ウェーブ・風 話題と肖像画 ナリケンが行く
(2005/3/21プロパン・ブタンニュース)
サンワ社長 | |
遠藤祐司氏 | |
お客の「暮したい」を創ります |
株式会社サンワの遠藤祐司社長を群馬県前橋市の同本社に訪ねた。サンワの原点は昭和21年に現社長の父、遠藤又司氏が沼田市に自動車修理工場を設立したときに始まる。昭和29年、出光興産と特約店契約を締結、社名も三和石油になった。昭和20年代後半から利根川上流のダム建設景気の上昇気流に乗って会社躍進の原動力となった。
昭和34年にはLPガス販売許可を取得した。30年代の初め又司社長は、現在のサンワ会の原型とも言えるアポロ会を組織して石油こんろの普及に努めた。しかし、石油こんろは次第にLPガスにその席を譲りだした。そこでサンワは、LPガス事業に参入した。これでガソリン部門についでサンワの2大主要部門が揃った。LPガスの充実した販売網を築くには小売のノウハウを蓄積せねばと創業の地、沼田から県都・前橋市に進出してLPガスの卸しと小売業を手がけた。遠藤又司社長には、「沼田で事業をするなら前橋からの視点、群馬県でなら東京からの視点が必要」という経営哲学があった。かくて昭和41年には前橋市に本社を移転した。前橋進出をきっかけに東毛への営業展開、充填所の開設と、県内シェアを広げた。
現在、石油事業部の直営SS19カ所、LPガス事業部のホームガスショップ沼田、同前橋、同高崎、同太田、そして沼田、吾妻、吉岡、吉井、邑楽営業所があり県下有数のディーラーに成長した。「三和」という社名は「お客さま、社員、経営者の「三つの和」を意味し、この三者それぞれに利益をもたらすことができて初めて企業の存在価値があるという発想から命名したものである。
昭和47年6月15日、東南アジア視察旅行中の遠藤又司社長死亡の知らせが飛び込んできた。ベトナム上空で搭乗機が墜落したのである。悲しみのうちに又司夫人の遠藤ミヨ子さんが社長に就任、新社長を助けるべく、出光興産東京支店に勤務していた遠藤裕司氏が専務として入社した。ミヨ子社長を補佐して裕司専務は第一次オイルショックを乗り越え、初代社長の念願だったコンピューターの自社導入を果たした。そして53年、第三代社長に就任した。北関東の工業地帯の東毛で大口顧客開拓にも成功、大型公共事業にも参画して売り上げを順調に伸ばして昭和57年には年商100億円を突破した。
CI事業の推進
平成4年、遠藤祐司社長は石油部門のSSを単にオイルの給油所から交通環境の中で憩いの場として安らぎと豊かさを提供できるようにした。そのためにパラード色を取り入れ、すべてのSSに「パラーダ」の名称を付けた。名づけてこれをパラーダ戦略と呼んだ。平成5年にはLPガス部門でもすべての営業所の外壁から看板まで共通のビジュアルな仕様にした。こうした斬新な発想はお客に強烈なインパクトを与え大きな反響を呼んだ。
訪問販売でセールスの極意を修得
SSのお客、LPガスのお客、工業燃料の大口のお客、そしてネットのお客さんの「暮したい」にフィットする商品の訪問販売をした。看護婦さんに評判のよいハンドクリームがよく売れる。1個1,000円のクリームだが、飛び込みで50〜60件まわると7、8個販売できた。よいものはリピートが効くことを経験した。
ハンドクリームだけではない。防災グーズや造園設計なども需要が多い。プレハブ・メーカーは庭に工夫を凝らしている。駐車場と緑の芝も受注が多い。このような訪問販売でセールスの原点に戻ることができた。
こうして時代のトレンドを先取りしてお客に満足を与える提案ができる。21世紀はLPガス単体を売っていればよい時代ではない。お客が欲する「生活エナジー」が提供できなければならない。
「美しいふるさと基金」
4年前の会社創立55周年に「美しいふるさと基金」を創設した。COP3の京都議定書が批准され、CO2の削減は今日のエネルギー問題の中心課題である。エネルギー事業に携わるものとして何事かをせねばと「ふるさと基金」を創設した。元渋川市長の登坂秀さんが森林保護の観点から始めた「群馬県緑のインタプリター協会」への寄付。同協会は利根川広域の森を守ることを主な活動にして音楽会も開催している。インタプリターの資格は樹木コース、草花コースがあって、所定の単位をとらなければならない。
遠藤祐司社長がCO2を削減して美しい地球を残したいとの意思が強いのは、若いころから沖縄の海は言うに及ばずサイパン、パラオ、ガム、南太平洋はタヒチ、フィージー、ニューカレドニアの海でスキューバダイビングを経験したからである。パラオの珊瑚礁は、10年ほど前まではテーブル珊瑚もエド珊瑚も綺麗だった。だが、今は完全に絶滅してしまったと嘆く。そして海の中は誰も来たことがない初めての世界だ。沈没船が横たわっているかも知れない。金塊を見付けることができるかも知れない。珍しい貝が採れるかも知れない。21世紀のサンワはスキューバダイビングよろしく前人未踏の分野を切り開いている。
プロパン・ブタンニュース2005/3/21 ナリケンがゆく ウェーブ・風 話題と肖像画