(2003/12/15プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)
ブランド品を買うために

 友人と口喧嘩をした。その後、しばらくの間、連絡する事が出来ずにいた。その人とは付き合いこそ長くないが、心を開いている数少ない友人だからこそ心の整理に戸惑いさえ感じている。原因はブランド品。私がテレビで見たことを自分の意見を混じりながら彼女に話した。
 日本で一号店をオープンする某有名ブランド代理店の前に、そのブランドのバッグを手に入れるため、丸二日も並んでいる人が百人近くも。さらにバッグを買うために六カ月もバイトしてお金を貯めたという女の子が嬉しそうにインタビューに応じていた。
 「何かがおかしいよ。そういう人間を見るとなんか悲しい」と言ったら、彼女は「人が自分のお金で何をしようがあなたが心配する事ない。そういう人はそれで幸せなのだから。それをみて悲しいというあなたを見るとそれこそ悲しいよ」と。それで会話が終わり、各自家路についた。
 確かに、ブランド品は製品として質が優れているものが多く、私も中には欲しいと思うものがある。しかし、それがなくたって人生が狂うわけでもなく、それを手に入れたからってすごく幸せになれるだろうという気もしない。だからといって、ブランド品を買うことが悪い事だとも思っていないし、人が自分のお金をどう使うかについてもさらに興味はない。
 ただ、今の日本の現実は異常だと思う。ブランド品を買うことで、例えば、精神的に安定できて、殺人や自殺、幼児虐待をする人が減るのであればそれで良いと思うが、現実はそうではない。ブランド品を買うために十六歳の女の子が体を売り、コンビニを強盗し、年寄りを殺す。
 何が目的で、何が動機なのだろうか。何がそこまで人をブランド品に走らせるのだろうか、私には分からない。
 しかし、それが経済発展を成し遂げた国の末路だとしたら、悲しい限りである。