(2004/2/9プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)
初夢―豚、龍そして犬

 日本で縁起の良い初夢と言ったら「一富士二鷹三茄」である。富士山は外国人である私から見ても、美しくすばらしいものを感じる。鷹に関しても、空高く飛んでいるカッコイイ姿からなんとなく分かる。しかし、なぜ茄?と思ながら、人に訊いたり、インターネットで検索してみた。すると、「本来は駿河の国の諺で駿河の国の名物を順に挙げたもの、駿河の国の高いものを順に挙げたもので徳川家康が言い出した、縁起の良いものを順に挙げた(富士は高大、鷹はつかみ取る、茄子は成す)」など、という。それで、茄に関しても少し納得した。
 これに対し韓国では、新年の初夢としてブタの夢を見ることを望む。いつからそうなったのかは分からないが、最も有力な説は、ブタの鼻の穴が昔のお金の形に似ていることから、そういう習慣が生じたというもの。確かに、商売繁盛を願う行事には、ブタの頭部を棚の上において拝んだり、貯金箱も基本的な形はブタなのである。しかも、赤いブタ。また、ブタの夢を見て、宝くじを買ったり、土地を買ったりする人はいまだに多い。
 そして、ブタの夢と同じく良いとされるのが、龍の夢である。ブタがお金を表すのであれば、龍は昇進、進学を表すものとして最高とされる。特に、妊婦や妊娠していなくても結婚した女性が龍の夢を見ると、これはまたすばらしい人物の誕生を予知するものとして喜ばれる。
 しかし、ブタと龍とは違って、解釈に値しない夢、何か不運気味ですぐにでも忘れたいと思う夢を「犬の夢(ゲ・クム)」という。昔はどの家にも庭には犬がいて、毎日見るものだから、夢の中でみてもそれほど意味をもたないということから、実際は夢の中で犬を見ていなくてもそう呼ぶようになったと思う。また、「犬のような○○」という表現で、人や物を見下す風習がある。例えば「犬のようなやつ」「犬のような状況」など。だからと言って、別に犬を嫌うわけでもなく、ただそういう風に言っているだけである。多分、道端や庭などどこでも交尾をすることから、そんなイメージが定着してしまい、言葉になってしまったのだと思う。
 年が明けて、二週目になったある日、実はブタに噛まれる夢を見て、宝くじを購入した。当然のことだが、当たらなかった。そして、思った。日本にいる間は富士山の夢でないと効き目がないのかも知れない、と。