プロパン・ブタンニュース 3323号
石油化学新聞社創立65周年記念号
第1部
AIやIoT 次世代技術活用が必須 構造改革で新たな価値を
5月1日、皇太子さまの新天皇即位に伴い、「令和」に改元された。前天皇陛下の生前退位、上皇即位は憲政史上初であり、新たな時代の到来を予感させる。平成の30年はバブル景気で幕開けしたものの、バブル崩壊後は「失われた20年」と呼ばれた通り経済的低迷が長く尾を引いた時代であった。LPガス業界では安全と安心の確立に奔走する一方で、1997年のLPガス法の大改正が産業構造に大きな変化をもたらした。そして忘れてはならない3・11。オール電化による市場侵攻にさらされていたガス産業は、東日本大震災と福島第一原発事故を契機に改めて特性や役割を見直された。LPガスは強靭性が再評価され、エネルギー供給の「最後の砦」という評価も得た。この大災害の影響は、21世紀に前後して始まった規制緩和の潮流に合流し、電力・都市ガス小売の全面自由化によるエネルギー間の垣根を超えた大競争時代へと流れ着いた。石油化学新聞社は、令和時代の幕開け、時代の変わり目に創立65周年という節目を迎えた。令和時代は第四次産業革命、政府が提唱するソサエティ5・0に象徴されるように、AIやIoTなど次世代技術を駆使した構造改革が求められている。エネルギー大競争時代に勝ち残らねばならないLPガス産業こそ、次世代技術の取り込みは必須だ。石油化学新聞社/プロパン・ブタンニュースは、現場報道を第一に、次世代技術の動向を積極的に紙面に取り上げていく。今後も変わることなくLPガス産業の道標になる。
LPガス産業の発展書き継ぐ
石油化学新聞社は2019年4月、創立65周年を迎えた。1955年2月、わが国初のLPガス専門新聞「プロパン・ブタンニュース」を創刊。そして、63年2月には「日刊プロパン・ブタン情報」を創刊した。業界草創期からさまざまな変遷を経て、LPガスが国民生活に不可欠なエネルギーとして普及していった歩みを歴史の証人として紙面に描き、役割を果たしてきた。「創立65周年記念特集号」を刊行する慶びを読者とともに分かち合うとともに、令和の時代でのLPガス産業の発展、エネルギーの変遷を今後も書き継いでいくことを誓いたい。
IoT導入事例、事業者編・通信キャリア編・電力会社主導
LPガス業界は30年以上、集中監視システムを提供してきた。その歴史や親和性の高さから、現在通信キャリアを巻き込んだ次世代のIoT無線通信システムの実装が始まった。IoTやAIは今後の社会構造を支える可能性も秘めており、これをどう事業に取り込んでいくか。ここでは、LPWA無線技術の活用など最新動向を追った。
事業者編
- 岩谷産業
- ミツウロコグループ
- 日通商事
- 東京ガス/アズビル
- スタンシステム
- 伊藤忠エネクス
- 須田商事
通信キャリア編
- NTTテレコン/NTTドコモ
- ソフトバンク
- オプテージ
残された課題克服し明るい未来へ
LPガスはシェール革命により調達の多様化が進み、安定性と料金の低廉化が進んだ。一方で、電力・都市ガスの小売全面自由化によって、消費者に選ばれるエネルギーでないと勝ち残れないことがはっきりした。新しい時代「令和」がスタートしたが、少子高齢化や都市部への人口集中、頻発する自然災害、輸送部門を中心とした労働力不足、地球温暖化など、LPガス業界を取り巻く環境は依然として厳しい。そこで、中央団体代表らに業界の「課題と展望」「災害対応と学校空調」について語ってもらった。
明日を開く指針
- 資源エネルギー庁LPガス担当企画官・谷浩氏、多角化に挑戦 ファン増やす努力を
- 経済産業省ガス安全室長・田村厚雄氏、最新技術と人の力強みに
輸入・元売メーカー/広域販売事業者/ガス機器メーカーなど
電力と都市ガス小売の全面自由化を受け、エネルギー事業者はかつての枠組みを超えて激しい競争を展開している。LPガス事業者にとって難しい局面だが、比類なき顧客接点力や自立分散性といった強みを生かして新たなチャンスも生まれる。令和を迎えた業界はどう成長を遂げるべきか。先進企業92社の経営トップに新時代の戦略を聞いた。
エネルギー新潮流/未来へのアンテナ
- 東京電力エナジーパートナー 佐藤美智夫副社長
- イーレックス 本名均社長
通信技術で機能と価値を高める
平成の30年間で、飛躍的な進化を遂げてきたガス機器。平成初期に16号が主体だった給湯器は24号が増え、小型・薄型化・大能力化を経て「エコジョーズ」に至った。一方、こんろは高効率化や清掃性、安全性や利便性を追い求め「Siセンサーコンロ」にたどり着いた。消費が飽和になり、商品販売の視点が機能重視の〝モノ売り〟から、商品から得られる価値を重視する〝コト売り〟へと変化するなか、業界内では情報通信技術の積極活用が始まっている。スマートフォンの爆発的な普及を受け、メーカー各社はそれぞれのスタンスでこれを活用。アプリによるレシピダウンロードと自動調理、遠隔操作やスマートスピーカー対応をはじめ、インターネットメディアを積極活用した付加価値機能・サービスの提供がより身近になってきた。
第2部
日本 内需拡大待ったなし
- 輸入先は米国シフト プロパン占有率74%に
- 豪州イクシス、最大年165万トンを産出 国際帝石主導の大型プロジェクト
- 1600万トン需要回復へ全力 都市ガス用減量招く議論も
かつてLPガス国際市場で大きな影響力を誇ったサウジアラムコを中心とした中東からの輸入は2018年度に20%台にまで低下し、代わりにシェール随伴LPガスを増産する米国が急速に供給量を伸ばしている。昨年はオーストラリアのイクシスLNGプロジェクトからLPガス出荷が始まるなど、調達先の多様化が進んでいる。一方で中国、インドの需要は急速に拡大し、輸入面での日本のプレゼンスは低下している。国内業界を挙げて需要の引き上げを図らないと調達環境はますます不利に陥る可能性がある。
自由化・防災・合理化・雇用・需要テーマに
平成から令和に元号が変わったが、LPガス産業を取り巻く状況は需要減や人材不足などの課題が山積している。縮小社会への対応を余儀なくされる国内エネルギー市場で課題解決の糸口をつかみ、LPガス産業が存在感と役割をさらに発揮するにはどうすればいいか。新時代を牽引する若手経営者5人が自社の取り組みや展望を語った。
出 席 者 (順不同)
札幌アポロ石油 専務井門義貴氏
盛岡ガス燃料社長 熊谷祐介氏
サンワ社長 遠藤宗司氏
三ッ輪産業社長 尾日向竹信氏
日の丸産業社長 河尻毅氏
司会 石油化学新聞社社長 成冨治
地域の暮らし支えるLPガス
当紙は国内初のLPガス専門紙として生まれ、業界に寄り添い、ともに歩みを進めてきた。業界の発展へ貢献するため、常に最新の情報を報道することに邁進し、業界の歴史のデッサンを描き続けている。その当社が創業65周年の節目を迎えることができたのも、偏に読者の皆さまがあればこそ。本コーナーでは、当紙を良き伴侶、良き相棒として長らく愛読していただいている読者諸兄に焦点を当てる。未曾有の競争環境が広がるなか、エネルギー最前線を争う販売事業者は各々に歴史があり、その日常にはドラマがある。日夜額に汗をして奮闘する読者の姿をクローズアップすることで、その背にエールを送るとともに、今日を勝ち抜く活力と明日への勇気をもらいたい。
中央団体トップに聞く 次代の発展に向けた「課題と展望」
- LPガスの新たな可能性を切り開く
都道府県協会長メッセージ
- 地域とともに新時代開く
エネルギー新潮流/未来へのアンテナ
- 関電ガスサポート 川崎幸男社長
- ソラコム 玉川憲社長
タイ・ミャンマー・ベトナム・カンボジア4ヵ国ルポ
世界LPG協会(WLPGA)の集計によると、17年時点の世界のLPガス消費量は3億3400万㌧で3億㌧を突破し、1・7%のプラス成長となった。このうちアジア・太平洋地域が約4割の1億3千万㌧(前年比5・1%増)を消費し、地域別で断トツの量と高い成長率を誇っている。国別には年率7~10%の驚異的な伸び率の中国、インドの2大国で7700万㌧と、約6割を占める。東南アジアの国々でも調理用、自動車用と、ごく日常生活の身近なところでLPガスを使うようになっている。中印がアジアで最強に違いないが、成長率では安定期へと向かうとみられる中印を東南アジア諸国が追い越すと予想され、米国、中東の産ガス国も熱い視線を送っている。昨年、本紙が現地取材したタイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジアの4カ国を取り上げて、最新LPガス事情を報告する。今後も本紙はアジア取材を継続していく。
第3部
草津栗東ガス協組とT&DリースJVが滋賀県南部県立4校に35台720馬力導入
滋賀県が実施した「滋賀県立学校空調設備整備およびサービス提供業務」(追加分)の公募型プロポーザルで、県内9地域のうち南部地域4校に対する事業に応募した草津栗東ガス事業協同組合(本部・栗東市、小和田隆三理事長)とT&Dリース(本社・東京、岸信之社長)の共同企業体(JV)が、競合する企業や共同企業体の提案に勝ち、LPガス仕様GHPを導入した。同協同組合は過去2回のプロポーザル公募にも参加したが受注できず、県立学校空調設備の整備が完了する最後の公募での悲願達成となった。
阪神・淡路大震災、東日本大震災
平成の30年は、〝激甚災害〟が多発した時代だった。99年に基準の大幅な引き下げはあったが、昭和時代の1件に対し39件、局地的な激甚災害57件を含めると実に96件にも及ぶ。なかでも、95年の阪神・淡路大震災と11年の東日本大震災は、その被害の規模もさることながら、リアルタイムの映像が全国に広がり、記憶に焼き付けられた。この2つの災禍は同時に〝災害にも強いLPガス〟を強く印象付けた。本紙の現地報道写真で災害の平成を振り返る。
北海道南西沖地震~北海道胆振東部地震
地震雷火事親父(じしん・かみなり・かじ・おやじ)とは江戸時代から歌に詠まれた〝怖いモノ〟だが、平成時代の災害は、各地で大型地震も発生、さらに地球規模の気候変動の影響を受け、こと昨今は毎年大型台風とそれに伴う土砂災害も多発している。地震では復旧、台風被害などの水害では流出容器の回収など2次災害を未然防止するべく、LPガス事業者が懸命に立ち回る姿、また炊き出しなどで活躍するLPガスの姿を報道で追った。
平成を振り返る「業界編」
- 激動30年 平成のあの日・あの時 さらなる発展LPガス産業の軌跡
蓄電池・コージェネ拡大へ
余剰電力巡り新ビジネス
第6世代エネファーム、LPガスと親和性抜群
住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が満了を迎える家庭、いわゆる卒FIT家庭が11月から発生する。その数は今年末までで約53万件となり、電源容量は200万㌔㍗に及ぶ。政府の予測では、卒FIT家庭は今後も毎年20万~30万件発生する。2023年までで合計165万件に達し、670万㌔㍗の電力が宙に浮くことになる。卒FIT電源の出現は、電気料金に上乗せされていた再生エネルギー賦課金の国民負担を減らすだけでなく、電力の行方を巡るさまざまな新規ビジネスの開拓につながっている。余剰電力の買電、自家消費を前提とした蓄電池市場の拡大やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及、さらにIoTを活用したVPP(バーチャルパワープラント、仮想発電所)の構築など多様な展開が考えられる。
河原実業会長・河原勇氏、新日本ガス会長・髙井宏康氏
- 河原実業会長・河原勇氏=夢を追い、失敗と成功に学ぶ
- 新日本ガス会長・髙井宏康氏=クリーンLPガスは先人からの贈り物
「レジェンドが語る」は、昭和・平成のLPガス史を彩った2人のリーダーによる令和の経営者、リーダーへのメッセージである。東の代表は河原実業(本社・東京)の河原勇会長(85)、西の代表は新日本ガス(本社・岐阜市)の井宏康会長(74)。2人が昭和・平成時代に経営者として、また協会長として経験したこととは何であったのか。そして、次代のリーダーに伝え遺していきたいこととは何か。それを問うたとき、共通していたのはLPガスへの心からの愛情であった。そのうえで、人を信じることの大切さを語った。