(2002/04/01 プロパン・ブタンニュース)
堀川産業社長 堀川勲夫氏
「家庭用が本命。簡ガスの鬼」

 
堀川産業の堀川勲夫社長を埼玉県草加市の旧日光街道沿いにある同本社ビルに訪ねた。濃いブラウン色の6階建てのこのビルは昭和57年、会社創立30周年の年に建った。あれから20年が経とうとしている。訪ねるたびに街の景色が変貌しているのに感慨をこめてあいさつをすると、社長も「白駒隙(げき)を過ぎる」のたとえの通り、あっという間だった。
 昭和45年に創業者の父、堀川吉蔵氏からバトンタッチをうけて社長に就任して、ひた走りに走り続けて昨年9月の平成12年度決算で年間売上高223億円を記録した。そしてLPガスのお客さん数は15万5千軒、うち簡易ガスのお客は4万733地点。簡易ガスの供給地点数では全国5位であるが、上位4社は都市ガス系である。純然たるLPガス業者では實質1位である。
 簡易ガスの供給地点群は、今年1月で100地点群になった。昭和46年10月に埼玉県宮代町の宮代台住宅(896地点)の第一号認可から始まって30年間で100地点群である。
簡ガス100地点群、4万地点を超す
 これらの地点群の中には宇都宮市の雀宮針ヶ谷住宅の4866地点、栃木県野木町の野木ニュータウン2727地点、群馬県板倉町の板倉ニュータウンの2551地点、埼玉県羽生市の南羽生土地区画整理地の1889地点など大きな団地もあるが、100戸内外の団地を小まめに積み上げて簡易ガスの需要家4万軒に至ったのである。一つひとつの団地にそれぞれに固有の苦闘の物語がある。最近はデベロッパーが造成をひかえているから導管の枝を伸ばすように心掛けている。また、初期投資からかなりの年数を経たので老朽導管の入れ替えコストがかさむ時期にさしかかっている。導管を入れ替えても料金は上がらないのだから、計画的にこれを実施するべく1年に5億円ずつ投資していると言う。堀川社長を「簡ガスの鬼」と人が呼ぶのも頷ける。
エコキュートや灯油との戦い 料金問題は避けて通れない
 LPガスの小売価格は、この辺(北関東地方)では10立方M4550円見当が妥当だろう。その料金体系は基本料金1550円、従量料金1立方M300円といったところだ。この価額ならばサウジCPの乱高下に対しても対処できる。CPが100ドル上がり下がりしても、為替を1ドル100円とすればキログラム10円、立方M20円の幅である。このくらいならば10立方4550円の中で年間を通して調整できる。電気や灯油との対抗で従量料金を立方250円、基本料金は変えないで10立方M4000円を覚悟せねばなるまい。
 電気の給湯器エコキュートは、この辺にはまだ来ていないようだが、この対抗策としてはLPガス業者がガス器具の売り込みに熱意を欠いていることの方に問題がある。エコキュートと言っても電温と同じで湯の落としこみで、いくら昇温が可能でも循環式湯沸しにはかなうまい。落とし込み風呂で300リットルの貯湯32度Cを42C度に昇温するのはたいへんだ。注し湯に夜間の電力ではなく昼間の電力を使えば大変高い電気料金になることも知らねばならない。シャワー感覚だといくらか通用するだろうが、日本人のお風呂感覚だと循環式に限る。
 むしろ灯油との競争の方に関心がある。この場合、LPガスの料金問題を避けて通ることはできない。さしずめ従量料金は立方M250円というところだろう。配送や検針などを合理化して基本料金をいじることも可能だが、目下のところ基本料金1550円は崩すなと指示している。
 また、「天然ガス・マル簡」などを考えているものもいるが、反対である。それは天然ガスを輸入しているものに完全な隷属を意味することだ。
社長が入ると会議は早い
 ミドルの中堅社員に君の名前を公表するようなことはしないから君の社長像を話してくれないかと持ちかけた。彼は少々途惑っていたが、こんな風に話してくれた。
 うちの社長はそんなに話がうまい方じゃないが、妙に説得力があるんです。会議で話がだらだら長引いて結論が出そうもないときに社長が来るとぱっと決まるのです。綺麗ごとは言わないし、どちらかと言えばドロくさい方なのでしょうが、安心してついていけます。出先の所長さんが不安に感じていることを聞き出して、やさしく説いている姿には感心させられます。
 若い社員にかく言わしめるものは、これまでに述べたLPガスの料金問題にせよ、電気のエコキュートとの対抗にせよ、灯油との競争にせよ、すべてが観念論ではなく現実的対応だから説得力がある。そして「家庭用プロパンこそがわが社の本命事業」のゆるがぬ信念が貫かれているからに他ならない。

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