(2004/3/1プロパン・ブタンニュース)

中山佳子
(なかやま・よしこ=新日本石油ガス販売部需要促進グループ)

 恐るべき交通マナー

 先月ベトナムへ行った。鳥インフルエンザの影響もあって、さすがに観光客は激減しているようだった。その旅で最も驚いたこと、それは「ベトナム人の交通マナー」だ。車よりもバイクの方が多いベトナムでは、道路を横断することに異常に神経を使う。大きな交差点では、信号が赤になるとそれこそ何十台というバイクがまるで虫が湧くように集まってくる。結局はその赤信号を無視してどんどん通過していくのだから危険極まりないのである。
 彼らはどこへ行くにも、たとえどんなに近くてもバイクに乗って行く。乗っているバイクは圧倒的に日本製の懐かしい“カブ”。そういえば、面白い話を聞いた。“HONDA”と“バイク”は同義語になっているとのこと。つまり、「SuzukiのHONDAを買った」という会話が成立してしまうらしい。
 歩いていると、必ずといっていいほどバイクタクシーのオジサンが声をかけてくる。「暑くて歩くのは大変だから乗っていけ」というのだ(ただの客引きなのだが)。彼らからすると、「こんなにも暑い中を歩いて移動する気がしれない」と不思議に見えるようだ。とはいっても、ヘルメットもなく、知らないオジサンの背中にしがみついて移動する方がもっと恐いし気持ち悪い!
 これだけ多くのバイクが二人乗りはもちろんのこと、四人乗り、五人乗りして交通ルールお構いなしに走っているのだから、ちょっとした事故は日常茶飯事だ。夜も無灯火で平気で走っている。さらに、五十cc以下の原付バイクは免許が不要なので、たとえ子供が運転していても違反ではない。あれだけの数のバイクがほとんど無免許運転?! ゾッとした。
 それでも、そんな恐るべき交通マナーの中にいると、わずか五日間の滞在ではあったが相当鍛えられた。当初とまどっていた道路の横断も自然と慣れているのだから不思議だ。“慣れ”って恐ろしい。