オーバーヒートしない四代目
千葉県LPガス協会青年委員長
山岩安野商会社長 
安野晃造氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <169 >

 千葉県市川市の山岩安野商会の安野晃造社長は、同社4代目の社長である。創業は曽祖父の岩次郎氏が塩の卸業を始めたことに由来する。千葉県のこの辺りには塩田が多かった。塩の販売は独占事業だったが、曽祖父は奉公先で信用が厚く暖簾分けをしてもらい塩の卸業を始めた。祖父は長男だったが、その名は富三郎である。曽祖父の奉公先の主人は弥三郎といった。お前の息子におれの名の三郎をやろうと言って富三郎と名付けられたのである。2代目社長・富三郎氏は薪炭、石油そしてLPガスの販売を始めた。3代目社長は、お父さんの巖さんである。平成3年2月、3代目社長は57歳という若さで夭逝された。このとき現4代目社長の晃造さんは、慶應義塾大学理工学部電気工学科で卒業論文に取り組んでいた。卒論のテーマはメタンに電子をぶつけてシリコンの薄膜を作る、これは半導体の分野で使われ、一般に経験則で生産されていた。これを数式化する研究論文である。そして就職先も内定していた。お父さんが亡くなったことで家業を引き継ぐことを決意した。
瞬く間に過ぎ去った10年
 子供のときから商売人の家に育ち親たちが立ち働く姿を見て育っているので家業を継ぐ気になった。23歳で会社に入り、33歳で社長に就くまでの10年間は大変短く感じた。入社したのはバブル経済の最後のころで、お客さんの言うことは何でも聞く、言われる通り直ぐやると無理をしてオーバーヒートしたこともある。オーバーヒートの後に来るものは何もかにもいやになる倦怠感である。自分は元々理科系に進んだのは算数でも当面の約束ごとを守って進めば自ずと成果が得られる。この感触が好きなのである。今ではそんなことを言うものはいないが、自分も商売人のはしくれ、ホリエモンのようになりたいと思ったこともある。しかし、それは違うのである。自分の生きざまは、無理をしない、さりとて楽をしたいと言うものではない。やれることに全力を尽くすのである。
山岩安野商会の事業
 ①LPガス需要家2,000軒余。新規獲得は地元ではコストがかかり過ぎる。新規顧客獲得の設備費は回収ができねばならない。10万円を超さないようにしている。木更津市方面に進出している。距離はあるが、市川インターが近く交通アクセスはよい。卸屋はいま買収に乗り気だが、3年後もこのような相場が続くだろうか。損得なら今やめた方が得かも知れない。しかし、この事業をやめて他にもっと面白い事業があるだろうか。ガス外事業というが、水にせよ、火災警報機にせよ、基本料金が4、500円では人を使ってやっていくにはきつい。その意味でLPガスのネットは資産価値が高い。大切に守らねばなるまい。
 ②灯油販売は月300㌔販売している。今年1月の値上がりは半端じゃなかた。毎日上がり、天井しらずだった。家庭用の小売は転嫁できたが、業務用はおっつかない。1月は赤字にならぬようにするのが精一杯だった。
 ③機器販売だが、これからはこの部門に注力する。
 山岩安野商会の年商は、10人ほどの社員で3億円であるが、その内訳は、LPガス部門=5、灯油部門=4、器具販売=1の比率である。今年は器具部門を2としたい、と述べた。
「災害対策マニュアル」を作成
 安野さんは昨年5月、千葉県LPガス協会の青年委員長に就任した。安野委員長の初仕事は「災害対策マニュアル」の作成だった。県協会長から青年委員会に「災害対策マニュアル」の作成を諮問され、昨年11月末に答申した。マニュアル作成に際して10年前に阪神・淡路大地震を経験した兵庫県プロパンガス協会を訪問、同協会がどのように復旧に努めたか、その体験をもとにどのような体制を構築したかを学ぶところから始めた。また、日連青年部全国大会(愛知大会)に千葉県協会青年委員会として参加してその分科会で災害対策を学んだ。さらに地震の専門家を講師に招いて勉強会を重ね、実働部隊である若手の青年委員会が実務と安全性を検討しながら現実的なマニュアルを作った。マニュアルはできたが、これからが本番だ。小さな販売店さんが指導権をもってやれるように、卸屋の指導ではなく卸屋さんの協力を仰ぎながら頑張りたい。救援物資の供給協定なども県協会が県と結んでいるので協会支部と市町村との協定は比較的スムーズに進むと思うが、県協支部と市町村との協定でも青年委員会が実務的にリードをして行きたい。目先の仕事が山積して時間をとるのが困難だが、長い目で見ればやらねばならないことであると、ご自分に言いきかせるように語った。
CO2削減も
 若い4代目社長・安野晃造さんには曽祖父・岩次郎さん以来の血筋が脈々と流れていると思った。対談を終えて記者はお礼のあいさつで言った。
 地球温暖化防止の京都議定書が発効して2月16日で1年が経った。温室効果ガス排出抑制にあなたのLPガスを活用してマイナス6%運動を起して下さい。それはあなたの次の青年委員長にも申し送ってと頼んでお別れした。 

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)