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(2003/5/12 プロパン・ブタンニュース)

中国工業 社長
宇根 隆氏
プロパン容器5000万本の金字塔

  LPガス容器の大手メーカーである中国工業の社長・宇根隆さんは、今年3月末の連結決算は売上高136億3千万円、経常利益8千万円の見通しと言う。最近のバルク供給システムの普及やLPガス物流の合理化で充填所の統廃合などが影響してLPガス業界の容器購入が伸び悩んでいる。昨年一年間のわが国の50kg以下のプロパン容器の生産実績は、昭和35年以降で最も少ない187万本だった。前年比88%、5年前に比べれば76%、10年前に比べれば63%である(表参照)。容器販売価格もかつてに比べて厳しい。
 宇根社長はこのような経営環境にひたすら省力化に努め前記のような成績を上げた。並々ならぬ努力のたまものだと思う。
現場主義の宇根隆社長
 宇根さんは昭和10年生まれの68歳、広島県呉市の人で、昭和32年の入社だから中国工業がプロパン容器の製造を始めて間もなくの時期である。そして平成11年に5代目社長に就くまで管理畑で働いた。初代の花田卓夫社長は旧海軍少将、二代目社長・竹本土市氏は大阪造船の技師、三代目原幸夫社長は広島通産局長、四代目の奥井脩策社長も広島通産局次長だった。歴代社長が高級官僚出身だったのに対して五代目の宇根さんは中国工業生え抜きの現場出身である。そのためか自分は現場主義だと言ってどこへでも身軽にとび歩いている。
 中国工業は昨年、50kg以下の溶接容器の累計生産本数5千万本に達した。5千万本のうち、LPガス容器は4894万本、その他の106万本は主としてフロンガス容器である。日本溶接容器工業会が集計した昭和27年から平成13年末までの50kg以下のLPガス容器の生産量は、累計1億3092本だから中国工業はこの時点でLPガス容器市場で37%のシェアを築いたのである。昭和30年にLPガス容器の生産を始めて5千万本の金字塔を打ち立てるまでの歩みを振り返るとき、現在のデフレ経済下で苦闘する目にはその業績はまぶしいものに違いない。
 しかし、宇根さんは悲観したりはしない。プロパン容器の更新サイクルは20年である。溶接容器工業会の生産調査表が示すように昭和40年以降に年間350万本〜400万本販売された容器が更新期に入っている。また、消費量の多い客に対して50キロ容器による供給も増えている。これらを着実に攻略すると言う。
 無事故にして5千万本への道を聞きながら、いろいろなことが思い出された。昭和36年だった、高松宮殿下が呉工場をご視察なさった記事を書いた覚えがある。今は亡き営業担当常務の堀内正男さんや専務の古里哲さん、広島営業所長だった高橋良雄さんの風貌も忘れ難い。筆者が呉工場を訪ねたとき高橋さんが音戸の瀬戸に観光案内してくれて平清盛の話を面白おかしく話してくれたものだ。
バルクは本来お手のもの
 バルク貯槽は、プラント設備もやっていたから早くから手がけたが、費用対効果で疑問視するお客の声に耳を傾けて対応が遅れた。しかし、今は南京で150キロ、300キロ、500キロ、980キロのスタンダード製品を作って輸入している。南京には技術者を常駐させ、KHKの検査も現地で行っている。材料の鋼鈑は日本から送り、製品は月に250〜300本輸入している。国内でも50キロ〜2.9トンまで約20種類の各種貯槽・容器を作って客のニーズに対応している。配管の大臣認定を受けているから高圧配管を組み込んだバルク貯槽の工事もできる。バルクに供給機器を組み込んでセットでの対応、ベーパーライザーを組み込んだ消費ユニット、ディスペンサーを組み込んだ簡易オートユニット等の客の要望に応えられる。
消臭装置は文化生活のバロメーター
 売上高の70%はLPガス関係だが、30%はプロパンと直接には関係がない事業である。その中に環境関連での取り組みで消臭が注目されている。それは大和紡が開発した消臭方式で、金属フタロシアニンを使 って生体内で酵素によって解毒する独特の消臭方式である。し尿処理施設、食品加工センター等に適し、今年度は3億円ぐらいの売り上げが見込める。臭いは文化生活が向上すると問題になるらしいと宇根社長は結んだ。

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