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(2003/9/22プロパン・ブタンニュース)

三菱液化ガス社長
石黒俊雄氏
ひたすらエネルギー商売

  三菱液化ガスの石黒俊雄社長は、昭和四十六年に三菱商事に入社してこの方三十三年間一貫してエネルギー畑の仕事をした。ご自分の歩いた道を振り返り、昭和三十年代からのわが国の経済成長とエネルギー問題を照応させて三つの時期に区分した。
 @昭和三十七年=それまでエネルギーの大宗だった石炭産業の「安楽死」、海外の原油価額が国内炭の炭価を下まわったA昭和四十四年=高度経済成長の中で行われた四日市公害裁判を機に環境問題が関心事になったB平成七年=ガス・電気事業等公益事業を含めて規制緩和が言われた−である。
 三菱商事は欧米のメジャーと産油国から石油輸入元売権を得、エネルギーコストを下げるために電力用輸入炭も扱った。昭和四十四年にはアラスカからLNGを東京ガスの代行輸入をした。四十七年にはブルネイのLNG輸入もした。国の経済成長のために第一次、二次石油危機、イラン・イラク戦争時に何が最もよいエネルギーかを選択してエネルギーのベストミックスを図った。
 石黒さんは、それぞれのときに石炭、石油、LPGを輸入して電力用、産業用、一般家庭・業務用に供給する実経験した。平成二年から同五年までは米PDI(Petro―Diamond Incorporated)に副社長で出向して湾岸戦争をつぶさに見た。
 そしてお若いときに三菱商事名古屋支社燃料部で中部電力のエネルギー問題と取り組み、本社電力燃料部付、LPG部長、産業燃料部長、石油事業副本部長を経て今年三月に現職の三菱液化ガス社長に就任した。正にエネルギーの申し子のような人である。
産油国のガス・マスタープラン
 一九六一(昭和三十六)年にLPG輸出を開始したサウジアラビアは、一九八一(昭和五十六)年にガス・マスタープランを実施。現在九百万d/年を輸出するが、その半分が日本への輸出である。
 LPGの輸入に先鞭をつけたのは旧ブリヂストン液化ガスである。
 その後を追って三菱商事は、戦後の経済復興の中で石油精製の副製品や石油化学工場からのLPG、そしてLPG輸入を促進した。三菱液化ガスの特約店の販路が拡大したときである。サウジアラビアのガス・マスタープランは、タイミングがよかった。
 この時期、昭和五十三年から平成の初めまでの十二年ほど石黒さんは、三菱商事名古屋支社で七年、本社で五年の計十二年間、電力会社の発電所用燃料納入を担当した。
 当時、中部電力は原発の立地難により電力需要の対応に苦慮しており、三菱商事はサウジアラビアのプラン実施を好機と捉え、中部電力に対しLPG火力発電所と輸入基地の建設を提案した。しかしながら中部電力は、LPG輸入価格の不安定性から難色を示し、結果、碧南火力は石炭を燃料とすることとなったのである。
 サウジアラビアのLPG輸出価額の決定方式のCP制は、高値にはり付いて乱高下があり頗る評判が悪い。これについて国際的競争場裏で厳しい経験を経てきた石黒さんの見解は、極めて明快である。
 サウジアラビアから買わなければよい。アングロサクソンは、契約は破るためにあると心得ている。中国人はどうかというと、相手に守らせるための契約で、自分は守らない。だが、CPが高いとサウジアラビアに言えば、それでも中国は買いついて来ていると言う。そんなことはない。中国人は、hit&awayだ。日本のよき文化は遺したいものだが、昔の古い、よい時代ではなくなっている。アメリカにいたときAMOCOの部長に会いに行ったら、大将は真っ赤な顔で怒っている。You are fired(お前は首だ)と言いわたされたところだった。そう言われると、その日のうちに私物をまとめて立ち去らねばならないのである。私は三菱液化に来て、山一証券の社長にはならないと石黒社長は言う。
LPGによるエネルギー・ベストミックス
 新潟県知事はプルサーマルは、NO!だ。放射性廃棄物の処理場は、二〇〇六年には満杯になる。そして日本の電力事情は、マクロ的には西日本で電力が余り、東京は冷夏と節電でこの夏、からくも乗り切ったが、綱渡りだった。東京電力は最大電力時の二週間のために百万`hの発電所を年に二基つくらなければならないと言われていた。一発電所の建設所用資金は三千億円超だという。
 電力負荷平準化にLPGによるGHPが果たした役割は大きい。これなどはエネルギーのベストミックスの実を遺憾なく発揮したものと言える。それはCOP3の一九九〇年レベルで六%ダウンを実現する道である。この十月から東京ではディーゼル車の排気ガス十ppm規制が始まる。LPガスの威力をもっともっと強調したいところである。

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