のガスメーターを製作している。メーター一台のコストは、日本円で千二百円である。DITは中国のLPガス市場に必要とするガスメーターを供給する目的で設立された合弁会社である。ボンベを担いで高いビルに上がるわけにもいかぬのでLPガスメーターの普及は旺盛のようだ。中国ではアパート、マンション等の住人にプリペイドカードとガスメーターをセットにした販売が盛んだと水越さんは対談を結んだ。筆者は、水越社長のお話を聞いて短歌一首を詠んだ。
 越中に 世界をにらむ 大人(うし)ありき 夏木(なつき)の上を 涼風(すずかぜ)の吹く

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