右手にそろばん、左手に論語
サイサン社長
川本武彦氏


ウエーブ・風 話題と肖像画/ナリケンがゆく <192>

 サイサンの川本武彦社長は21世紀・初頭の元旦に3代目社長に就任した。創業者社長の川本二郎氏は祖父、2代目社長は、父の川本宜彦氏である。15年7月にGas Oneブランドを展開、16年9月に販売店会とGas Oneサミットを開催、これと時を同じくして「ガスワンパーク上尾」が完成、稼働した。この施設は内陸型として国内最大級のもので経営の効率化とコストの削減を実現してLPガス供給インフラを著しく前進させ「技術のサイサン」の定評を確乎たるものにした。かくしてGas Oneショップの加盟店は20社を超え、直営店と共にチェーンパワーを発揮している。
認知度高まるGas Oneブランド
 第29回埼玉県学童軟式野球大会兼第1回Gas Oneカップ埼玉選手権大会は、今年7月29日~8月3日にさいたま市営大宮球場で開催された。県下の768チームの中から地区予選を勝ち抜いた45チームが熱戦を繰り広げた。サイサンは冠スポンサーで川本武彦社長は始球式に登板、そして日頃の成果を発揮して今大会で友情を深め、夏の思い出にしてもらいたいと挨拶した。トロフィーやメダルにはGas Oneと刻くされている。優勝チームのピッチャーは6年生の女子生徒だった。長野県では小学生サッカーの「Gas Oneカップ」が行われた。
 ガスワン サービスセンター(コールセンター)は、お客さまとの対応履歴が残るシステムになっているから同じことを繰り返し言わなくて済みスピーディーな対応ができ、価値を高めている。
 サイサン系列の常磐共同ガス(都市ガス)は、LNGによる熱変が実施され、「ガスワン料理教室」や市民講座「ふるさとを語る」等が好評である。同じく都市ガスの熱海ガスは、旅館、ホテルが多い土地柄だからガス展も土、日曜を避けて平日に実施して地域に溶け込んでいる。
 これらの事実が示すようにGas Oneブランドの展開はその存在が知られ認知度が高まった。次の段階はお客さまに選んでもらえるようになることである。Gas Oneブランド戦略は着実に進んでいる。
父を語る
 会長は自分から見れば親だから、年齢と同様に親を越えることはできない。越えようとも思わない。尊敬する存在である。昨年11月の株主総会で会長は、代表権を返上された。会長と社長が2人して代表権を持つ必要はないと言う。平成13年に私が社長に就任したときバトンタッチ・ゾーンは3年と考えていたようだ。1年遅れて昨年これが実行された。会社だけではなく団体なども同じで、引き継ぐことで凋んでしまっては意味がないが、より良くするために次の者に引き継ぐのが指導者の使命だと言う。自分が副社長だったころ大切な案件でNOと言われるのを覚悟で自分なりの結論を持って行ったら、それでやったらいい、責任はとれよと言われた。駄目と言われれば反発する。また、父は私と2人で同じ所に行くよりもお前がそっちに行くなら自分はこっちの仕事をしようと手分けをして事を運んだ。適当な距離感を持って会長なりに気を遣ってくれた。そして任せてくれた。
商道の真ん中を歩め
 昨年10月、ホテルニューオータニで行われたGas Oneサミットで会長は、企業の業態は環境で変わっていく。然し会社はリレーで50年、60年と続く。当社はガス、エネルギーをまっしぐらにやって行く。100周年に向かって、商道の真ん中を進んで行きたい。私はこのDNAを3代目の武彦社長にリレーした積りである。今後とも変らぬご愛顧をと挨拶した。このあいさつに会長の考えが凝縮されている。
会長の「渋沢栄一賞」受賞
 渋沢栄一翁は、埼玉が生んだ偉大な実業家である。「右手にそろばん、左手に論語」は、翁の生き方と功績を端的に表現している。埼玉県と渋沢栄一記念財団は共催で、翁の生き方と功績を顕彰するため、健全な企業活動と社会貢献を行った全国の企業経営者を対象に表彰をしてきた。今年、第四回渋沢栄一賞に川本宜彦会長がその栄誉に輝いた。表彰理由に曰く「創意と工夫、誠実と努力、責任ど根性の社是の下、各種ガスの安全確保、安定供給に徹するとともにLPガス新供給システムの確立に向けた実証試験など先駆的事業を展開。また、環境保全活動への助成基金(財団・サイサン環境保全基金)を創設し、民間・非営利活動と学術研究などを支援した」とある。埼玉県民としても初の受賞だった。
対談を終えて
 対談を終えて記者の印象は、会長がGas Oneサミットで述べた「私はこのDNAを3代目の武彦社長にリレーした積りである」。そして武彦社長が語ったバトンタッチ・ゾーンの話を思い合わせてまことに絶妙なタイミングのバトンタッチと感銘を受けた。   

プロパン・ブタンニュース/石油化学新聞社(C)