たゆまぬイノベーション
桂精機製作所社長
丸茂 等氏
ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <163>

 桂精機製作所の丸茂等社長を横浜市の同本社に訪ねた。桂精機製作所は今年、創立50周年を迎えた。昭和30年6月、株式会社桂精機製作所になったときから数えて50年である。現会長の丸茂桂氏が桂精機製作所を始めたのはそれより早く、同26年1月である。爾来、同社は「ガスエネルギー利用技術」をベースに家庭用ガス供給機器、安全機器、工業用燃焼機器等の開発・製造一筋にガスエネルギーと共に歩んだ。
 平成16年6月にお父上・丸茂桂氏は会長に、そして長男の等氏がバトンを受け社長に就任した。丸茂等社長は、父上の薫陶をうけて社是「社員はパートナー」「日々たゆまぬイノベーション」「地球環境保全に資する技術・製品・サービス」を高く掲げる気鋭の若き経営者である。
LPガス供給機器の期限管理を
 LPガス安全促進協議会が平成15年7~11月に全国各地で実施した小型調整器使用年数実態調査のまとめは次の通りである。
 調査個数5,184個、①8年以上(交換期限切れ)1,241個(23・9%)全国設置数を2,100万カ所とすると、500万個である②10年以上805個(15・5%)全国2,100万カ所に対し325万個③15年以上373個(7・2%)全国2100万カ所に対し150万個④20年以上124個(2・4%)全国設置2,100万カ所に対し50万個である。調査結果は、交換切れ調整期が500万個以上あると推定している。LPガス供給機器工業会には正確な記録があるからそれに照らせばこの調査の推定値を上回るのではなかろうか。
 丸茂社長は供給設備、とくに調整器の維持管理の重要性を強調して交換期限を過ぎた調整器は高圧、低圧ホースとセット交換をし保安の確保を実施して頂きたい。調整器の期限管理に全力を傾注すると述べた。
カツラの地震対策機器・グラピタホース
 このホースは、高性能高圧ホースにガス放出防止器の機能を付加したもので、地震、落雷などで容器が転倒して高圧ホースに所定以上の張力が加わったときに容器のバルブ部分からガスの放出を防止する高圧ホースである。また、簡易ガス用の感震自動ガス遮断装置グラピタは①誤作動が発生しないシンプルな構造②小スペースで設置が簡単③感震器作動時にガスを放出せず安全④電気などの動力源がいらないため供給元の設置に最適等の特徴がある。
カツラのバルクシステム
 LPガスの物流コスト低減のために平成12年からトリニティインダストリー・メキシコ社から日本総代理店としてバルク貯槽の輸入を開始した。トリニティ社は高圧タンク貨車・タンカー・タンクローリー・タンクの世界のトップメーカーである。バルク貯槽の生産能力は、メキシコ・米国本国合わせて年間40万本である。貯槽シリーズは、竪形、横型120㌔㌘~1㌧まで10種類ある。残液管理システム、バルク貯槽用調整器はあらゆる貯槽にマッチしてラインアップされており、供給機器のカツラならではの体制である。
ガス燃焼式脱臭炉によるLPガス需用開発
 自治体が悪臭規制を強化している。改正大気汚染防止法によるVOC(揮発性有機化合物)の規制強化で製造工場からレストランまで、とくに塗装工場や印刷工場は悪臭・VOCを除去せざるを得なくなっている。有害VOCは数多いが、特に塗装工場のトルエン、キシレン等塗料溶剤や印刷工場での印刷関連溶剤は大きい。カツラは直接燃焼式脱臭炉と触媒燃焼式脱臭炉の2タイプで対応している。過去30年間に累計240台を販売した。上記の規制強化で需用が大幅に増加して昨年の実績は20台、今年は80台販売した。直接燃焼式(処理風量20立方㍍/分タイプ)LPガス約27㌧、触媒燃焼式(処理風量20立方㍍/分タイプ)LPガス約19㌧である。ターゲットになる顧客は全国に数多い。これらの脱臭装置は、カツラがやってきた技術開発の延長線上に出てきた新しい商品である。
 また、京都議定書が発効してCO2削減が絶対条件の中での産業界の設備は、省エネルギーを図らねばならない。それがために遠赤外線乾燥炉は乾燥する対象に直接照射でき、従って炉長を短くできて省エネ性が高い。特にVOC対策に有効な粉対塗料には最適の乾燥システムである。また、マイクロガスタービンから排出される排熱を遠赤外線・熱風併用乾燥炉に再利用する熱回収システム、前処理装置に再利用するシステム等の有効利用法もトータルで提案している。
あのときの青年が
 丸茂桂会長と筆者は2人して昭和54年に米国旅行をした。アメリカ南部のテネシー州チャタヌーガー市のバーナーシステム・インターナショナルを訪問したとき、そこで丸茂等さんと初めて対面した。お父上は大学をでたばかりの等さんをバーナーシステム・インターナショナルのジェット・チューブ・バーナーの製造特許を買った同社に修行に出していたのである。25年も前のことである。あの時の青年が等社長である。ガスバーナーのカツラはその延長線上に技術の花を咲かせている。ローマは1日にしてならず、と思った。

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)