(2004/3/15プロパン・ブタンニュース)

尹 宣海
(ユン・ソネ=通訳・翻訳者、国際交流研究所研究員)

親近感と完璧

 昨年度、巨人の松井秀喜選手がアメリカに渡って、新人としては良い結果を残した。新庄選手はいくつかのチームを渡り、結局は日本に戻って来た。そして、今年も何人かの選手がメジャー行きを決め、私の大好きな西武ライオンズの松井稼頭央選手がメッツに行くことになった。
 その他にも、メジャーで活躍している日本人選手は多くいるが、それは日本の野球が野球を楽しむ国の中でもハイレベルである証でもある。
 メジャーで活躍している日本人選手の中で、私が最も好きで、すごいと思う人はイチロー選手である。イチロー選手は今年も二百本安打を記録し、三年連続でオールスターにも選ばれた。安打数、打率、盗塁の結果もすべて上位をマークしている。「すごい」というほか、表現しようがない。
 しかし、そんな彼をおいて「すごいのは分かるけれど、イチローには人間美を感じない」と言いながら、「新庄には何か親近感を覚える」と言う人がいた。別に新庄選手が嫌いなわけではないが、その一言で私はキレてしまった。
 二人とも正真正銘の野球選手である。野球という世界で頑張る事が彼らの仕事であり、役目でもある。持ち場で最善のプレーをし、それを見ている人に夢や感動を与える。そして、年俸という形で褒賞される。ほとんどの選手がそういう一連の流れの中で、さらに上を目指して頑張っているのである。
 イチロー選手が残しているすべての記録は、人一倍頑張っている証拠でもあるのだ。いくら頑張ったって、完璧な人間なんてなれないのだから、完璧を目指していいのではないかと思う。
 なぜ、上を目指して頑張る人が「人間美がない」と敬遠され、俳優を目指すとか、いつかは商売もしてみるつもりだ、などと言いながらショーマンシップを見せる人が評価を受けているのかが分からない。冷たく、人間美を感じないからいやだと思う人は考えてほしい。
 私はイチロー選手のように、自らが思う「完璧」を目指して常に頑張っている姿こそが、最も人間美に近いと思う。