ウェーブ・風 話題と肖像画 ナリケンが行く
(2004/8/2プロパン・ブタンニュース)
根本石油社長 | |
根本一彌氏 | |
隅々に行き渡るお客様志向 |
マルイチグループの代表・根本一彌さんを福島県郡山市の根本石油本社に訪ねた。根本さんは、平成十一年から福島県LPガス協会長でもある。乗り合わせたタクシーの運転士がうちの社長のバイタリティーはどこから来るのか聞いてみたいと問わず語りに言った。その話を聞きながら、根本さんはLPGやガソリンスタンドの他にタクシー会社も経営しているし、酒類の販売、フードネットワーク「牛角」を四店舗、コンビニのローソンの展開、さらにマルイチITグループとしてコンピューター販売、NTTドコモショップの運営など幅広く経営なさっていることを思い出した。
最近の電力の攻勢は厳しく、LPガスの消費者をターゲットにしている節(ふし)さえある。攻勢をかけている電力の側に危機感があって、攻められているLPGの側はさしたる危機感がないのは問題だと考えている筆者は、乗り合わせたタクシーの運転士の言葉ではないが、根本社長の元気はどこから来るのかを教わりたいものと訪ねて来たのである。
根本社長はこう話し始めた。LPガス業界は、ついこの間まで「保安を売る」と言っていた。危ないガスです。気を付けて使って下さい、というのである。警備保障会社ではあるまいし、安全を勿体(もったい)つけて売って誰が買うか。それではLPガスを使わせない方がよい。だが、燃料商は我が家の本業だからやめるわけにはいかない。そこで二十年ほど前にわが社は独自で「LPガス安全宣言」を出してホームガス化フェアを行った。最近は電力攻勢が厳しいのでそんなことを言っても居れなくなった。もし電力攻勢が無かったらいまだに私一人で騒いでいたことだろう。協会長になってからも毎年、「LPガス快適・真心キャンペ ーン」を続けた。今年も九月一日から三カ月間、県下の販売店千社が参加してLPガスの利便性、安全性、快適性そしてクリ ーンなエネルギーであることをアピールする「快適・真心キャンペーン」を実施する。LPGのよいところをもっと引き出さなければならない。食文化としての日本食も中華料理も強い火力を要求する。LPガスは最適である。電磁こんろが逆立ちしても追い付くものではない。湯まわりも貯湯式では一度お風呂に入ると次の人はぬるくて入れない。やっぱりガスだ。オールガス化ではない。エネルギーのベストミックスを図るのだと言う。
株や土地に手を出さず
隋分手広く事業を経営なさっていると根本社長の経営観に話をむけたら、ガソリンスタンド、LPガス事業、オートガススタンドのエネルギー部門、タクシー・バス部門、コンピューター販売部門、酒類販売・食品・雑貨小売・料飲店店舗開設支援事業部門、レストラン・喫茶店・保険代理店部門に大別できる。それぞれ取り扱う商品名を冠した会社ばかりで何をする会社か一目瞭然である。従業員数は、エネルギー部門=百六十人、タクシー・バス部門=五百五十人、酒販・食品雑貨、料飲店舗開設支援=百人、コンピュ ーター部門=四十人、計八百五十人である。どの会社も自分の会社の仕事を守るのに精一杯で他に手を出す余裕はない。一億総不動産屋・総投資家といわれた時代にも土地や株に一切目もくれずに本業に励んでグループ全体で年商百億円を実現した。
乗客に尽くす五つ星制度
グループのタクシー会社は、買収につぐ買収で十一社ある。その保有台数三百台を超え福島県最大のタクシー会社になった。ここで注目すべきは「五つ星乗務員制度」である。この制度は平成十三年二月から始まった。初め三つ星からスタート、接客マナー・無事故無違反・業績向上等の諸条件をクリアすると一年に一つの星が与えられ、最短で十五年二月には五つ星乗務員が誕生するという仕組みである。現在、五百五十人の乗務員のうち二百人余が五つ星である。運転席の脇に掲げてある乗務員証にはこの星の数が客に分かるようになっている。タクシ ーに限らずグループの各社は、お客を大切にする思想が隅々にまで行きわたっているようだ。
「子供SOS」や「LPガス屋の看板」
根本さんは、福島県LPガス協会長の他に県石油商業組合・県石油業協同組合理事長など多くの団体役員をしているが、子供たちに何か怖い目に遭ったら近くのガソリンスタンドに逃げておいでという「子供SOS」は、根本社長が発案・提唱して国の補助金を得て実施された事業である。また、石油協組の事業だが、スタンドでの交通安全アドバイザーや公共料金の収納もコンビニばかりではなくスタンドでもと収納機器のリース料を資源エネルギー庁の補助を得て実現した。
こうした社会貢献運動をLPガス業界でもやったらいいと意欲満々である。LPガス事業者は全国に三万軒ある。ここがLPガス屋だという目じるしの看板がない。リンナイやパロマの看板はあるが、そこへ風水害で容器が流されたと持ち込んでも処置の仕様がない。それぞれの会社でできることと業界としてやらなければならぬことがある。全国のLPガス屋の看板などは業界として実現したいものであると対談を結んだ。
この稿を終わるに当って万葉集卷十六に見える手習い歌「安積(あさか)山 影さへ見ゆる山の井の 浅き心を わがおもはなくに」を引いておこう。郡山の采女(うねめ)祭りも間近である。そして根本石油の本社の所在地が安積町であることもこの短歌を思い出させたのである。
プロパン・ブタンニュース2004/8/2 ナリケンがゆく ウェーブ・風 話題と肖像画