石油化学新聞

THE PETROCHEMICAL PRESS

東レ・・・分離膜事業 30年度売上収益2倍に

水処理、医療材、新製品も

東レは、分離膜事業の売上収益を30年度までに2倍へ拡大する研究目標を設定した。現在主力の水処理、医療材の両分野で拡大する需要を取り込み用途も広げるほか、有望な新製品を相次ぎ立ち上げる計画だ。

多孔質炭素繊維を使用したオールカーボン製CO2分離膜の断面

分離膜事業の売上収益は非公表だが、水処理分野が1千億円強、医療材分野が数百億円と推定され、事業利益率は相対的に高い。今後も高い事業利益率を維持しながら事業規模の飛躍的な拡大を狙う。 水処理分野は世界で唯一、逆浸透(RO)、ナノろ過(NF)、限外ろ過( U F )、精密ろ過(MF)の全膜種を自社技術で保有するのが強みだ。主力製品のRO膜は世界市場で30%強のシェアを持ち、海水淡水化をはじめ下水浄化、工業用など幅広い用途にグローバル展開している。最近の新製品として、原水中のシリカやホウ素の除去性能を大幅に向上させたRO膜を発売し、最先端半導体用超純水製造装置用途への進出を果たした。同用途でのシェアを高める。

ケミカルリサイクル・ ジャパン(CRJ)岡村仁彦社長に聞く・・・使用済みプラ油化工場建設

千葉で着工 資源循環とCO2削減を 難処理原料を積極受け入れ

岡村仁彦社長

社会課題解決へ水平展開も
出光興産の子会社であるケミカルリサイクル・ジャパン(CRJ)は、出光興産・千葉事業所の隣接地に使用済みプラスチックの油化リサイクルを行う市原事業所の建設に着手した。8月29日に現地で地鎮祭を開催し、工事の安全と事業の成功を祈願した。新設する廃プラ油化装置は、年間2万㌧のプラスチック処理能力を持つ商業ベースのプラントで、廃プラの前処理を行う施設とセットで建設される。オールジャパンの技術で構成され、9月の着工、25年12月に完工と試運転入り、25年度中の商業運転開始を予定する。廃プラの資源循環とCO排出削減の両輪で社会課題の解決を目指す。このプラントの成功が今後の全国規模への水平展開の試金石となる。重責を担うCRJの岡村仁彦社長に話を聞いた。
◇   ◇ ―市原事業所と油化装置の概要について。
岡村 当社(CRJ)の市原事業所として約2万平方㍍の敷地を取得。元は出光興産千葉事業所のグリーンベルトに当たる土地で、使用済みプラの受け入れを想定して国道寄りに設置した。 油化装置はHiBD研究所所長(東京大学・北九州市立大学名誉教授)の藤元薫先生が開発した特許技術であるHiCOP技術を導入し、当社の共同出資社である環境エネルギーが装置として組み上げた。いわばオールジャパンの技術融合に基づくケミカルリサイクルプラントだ。
設備投資としては、受け入れる使用済みプラスチックを選別・前処理する施設と、油化プラントの大きく二つ。前処理施設は完全オートメーション化しており、安全面を考慮して人が介在しない仕組みになっている。

  • 日本触媒・・・バイオアクリル酸、25年ベンチ実証へ 30年メドに量産化
  • 大倉工業・・・次期中計、積極投資を継続へ バイオ薬用バッグ量産

    事業化するシングルユースバッグ

    大倉工業は25年度から3年間の次期中期経営計画で設備投資を現中計の実績(22~24年度見込み227億円)より増やす。M&A枠も設け、積極的な投資の継続で収益拡大につなげる。 神田進社長が決算説明会で明らかにした。既に香川県三豊市での地元木材を活用する集成材の工場新設(総投資額約70億円、26年稼働予定)、国内工場でのバイオ医薬品・再生医療の細胞培養工程に使うシングルユース(使い切り)バッグの量産設備建設を決定した。大型液晶パネル向け偏光板用光学フィルムや、電気自動車(EV)関連材料の増産投資などを検討する。

  • 日本化薬・・・エポキシ新系列、商業生産は26年度 厚狭で年末完成

<特集>社会と産業の進 化に貢献する化 学企業のR&D〈下〉(2~4面)

化学各社は業績を緩やかに回復させるなか、研究開発の取り組みを一段と強化している。近年は研究拠点のリニューアルの動きが活発化しており、自らの技術力の深化にとどまらず、外部からの知恵を盛り込み、社会課題の解決で共創を図るオープンイノベーション型の研究センターが相次いで立ち上がっている。テーマは化学の高機能・高付加価値化に他ならないが、特に環境負荷低減技術の開発では炭素資源循環の実現を目指し、新たな化学の世界を切り開こうとしている。主要化学各社の研究開発トップにR&D戦略の現在地と将来を聞いた。

日本触媒
取締役常務執行役員・住田康隆氏

  • 変革への基盤整備完了
  • 医薬品受託製造 SGP棟が本格稼働

デンカ
常務執行役員研究統括・新事業開発部門長兼イノベーションセンター長・戸谷英樹氏

  • 新規事業開発、新興への出資で促進
  • リソース配分も最適化へ

旭化成
常務執行役員・松崎修氏

  • 意識改革、〝価値提供〟を起点に
  • FO―MDシステム 実証経て27年度発売

三井化学
常務執行役員・柴田真吾氏

  • ICT、名古屋に主力研究棟
  • 世界拠点構想 インドに注目

KHネオケム
常務執行役員CMO・磯貝幸宏氏

  • 新規テーマ、市場開発ステージに
  • 糖鎖の量産化を本格検討

日鉄ケミカル&マテリアル
常務執行役員・久保祐治氏

  • 機能材料で技術幅出し
  • 感光性接着剤 先進プロセスが注目

出光興産
執行役員次世代技術研究所長・鈴木基弘氏

  • 研究者 米に派遣し共創機会
  • 27年度 千葉に統合研究所

東亞合成
フェロー・河合道弘氏

  • 川崎に新研究施設開所
  • 自動車や電子 既存深掘り新展開

JNC
取締役常務執行役員・大塚信之氏

  • 液晶材料、非ディスプレイへ展開
  • クロマト用充填剤 次世代、次々世代に

トクヤマ
取締役専務執行役員・岩崎哲史氏

  • つくば第2研 ライフサイエンス強化
  • 水素製造用AEM 世界に有償サンプル

THE PETROCHEMICAL PRESS

  • 日本化薬・・・色素材料、環境安全配慮品に力 水系・非フェノール系
  • 日清紡ホールディングス・・・FCセパレーター 今期、黒字確保 千葉新設備稼働
  • 三洋化成工業・・・人工タンパク質 来期にも上市 30年度に営業益60億円
    三洋化成工業が開発を進める機能性人工タンパク質「シルクエラスチン」が、皮膚の創傷治癒材用途で企業治験まで完了した。薬事申請を経て25年度中にも国内上市を果たす予定だ。実現すれば日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器となる。
    並行して半月板再生材用途の企業治験に向けた準備も進めている。これらを事業化して国内外で拡販し、30年度に営業利益60億円規模の新規事業に育成する方針だ。
    ほかにも皮膚、半月板に続く適用部位の拡大に向けた研究開発を推進、常時10~15テーマを抱え入れ替えを図りつつ検討を進めている。ターゲットは肺や筋肉の修復など難治疾患にかかわるテーマで、患者の生活の質向上に貢献する。【写真】シルクエラスチンで作ったスポンジ。フィルム状や繊維状にも加工できる
  • 三菱ケミカルグループ・・・廃タイヤでカー黒事業化へ検討開始
  • DIC・・・ケミトロニクス好調 25年目標1年前倒し
  • 東洋紡エムシー・・・超高強力PE繊維 洋上風力係留索に
  • レネゲード・マテリアルズ・コーポレーション(帝人米子会社)・・・低誘電プリプレグ 航空関連認証取得
  • カネカ・・・苫東工場オープン血液浄化器を生産

    カネカは北海道苫小牧市で苫東工場=写真=の開所式を8月26日に行った。第1弾として、約100億円を投じ建設した血液浄化器プラントの操業を9月から稼働した。
    生産する製品は血中の悪玉コレステロールを選択的に除去する吸着型血漿浄化器「リポソーバー」と、重症化した閉塞性動脈硬化症(ASO)を治療する吸着型血液浄化器「レオカーナ」。世界的な糖尿病や慢性腎不全の患者の増加に伴い、いずれも需要が拡大している。血液浄化器の生産は大阪工場(摂津市)との2拠点体制を構築し、供給基盤の強化により飛躍的な事業拡大を図る。
  • 第一工業製薬と神戸大発新興・・・低環境負荷製法 秋から実証開始
  • UBE・・・CPL8月、90㌦安の1650㌦
  • カネカベルギー・・・変成シリコーン増設ライン稼働
  • 石油化学工業協会・・・7月の石化製品生産実績
  • JOGMECと出光興産・・・米合成燃料に出資
  • 石油化学工業協会・・・7月の汎用4樹脂の出荷実績
  • カーボンブラック協会・・・6月のカーボンブラック実績、2024年カーボンブラック需要年央見通し
  • 化学製品値上げ
    ・デンカ・・・クロロプレンゴム(CR)を2日出荷分から1㌔㌘120円以上(海外は1㌧500ドル以上または460ユーロ以上)値上げする。
    ・日本エイアンドエル・・・ABS系樹脂を10日出荷分から値上げする。値上げ幅はABS、AES、ASA、AS、ポリマーアロイが1㌔㌘35円以上、難燃グレードと洗浄剤は100円以上。300㌔㌘未満の小口も11月1日出荷分から別途値上げする。
    ・旭化成・・・ポリアミド(PA)66を11日出荷分から1㌔㌘60円値上げする。難燃グレードは100円を上積みする。
    ・旭化成・・・アルミペースト10月1日出荷分から1㌔㌘200~500円値上げする。
    ・タキロンシーアイ・・・アルミ複合板を10月1日出荷分から20%以上値上げする。
    ・三井化学・・・メタ・パラクレゾール(MPCR)を10月1日出荷分から1㌔㌘150円値上げする。

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