ウェーブ・風  話題と肖像画 ナリケンが行く

(2003/2/10 プロパン・ブタンニュース)

三愛石油社長
和田武彦氏
佐賀ガスLNG化は軟着陸で

 三愛石油の和田武彦社長は平成11年6月に伊東義晃前社長(現会長)からバトンを受け継いで第6代社長に就任した。そして平成14年6月には会社創立50周年を迎え、半世紀を祝う記念日は新たな未来への旅立ちであると述べて新たな挑戦を宣言した。そしてこのインタビュ ーでは冒頭次のように始めた。
 わが社はメーカーではない。卸と小売業だ。お客があってのわれわれである。だから「お客を大切にする」「お客の役にたつ」をいっときも忘れない。それは取りも直さず「人を愛し 国を愛し 勤めを愛す」という創業者・市村清の経営理念「三愛」を誠実に実行することに他ならない。
5つのコア部門
 会社には航空燃料事業部、石油販売事業部、LPガス事業部、化学品事業部、そしてエネルギー関連の新たな事業開発をする事業開発部の5つのコアとなる部門がある。また子会社45社、関連会社7社があり、社員は730人、子会社まで入れて1800人である。リコーのように何万人もの従業員となると大変だが、わが社くらいだと隅々まで見える。
 そうは言うが、全国に展開している千人からの社員をどのような方法で把握しているのか、聞いてみた。
 (注)ここでLPガス事業部と石油販売事業部の規模について説明しておこう。
 LPガスは年間40万トン販売している。直売志向というが、直売の消費者は7万軒である。平成12年に直売統括部を新設して、消費者数5千軒以上、1県1社を原則にガス販売会社の統廃合を進めた。14年3月現在で直売統括部は全国に15社の直売会社を管轄している。直売志向といっても直売のノウハウを蓄積している段階である。地域で統合を望む販売業者に受け皿を創っている段階である。卸販売が圧倒的に多い。石油販売部のスタンド網は全国を網羅している。100%子会社のスタンドが120カ所、特約店のスタンドが650カ所である。
SOHO化による組織改革
 SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)は、石油卸売支店で最近行った組織改革である。支店を本丸とすれば営業所、駐在所は出城である。出城は事務所を持たず駐在員の家庭を事務所とした。情報機器の普及で事務管理の集中が容易になったことから、さらに支店事務所を廃止し、支店長宅を事務所とした。支店長は3、4人の地区担当者を持って自身もプレーイングマネージャーだ。組織が縦に長かったものがフラットになった。そしてセールスマン一人ひとりの働きがよく見えるようになった。
 加えてコスト削減にも貢献したと和田社長は力説した。毎日メールを読む社長を想像して、お忙しいのにたいへんですねと言うと、現場の生の声が聞けるのがよいと明るい笑みがこぼれた。その笑顔から二つのことを思い合わせた。一つは和田社長はラガーマンである。今でもラグビーの試合を観戦なさるとのこと。もう一つは社長就任の辞の一節である。ローコストで収益を上げる会社の基盤づくりを説き、リストラは行わず、しなやかで強い竹のような会社を目指すという言葉である。
佐賀市営ガス民営化の受け皿会社に参加
 佐賀市議会は昨年9月、市営ガス事業を民間に譲渡する条例案を可決した。その受け皿会社・佐賀ガス(資本金3億2千万円)に三愛石油は1億5千万円(出資比率46.9%)を出資して参加した。
 これは創業者市村清をはじめ佐賀への熱い思いと都市ガスのLNG化に対してLPガス業者のソフトランディングを志向したものである。三愛石油は佐賀地方にLPガス卸、直売の顧客が多い。市営ガスの民営化ではわれわれ以外に数社が関心を示していた。そのようなことになれば急激にことが運びLPGはダメージを受けることは必定である。ここはどうしても軟着陸が望ましい。受け皿会社の佐賀ガスに参加した他のLPG業者も同じ考えである。LNGがLPGより優秀でも偉いわけでもない。LPGは分散型エネルギー、LNGはネット型エネルギーということである。いずれもCO2排出量はよいのだから、共に社会貢献ができる。ソフトランディングだからといってLPG業者は漫然と時を過ごしてはならない。LPGによるGHP、コージェネ、高効率給湯器等の普及に力を注がねばなるまいと強調した。


 プロパン・ブタンニュース2003/2/10 ナリケンがゆく ウェーブ・風  話題と肖像画


話題と肖像画・ナリケンがゆくを読む