LPガス輸入 2008年からがおもしろい
日本LPガス団体協議会会長

出光ガスアンドライフ社長 
児玉宣夫氏
ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <155>

 出光ガスアンドライフ(iGL)の児玉宣夫社長は、今年6月に日本LPガス協会々長に就任した。日協会長は、日本LPガス団体協議会(日団協)会長でもある。業界を取り巻く環境は内に自由化拡大の中で競合エネルギーに伍した活躍が求められ、外にあって原油高の長期化という厳しい局面に遭遇している。児玉社長はこのような状況下で業界の舵とりの中枢に座ったのである。
 児玉社長の履歴は、昭和47年に出光興産入社、平成4年に出光アジア社長、同8年海外部次長、同9年需給部次長、同13年沖縄石油精製社長兼出光興産参与を経て、同16年に出光ガスアンドライフ社長になった。このキャリアからもLPガスの輸入ソースは今後どのように動くかに深い見識を持っていることが分かる。そこでこの対談の前段は、日協会長にして日団協会長の立場から当面の施策を、後段は出光ガスアンドライフの社長の立場からLPガスのFOBの高値はいつまで続くかを聴くことにした。
10月10日を「LPガスの日」に
 日団協は、10月10日を「LPガスの日」と制定した。昭和30年にLPガス業界がスタートして今年は50年のメモリアルイヤーである。そこで、業界にとってシンボリックな日を「LPガスの日」に定めようと検討した。10月10日は「東京オリンピック」の開催日である。同オリンピックで国立競技場の聖火の燃料はLPガスが使われた。日団協では、この「LPガスの日」に因んで10月に各種のイベントを企画している。
 10月12日に経団連会館で「第4回需要開発セミナー」を、10月19〜21日までは東京ビッグサイトでの「危機管理産業展」へ出展し、災害に強いLPガスをアピールしていく。また今年度からスタートした新たなプロジェクト“人と地球にスマイルを”第2回実行委員会をビッグサイトで10月20日に開催するなど数々のイベントを集中的に展開することにより、LPガスの啓蒙や実践活動の盛り上げを図っていく。
LPガス輸入・元売の機能
 現在、わが国のLPガス需要量は約1,800万トンである。今年3月に総合資源エネルギー調査会需給部会がまとめた「2030年のエネルギー需給展望」では、同年のLPガスの需要量は約2,500万トンにまで増加することが期待されている。それには需要開拓は勿論、国内流通コストの削減や輸入価格の引き下げが図られて実現可能となる。このためにLPガス元売は水平統合、流通段階の垂直統合によるコスト低減努力が必要である。輸入LPガス価格については価格競争力の確保、安定化・透明性実現のため産ガス国との対話や輸入ソースの多様化等に引き続き努力する。
エネルギー政策の中でのLPガスの位置づけ
 LPガスの需要拡大に当たって同じガス体エネルギーでありながら法的位置付けが天然ガスと異なっていることが普及のネックになっている。天然ガスや新エネルギーの普及促進を図る代エネ法や新エネ法ではそれらのガスが手厚く遇されているのに反し、LPガスは法的には削減されるべきエネルギーとなっている。これでは車のアクセルを踏みながらサイドブレーキを引いているようなものである。地球温暖化対策の視点からも天然ガスなどと同様の取り扱いがなされるべきである。
2010年には全世界でLPガス1千万トン供給過多
 サウジアラムコは、10月のCPをプロパン505ドル、ブタン525ドルを通知してきた。最高値記録の更新である。児玉社長は、今後のLPガス価格の見通しをOPEC(石油輸出国機構)に生産余力がない、地政学的リスク、ハリケーン被害、投機的資金の流入などによって原油高が続く構造であり、LPガス価格も1〜2年は原油高の影響を受けるだろうと言う。
 しかし、長期的にはLPガス価格は下がる。2008年にはUAE、2014年にはカタールの生産量はそれぞれ1,200万トンとなるからである。現在のサウジアラムコのLPガス輸出量が1,200万dであるのと比較すればカタール、UAEの生産量の大きさが知れよう。さらに2009〜2015年にLNG3,000万トンが契約更改に入る。一方、カタールのLNG生産量は将来8,000万トンとなる。因みに日本の03年度のLNG輸入量は5,850万トンだった。今後LPGとLNGの価格は牽制しあって高値は維持できまい。LNG生産にはLPガスが随伴する。カタールではLPガスの生産・出荷設備を既に着工している。その輸入が実現する時期にLPガス輸入業務に携れたら楽しみだし、待ち遠しいと言う。
日本人のアイデンティティー
 児玉社長は出光興産で昭和47年から平成16年に現職のiGLの社長に就くまで大部分を海外事業に携わり、海外勤務が長かった。
 今、出光ガスアンドライフでオール電化攻勢と対峙して、IHこんろで秋刀魚を焼いて旨いとは思わない。秋刀魚は、じゅうじゅうと焼いて焦げめがついたのを大根おろしを添えて食べるところに日本人のアイデンティティーがあると言う。いかにも出光人らしいコメントだと思った。

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)