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(2004/2/2プロパン・ブタンニュース)

大垣液化ガス社長
堀吉則氏
客が発する電波を的確に受信

  大垣液化ガスは昭和三十八年三月に大垣ガスのLPガス部門を引き継いで設立された。今年三月で四十一年目を迎える。着実に業績を伸張して需要家件数二万件強である。供給形態別に見ると、簡易ガス事業=三十九地点群、七千七百十五地点、小規模集団供給=五千戸、個別供給(業務用を含む)=八千六百戸、工業用供給=百カ所である。簡易ガス、小規模集団供給、個別供給それぞれが概ね三分の一ずつの構成である。特記すべきは、@整備された充填工場とバルク供給設備の充実AGHPなどの普及によるたゆまざる負荷調整努力の成果である。
小川静雄さんが語る「大垣液化ガス発展史」
 本社工場は東海道線「大垣駅」から車で十数分のところにある。水門川に沿った環状線の大きな道路に入れる立地である。五千坪の敷地に三千坪を使って本社社屋、十連式自動充填機、プラットホームには五十`の充瓶が整然と並んでいる。充填施設の背後にLPガス貯槽・横型五十d一基、三十d二基、二十d二基の計百五十dがある。貯槽に並んでオートガススタンドもある。車庫には五d積みのタンクローリー二台と二・三dのローリー一台が待機していた。五dローリーは新バルクが制定される前から工業用、業務用の供給に活躍した。かつては大口需要に五百`容器で供給したが、今は新バルクに切り替わりつつある。そして平成二年にバーコードによる容器管理、個別供給の八千六百戸には矢崎のブルドックシステムによる集中監視も実施した。
 全体でバルク供給は十五d一基を始め百十二カ所百三十五基、二百七・二dを設置している。同社の充填工場は初めから現在の規模ではなかった。昭和五十三年、平成二年、そして昨年と三度の発展を遂げた。平成二年の二度目の改造では八連式充填機だったが、昨年の三度目の改造で十連式自動充填機になった。
 相談役の小川静雄さんが本社工場で筆者の訪問を待ち受けてくれた。小川さんは会社創立から平成十一年に現社長の堀吉則社長にバトンタッチするまで社長だった。工場のどの設備もがいとおしくてたまらぬといった風情である。そしてどうしたら省力化できるかと片時も脳裏を離れなかったと言う。鈴鹿・養老山系を指して美濃里ケ丘住宅や養老温泉を語り、伊吹山の方角を望んで関ケ原を、北の方角を望んで徳山ダムや淡墨桜を、東の方角を見やって、御嵩町のマル簡団地と可児の買収話をなさった。
お客さまの声を聞け
 堀吉則社長は平成十一年三月、小川さんのあとを継いで社長に就任した。堀さんは大垣ガス会社で経理畑に長かった。都市ガス会社の経理部では負荷率を重視する。負荷率とは、冬季(十二、一、二、三月)の平均一カ月のガス消費量を分母に、分子に一月〜十二月の一カ月の平均消費量をとる。大垣液化ガスの負荷率は八八・四%である。この負荷率は夏季の冷房需要に力を入れた結果である。小川社長時代から負荷調整需要として吸収冷温水機やGHPが発売されるやこれを積極的に販売した。堀社長はその路線を徹底して追及した。その結果、GHP計五千三百馬力(吸収式千四百冷凍dを含む)に達した。
 堀社長は時代背景の変化に注目してお客さまが「発している電波」を的確に受信すること、受信したものを「着実に実践」すると標榜している。そして東海・東南海地震対策等の課題も着実に実施すると、この正月に宣言した。
蛤はまぐりのふたみにわかれ行ゆく秋ぞ
 小見出しは「おくの細道」の納めの句である。蛤のフタとミではないが、送る人と行く人とふたみに分かれて、私は伊勢の二見を見に行く。折から秋も行こうとしている。松尾芭蕉が「おくの細道」の旅を終えたのは大垣である。大垣には門人も多く、水路で伊勢と結ばれていたからだろう。筆者は幾度となく「おくの細道」を読み、何遍も東海道線で大垣を通過しながらほとんど大垣は通過駅だった。本稿の執筆のために大垣を訪れるのは心はずむ思いだった。というのは本稿の連載が二年余になり、堀社長が百人目に当たる。ここでひと区切りつけて一冊の本にしてはと出版部が提案した。「おくの細道」の納めの地が、わが「ウエーブ・風(話題と肖像画)−−ナリケンがゆく」の納めの地になるとは嬉しい。
 堀社長が大垣を案内して下さって地図上に揖斐川の支流の根尾川上流を指してこれが谷汲たにくみ山華厳寺だと教えてくれた。このお寺は西国三十三札所の満願霊場である。ご詠歌に「今までは親と頼みし笈摺おいずりを脱ぎて納むる美濃の谷汲」。笈摺は巡礼が衣服の上に着る羽織。笈をせおうと背のすれるのを防ぐ。筆者も「ナリケンがゆく」の巡礼の旅を終えるときにはこのお寺に笈摺を納めたいものである。


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